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第四章 不思議な三面鏡について
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不思議な三面鏡について
なーんだ。
アーテ王女は思った。
果たして自身が今まで思っていたものに対してであったアーテ王女と、果たしてまた、その出会いが、いかにもあっけないものに思われたアーテ王女の感想。
なーんだ。
三面鏡なんて、ただのかがみではないか。
アーテ王女は思った。どうして自分は今まで、そのものに対して、これほどの疑問を持っていたのだろうか。
それはただの思い込み、果たしてそれはただのかがみだった。
しかし。
そう思った王女の前に、不思議な現象が起こったのは、そのときだった。そう思ったとき、それは発生した。
その現象は、決して外部からの刺激によって検知されるのではなく、その現象は、決してアーテ王女の周囲から起こった現象ではありえなかった。
それは、アーテ王女の心の底から、アーテ王女によって理解された現象だった。
アーテ王女はすなわち、その現象を抑えるために、アーテ王女自身の手によって、その三面鏡の扉を閉じなければならなかったし、また、その好奇心に対して、即座に蓋をして、隠さなくてはならなかった。
何を、隠さなければならなかったのか。
それは、アーテ王女にとって、生まれて初めて生まれた精神の現象であり、このときは、その感情から自身の感情を隔絶しなければならなかった。
あまりにも人間的な、あまりにも人間的な感情。
欲望。
それは、大人への、女性への、階段。
子が育ち、そうして大人の女性へと変わる、階段。
しかし、アーテ王女はその感情から、すぐにどこかへ、飛んで逃げたかったし、しかし、同時にその感情はあまりに今の、アーテ王女には手に余る、複雑な問題であった。すなわちアーテ王女は、それから逃げ出しくもあったが、近づきたくもあったのである。
どうすればいいだろうか。
アーテ王女は、かがみの前で格闘した。
冷静に、ならなければならない、冷静になれ。
アーテ王女は心の中でおもった。
アーテ王女は、自身の心の中に起こった現象と格闘した。
そうしてついに持ち出した。
アーテ王女は科学者である。
科学者ならば、それに準じた行動をとるはずである。
かがみは、何の変哲もない、かがみであることが判明した。
それなら、もう、それ以上このかがみに対して何らかの作用をする必要はないはずである。
三面鏡の前には小さな引き出しがあり、そこには、人が、女性へと変身するための道具があるように思われた。
いけない、だめ。
そう思いながらも、アーテ王女の手は、その、小さな引き出しへと伸びた。
中にはいっていたものは、間違いなくそれだった。
すなわち、口紅、ファンデーション、マスカラ、化粧水、ハンドクリーム、ペディキュウア、マニキュア。
アーテ王女は、その、開かれた魔法の小箱に、手を伸ばした。
いけない。
それに手を伸ばしてしまっては。
アーテ王女はこのとき、自身子供のままでいて、自由気ままにしていたいという感情と、大人の女性として、自身を扱いたい感情との、戦いの中にいたのである。
再び王女は思った。
自分は科学者である。
かがみに対しては、科学者としてあたり、それ以上の感情を抱いてはいけない。
自分は科学者なんだ。科学者なんだ。科学者なんだ。科学者なんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
最後に勝ったのは、アーテ王女自身の科学への執着である。
大人にはなりたい、なって見たい。その階段を上りたい。
しかしこのときアーテ王女は感情、それを抑えることに成功した。
科学者としてのアーテ王女の感情が、アーテ王女を、大人への階段から遠ざけたのである。
アーテ王女は三面鏡の引き出しを閉じると、三面鏡それ自体もすんなり閉じた。
