アーテ王女の冒険における奇跡をおこなう国 すなわち「人間」・大学・企業および社会システム 社会システムの一般放送関係批判1

ouhykhbjkhj

文字の大きさ
上 下
17 / 37

第一章其の二 マジックハウス

しおりを挟む
 マジックハウス

 バンヘルトとルディーデーモンのマジックハウス。

「・・・・・・・・・・・・」
 アーテ王女が扉のノブに手を触れると、それはひんやり冷たかった。
 あける。
 扉を開けると、そこには真っ暗な空間が広がっていた。
 バンヘルトとルディーデーモンのマジックハウス?
 これも、お祭りの出店のひとつなのだろうか。
 アーテ王女が扉の外で、中の光景を見ていると、

 ひょひょひょひょ、ひょひょひょひょ。

「?」
 不気味な笑い声が、たぶん部屋の中から起こった。
 なんだろう。
 アーテ王女がおもっていると、
「さあどうぞ、お客様、当マジックハウスはあなた様のご希望に沿うアトラクションを用意して、お客様をおもてなしいたします」
「?」
 アーテ王女はその言葉を聴いて、幾分落ちついたのか、扉の中へとはいっていった。
 すると、

 葉短

 扉は勝手にしまった。しかし、今まで幾度となく、自動的にしまる扉に慣れているアーテ王女のことである、そんなことではアーテ王女は少しもおどろかなかった。
 しかし中は真っ暗だった。
「当マジックハウスでは」
 声がいった、
「わたくしどもと勝負していただいて、あなた様が勝ちますと、あなた様のお望みの商品を、失礼いたしました、賞品を、プレゼントさせていただく仕組みとなっております・・・・・・当マジックハウスからおろされます商品は、失礼いたしました、賞品は、あなた様が一番今、必要とされている賞品に限られます、そのため、もしもお急ぎの御用があって、それでは満足されることがないと、言われますと、商品が、失礼いたしました、賞品が、その都度変更になりますので、ご注意ください」
「・・・・・・・・・・・・」
「それでは早速アトラクションをはじめさせていただきます。当マジックハウスでは、十数種のアトラクションを用意させていただいておりますが、そのどれもが、皆様方のご要望から成り立ちましたアトラクションでございますのでどうぞ、ご安心ください。皆様方にあったアトラクションを、行ないますので、あれはだめ、これはだめ、といった緊急のご要望にも、しっかりと対応いたします。ええ・・・・・・さらに、賞品も選り取りみどり、いかなるご要望にもお答えすることができますので、どうぞご安心ください。テディーベアがお好みというお客様にはそれ。テレビチューナーがご希望というお客様にはそれ・・・・・・」
 そこまでいうと、声はいったん言葉を切って、再び声を発したときには次のようなことを言った。
「これはこれは失礼を、アーテ王女様、あなたは当街の太陽です、どうぞ、お気楽に、あなた様のご旅行をお楽しみください。では、賞品はあなた様に一番あった商品として、失礼いたしました、賞品として、『奇跡を行う国』への、単独乗車券、チェンバロ急行特別室、『奇跡を行う国』行きを、ご用意させていただいております」
「・・・・・・・・・・・・」
 このときアーテ王女がおもった疑問は次の二点である。
 すなわち、どうして声が、アーテ王女のことを知っていたのかということ、そうして、どうして声が、アーテ王女のほしいものを、『奇跡を行う国』特急券として、決定したのかということだった。