そうしてアーテ王女は、ロイズおばさんの部屋にある、もうひとつのかがみ、ベッドのそばの、洗面台のかがみを、椅子を近づけといて調べると、何もないことがわかり、即座にその部屋を後にした。
いつまでもいると、ふとした拍子にまた、その三面鏡に近づきたくなってしまう気がしたからである。
朝食(長橋国の朝食は、いつもロイズ料理店で行われる。朝食の時間になると、長橋国中の人間、といっても、前述したように、その人口は、四人だが・・・・・・が、集まり、みんなでにぎやかな朝食になる、王様も、当然現れ、食事を共にする。しかし、ここでは詳しくその様子を記述することを避ける。それが、何より物語と関係のないことであり、今は、朝食を、アーテ王女が王様らと、かがみ調べの合間に、とったということがわかってもらえれば、それでいいからである)。
朝食が終わると、アーテ王女のかがみ探しは新たな段階に入った。考察である。アーテ王女はアーテ王女の自己の屋根裏の部屋にたどり着くと、即座に机に向かい、書いた地図と、真っ白なノートと格闘した。
果たして王国中のかがみというかがみは調べた。しかしその結果は、いずれもアーテ王女の仮説を否定するものであり、その中へ、入ることができるかがみはないということを述べるにとどまっていた。
ノートに、王女はその旨を書き込んだ。
アーテ王女の研究ノート。まずは・・・・・・。
いずれも発見不可能。長橋国には、その中にはいることができる、不思議な扉はない模様。もっと、調査の範囲を広げれば、発見することができるかもしれない様子。しかし、今は、これが精一杯。何より、長橋の外に出ることは不可能・・・・・・。
なぜならこの長橋国を出たら、アーテ王女がアーテ王女ではなくなってしまい、自由気ままな生活ができなくなってしまうからである。
再び、王女の研究ノート。
もっと、深くかがみを調べれば、何か、見落としていることが見つかるかも知れない。たとえば調査の方法を変えてみるとか。たとえば調査の時間帯を変えてみるとか。ウシミツ時にお化けが出るとうたわれるように、かがみも、時間帯によって、その特質を変化させるかもしれない・・・・・・。
アーテ王女は頭を抱えた。
果たして調査方法がいけなかったのか、それとも、アーテ王女が立てた仮説自体に誤りがあったのだろうか。
その中にはいることができる、不思議なかがみ、そんなものはない。
アーテ王女の研究はいきづまった。
どうすればいいのだろう。
しばらく考えて、思いついた概念があった。
行き詰ったときは、基本にもどれ、である。
アーテ王女はお城の図書室に向かった。
城内を走る。
途中、デッカー次官に出くわした。
デッカー次官は、アーテ王女が走っているのをみると、いつも注意をするひとである。
「わあ、王女、びっくりした。王女、何をそんなに走っているのです。子供だからといって、そんなに走っていると、いつか転んで大ケガをしますよ。まったく何の因果でこんな城内をよく走る王女を王女として出迎えたのか、不思議でありません。本当に、城内の掃除要員としてでも、出迎えればよかったのに」(この示唆は、今後のアーテ王女の冒険に、大きなせんべつを与えることになる発言であった。しかし、それはこの後の話、今はそれは詳述しない)
城の図書室は城の三階である。
途中、王様にも出くわした。
「子供は風の子、走ったほうがいい、いい走りっぷりではないか、王女や」
アーテ王女はこうした王様のおうらか性格が、好きであった。
図書室に到着すると、アーテ王女は、早速お目当ての本棚にむかった。
取り出したのは、セリーヌ・メルシオール・ボネが書いた、『鏡の文化史』という本である。
王女は本を、図書室備え付けの机のまえで開くと、そこに書いてある内容を詳読した。
かつて、何度もよんで、そうして書いてある内容が、頭に入っている本。
それを今、基本に立ち返ると銘打って、覗き込んだのである。
何か、自分が思い違い、見落としているものはいないか。
アーテ王女が本を開けてしばらく、その内容に、みおぼえがあるが、はっきりと、みおとしていた場所を発見した。
どうして自分は、今までその可能性を排除していたのだろうか。
かがみ。
それは、確かに日常的にはものを写すものでしかないものであるけれど、果たして、それ以外の用途があった。
すなわち。
人を、驚かせ、戸惑わせる道具としてのかがみである。
よく、遊園地などで見られる、かがみ、それが目の前にあって、アーテ王女がそれに手を伸ばすのを待っていた。アーテ王女はいったことはないが、書物に、話に聞いた、遊園地にあるかがみの迷路、かがみの箱の中にはいって遊ぶ装置・・・・・・。
ここは城である。
城なのだから、あって当然であろう。
そう。
鏡の間。
アーテ王女は、天にも昇る気持ちであった。
もしもそれを見つけることができれば、それこそが、アーテ王女が捜し求めている、不思議な世界につながる扉であろう(ここには、アーテ王女の議論の飛躍があるが、目をつぶろう。アーテ王女は、自身、城の中を探しても見つからなかった扉を求め、そうして自身考えなかった扉を発見することができて、有頂天になっていたのである。しかし、結論を先に言うと、アーテ王女がこの後発見する鏡は、アーテ王女が捜し求めていた扉そのものであったので、その飛躍は、目がつぶられることになった)。
しかし、いったいどこに、そんなものがあるのだろうか。
アーテ王女は自身自信があった。
今までに、城の中で、入ったことのないし、長橋国にある住人の部屋だってそうだった。
アーテ王女はデッカー次官の部屋にさえ、針金を折り曲げて、侵入したことがあった(もしもデッカー次官が、この事実を知ったら、目の玉を三角にして、怒ったであろう。しかし、目に見えない鎖を持ってよしとする、デッカー次官は、アーテ王女の存在を、部分否定していても、部分受け入れていた。ちなみに、この、アーテ王女の特技である鍵を針金で開ける、は、アーテ王女がこのあと行なう『奇跡を行う国』での生活で、重要な役割を果たすことになる)。
アーテ王女は自身自信があった。
入ることができる部屋はすべて当たったが、しかし発見することができなかった。
というより、見てはいなかった。
しかし。
アーテ王女は立ち上がった。
椅子を引くと、キイーと、床と、椅子の、こすれる音がした。
ある。
まだ調べてはいないところが、あった。
アーテ王女は立ち上がると、再び走りだした。
王国の宝物庫。
そこに、きっとかがみの部屋があるに違いない。
城の中を走っていると、再びデッカー次官にでくわした。
次官は、アーテ王女が走っている姿を見ると、再び、小言を言った。
「王女、何度いったらわかるのですか。廊下を走ってはいけない。さもないと、そのうち本当に、転んで大ケガをしますよ。本当にもう、ぶつぶつ、ぶつぶつ」
しかし、アーテ王女は歩みをやめなかった。
それが、王国の地下の宝物庫にあるという確信が、その歩みをやめさせなかった。
「ちょっと、王女」
デッカー次官が、アーテ王女の背後で叫んだ。
しかし、アーテ王女はそれを無視した。
今は、それを聞いている場合ではない。
また今度にして、デッカーさん。
『宝物庫の鍵』と、電気が切れている可能性を見越して、ランプと、マッチを、王国の兵士控え室から拝借すると、アーテ王女は即座に宝物庫を急いだ。
かがみの間について
王国の宝物庫は、城の中にある、内部階段から侵入できる。そこには明かりがない。
暗い。
一瞬アーテ王女は躊躇した。しかし、学問への執着が、アーテ王女の歩みを、その、暗がりへと向かわせた。
アーテ王女は気を入れるために、大きく一回深呼吸をすると、誰も見たことのないような、地獄の狭間へと、階段を降りていった。
マッチでランプに灯をともす。
しゅるるるるるという音を起こして燃えるマッチが、ランプに灯をともすと、ランプからは、今まで見たこともないような明かりを、アーテ王女にあたえた。
果たして宝物庫は?