 最初の点については、すでに、この町でかなりの有名人である、アーテ王女にとっては理解可能なことだったが、次の点についてはわからなかった。
『奇跡を行う国』、いや『オケストラバーグ』。どうして、声は、アーテ王女がその場所に行くと、決めたのだろうか。
 しばらく見ていると、声に変化があった。
 くらやみの中から、ぼんやりと、人影が、現れたからである。
 しかしその人影は、両手と、顔だけだった。
 白い手袋をした両手。それに、白いおしろいに、赤い頬紅をつけた顔・・・・・・。
 黒い服でも着ていて、そこが見えないようにしているのだろうか。
 しかし、アーテ王女には、この人影が、服を着ている様子を見つけることはできなかった。
 アーテ王女が見ていると、どうやらアトラクションは始まるらしかった。
「賞品も決まりました、それではゲームに移らさせていただきます。ご希望のゲームはこれ、ルーレットにいたしましょう」
 そうすると、突然、顔と手はそのままで、室内に灯かりが点灯し、アーテ王女が見ると、前方遠くのほうに、白黒の、丸い円盤が出現した。
 アーテ王女が、このときおもったのは、なんだろう。室内が、意外と広いことであった。
「あなた様がダーツをなげて、そうして回転するルーレットにその矢を当てます。そうして見事あたりの場所にダーツを当てることができますと、あなた様の勝ち。ゲームは終了となります。でははじめましょう」
 ゲームがはじまった。
 アーテ王女が投げる、ダーツを、それがあたりに刺さると、アーテ王女の勝ち、『奇跡を行う国』の『オケストラバーグ』への、特急券が手に入る。いや、直接『奇跡を行う国』?
 果たして、それを決めたのは誰だろう。
 アーテ王女の関心は、ゲームより、むしろそっち側にあった。
 自身?
 しかし、それはアーテ王女にはわからなかった。
 それよりも、今はゲームである。
 勝てば、『奇跡を行う国』の『オケストラバーグ』への、特急券が手に入る。そうすれば、この、すべてのなぞが一新される気が、アーテ王女にはしていた。
 ダーツは全部で四本。
 アーテ王女は手から、それを受け取った。
 的が、回転した。
 一発目、はずれ。
 二発目、ボードの回転に阻まれ、転落。
 三発目、あたり。
 まるで簡単だった。
 それは同時にまるで、『奇跡を行う国』へと、アーテ王女を向かわせるために、用意されたゲームのようだった。
「何か、物足りなさそうなお顔をしておいでのご様子。しかし、心配めさるな。人生とは、常にそうしたもの、ふとした拍子に受け取った、物事に、左右され、そうして動かされる。心配めさるな、人生とは常にそうしたもの」
「・・・・・・・・・・・・」
「それではこれが、お望みの、『奇跡を行う国』への単独チケット、どうぞお納めください」
 手が、何かの薄い紙をもってアーテ王女に差し出す。
 アーテ王女はチケットを受け取った、すると、暗がりなので、よくは見えなかったが、『奇跡を行う国』の、『オケストラバーグ』への乗車券であることが、確かにうかがえた。
出発はいつ? アーテ王女が切符を見ていると、なんとそれは三日後ではないか。
「お急ぎください、あなた様の旅立ちは、すぐそこに迫っております。お急ぎください、あなた様の運命との対決は、すでに日を控えております」

 ひゃひゃひゃ、ひゃひゃひゃ。

「・・・・・・・・・・・・」
 そういうと、人影、手と、顔、どうやったのか、闇の中にきえていった。
 アーテ王女がその場に立ち尽くしていると、二度と、手と、顔が出てくることはなかった。
 この場を去れと、そのようにいっているのだろうか。たぶんそのようだった。
 アーテ王女が暗がりの中、外にでると、そこにはまた。真夏の太陽の、幾分弱い日差しがのこっていた。せみの声。入道雲。陽炎。街路樹にできる、真黒い影、・・・・・・。
 ひやりとした裏路地を、アーテ王女は戻った。
 表通りに出ると、いまだ、スーパーボール掬いには、黒山の子供が募っていた。
 祭り。
 いつまで続くのか知らないが、アーテ王女の祭りは、これで最後である。
 旅立たなくてはならない。

 郡の役人について

 アーテ王女が村長のうちに帰り着くと、すぐに村長のもとを訪れた。
 まっすぐ、寄り道をせずに、アーテ王女は家を目指した。
 事情を話す。
 すると村長は、残念そうにその一報を受け止めた。
 村長は、アーテ王女がいつまでも、このうちにいればいいのにと、ばかりに、
「そうか、もうたびだってしまうのか」
 残念そうな気持ちを、村長はいっぱいに出した。
「短い逗留であったが、どうだったかね、わしのうちは居心地がよかったのかな?」
「最高でした」
 なにからなにまで本当にありがとう。
 アーテ王女がいうと、
「いつの旅立ちになって、いったいどこに行くのだね」
 そういわれると、アーテ王女は村長に、『奇跡を行う国』の『オケストラバーグ』までの切符を提示した。
「ほう、そうか、三日後、この町の急行夜行列車で、『奇跡を行う国』に旅立つのか。そうか、そうか、ん? そういえば」
 すると、村長は、なにやらカレンダーをみて、
「三日後というと、この夏祭りの最終日になるではないか。大花火大会が見られるぞ、出発は何時? そうか、二十一時。間に合う間に合う。十分花火大会を見物して、そうして出発するといい」
 村長はそういうとアーテ王女に切符を返した。
「それはそうと」
 と、村長は、
「前にもいったように、横着をせず、あんたのことを向こうのほうに照会しておいたから、たぶん向こうに着いたら何か、歓迎会か何か、するとおもうから、そのつもりでね、それから」
 と、村長は、どこか、遠くを見るような目をして、
「あんたのことを『中央』にはなしたら、郡の役人をよこすと返信があった。いい忘れていたけど、まあ、いつも来ている質問者の群れみたいなものだから、そう心配することはない。なに、聞かれるといっても、あんたの食事の好みとか、歓迎会の予行練習みたいなことをするぐらいだから、心配しないでいいよ」
「・・・・・・・・・・・・」
 郡の役人?
 歓迎会?
 予行練習?
 突然の展開に、アーテ王女が黙っていると、
「たいしたことない」
 と、村長が、
「いや、あんたの旅立ちが、あまりに急なことなんで、突然のこととおもうかも知れないけど、前々から、話そうとはおもっていたんだよ。第一、もしも、あんたにそのことを、突然話さなかったら、何か想定問答とかして、あんたの素直な感情を、奥に隠してしまうかも知れないと心配して、そういうことにしたのだよ。いや、あんたがもしもこれほどまでに早い旅立ちを予定していなかったら、郡の役人が来るまで、黙っていようとおもっていたんだよ。何よりわしは心配だったからね、郡の役人との会見が予定されていると、あんたが緊張して、夜も眠れないくなってしまうんじゃないかと、それだから、だまっていたと、そういうことさ。だめだよ、何か、あんたの素直な感情を隠すようなことをしてしまっては」
「・・・・・・・・・・・・」
 郡の役人が来る。
 想定問答?
 アーテ王女が不審におもっていると、
「郡の役人は」
 と、村長が、
「あんたが本当の王女かどうか、疑ってかかってくるとおもうから、ぼろを出さないようにね、もしも、あんたが真の王女ではないということが、郡の役人との会見で判明すると、そのあとあんた、この世界に住みにくくなるから、そのつもりでね、市民権を、与えられないなんていうことになると、奈落の世界に住む住人と、同等の立場で扱われるから、そのつもりでね」
 何か、村長は恐ろしいことをいったように、アーテ王女には見て取れた。
 奈落の世界?
 市民権?
 奈落の世界の住人?
 アーテ王女がこの、村長の会話から読み取れたのは、何か大変なことが、アーテ王女の周囲で起こり始めている、そうして、おこるだろうということだった。
 それ以上のことは、これからよく、この世界を見て、そうして自身の目で判断しないと、ならない、しなければいけない、ということだろう。
「郡の役人は、明日あたり来るとおもうから、そのつもりでね」
 村長は、アーテ王女に妙な示唆と、言葉を残すと、どこへともなく消えていった。
 アーテ王女は自室に引きこもった。
 アーテ王女が注意して考えたのは、次の二点である。
 すなわち『奇跡を行う国』とはどんな都か、と、郡の役人からはなにを聞かれるのかということである(都の正式名称は、『オケストラバーグ』だか、ここではそれを、国を代表させて、『奇跡を行う国』と呼ぶらしい)。
 おおむね、アーテ王女が考えたことは、楽観である。
 これから始まるアーテ王女の冒険に、アーテ王女は自身、おおきな希望と想像を持った。
 アーテ王女ははやく新たな展開に身を任せたかったし、この偉大な国で、自身の力を思う存分発揮してみたい気分であった。
 どんな旅が、アーテ王女を待っているのだろうか。
 アーテ王女はベッドの上に寝転ぶと、いろいろな空想を行なった。
 気がつくと、いや、気がつかなかった。
 ただ、とろりとまぶたが重たいことに気がついただけである。
 アーテ王女はいつの間にか、そう、いつの間にか、睡眠の中のものとなっていた。

  * * *
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷では不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...