階段を降りていくと、やがてランプの灯かりに影が、出現した。
その前に扉があった。
ランプを置く。
どうする。
アーテ王女は少し、躊躇した。
しかし。
鍵を、その。
扉の鍵穴に押し込むと、ボロッと、何か、鍵穴で、さびの落ちる音がして、
「・・・・・・・・・・・・」
鍵を回すとその音はさらに大きくなった。
がり、がりがりがりがり、
ぼそぼそぼそぼそ。
香茶
今までこの扉に挑戦したものはいないのだろうか。それはすさまじい音だった。
アーテ王女は、鍵が開くと、扉を中へと押した。
祇夷
ぎいいいいいいい。
「・・・・・・・・・・・・」
古びた扉が開く音がして、中の暗闇が、アーテ王女に迫った。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、アーテ王女も負けてはいなかった。
何を暗闇。
それはただ、明かりがないだけ。
決してそれは、悪魔だけが持っている、邪悪な波動ではありえない。
ランプを前に押し出すと、アーテ王女は中へと歩みを進めた。
見ると、それほど暗くはない。
床の下から、外の明かりが漏れていた(これは、長橋国の宝物庫(地下室)が、長橋国の最下層部にあるためであって、地下室といっても、決して土の中にあるわけではないことを意味している。つまり、今、アーテ王女が立っている場所は、長橋国の中の床一枚隔てた空中ということになる)。
もしも、この国にかがみの間があるとしたら、それはここしかない。
アーテ王女は、それらしい痕跡を、宝物この中に探した。
しかし、長橋国の宝物庫は、まるで物置のようだった。さまざまな、つかわれなくなったガラクタが、ところ狭しと並んでいる。
ランプを並んでいるものどもに当てると、アーテ王女はひとつひとつ確かめていった。
何かの空きビン。ぼろぼろになったクマだかなんだかのぬいぐるみ。誰からが置き忘れたのか懐中電灯。なにやら古そうな本類。折りたたみ式のベッドだかなんだかわからないもの。
これが、宝物?
アーテ王女は思った。
宝物庫というから、アーテ王女はまた、有価証券だか、金塊だかがうずたかく積まれているものだとばかり思っていたのである。
それが。
宝?
しかし、そういうのだから、そうなのだろう。
どうみてもガラクタとしかみられないものが、果たしてみる人によっては宝であるということもありうる。
いや、そういう問題ではないだろう。
しかし、この状態を見たら、宝物庫というよりも、物置と、いったほうがいいのではないか。
それはさておき。
今のアーテ王女には、それがガラクタであるか、宝であるかについては関心がなかった。
問題。問題はかがみである。
問題のかがみのはってある部屋に、アーテ王女は探索の手を広げた。
外部から見た様子では、城の各階と、同じだけの広さの空間がそこにある、はずである。
それは狭くもあり、広くもある。
ざっとした計算では、部屋が、三つ、悠々入る計算になる。
果たして、その中に、不思議な鏡をたたえる部屋は、あるのだろうか。
何もかにもがごちゃ混ぜになった空間を、王女は歩いた。
歩くたびにふわふわ綿埃がまって、アーテ王女の足にまとわりついた。
いったいいつから、ここには人が入ってはいないのだろう。
下にランプをかざすと、そこには足跡らしい足跡は、アーテ王女のものだけだった。
いや、足跡が残らないほどに、床にはたくさんの埃が積もっていた。
喘息だったら大変ね。
アーテ王女はおもった。
部屋。
見た限りでは、部屋らしい部屋は山積みにされたダンボール、木箱、ズタ袋、こうもり傘、棚にはいろいろな箱が並び、一応整頓された痕跡をしめしていた。
「・・・・・・・・・・・・」
ドア、ドア・・・・・・。
しかし、なかなかとびらがある様子はない。ここは、ひとつなぎの、切れ間のない大部屋なのだろうか?
歩くと、柱にぶつかった。
いたっ。
電気は通ってはいないのだろうか。
いくら古いとはいえ、電灯ぐらいは用意されえいてもおかしくはないだろう。
やがて、壁際に沿って歩くアーテ王女の目に、電灯の痕跡、電気傘が見つかった。
それに近づいて、しかし、アーテ王女には、その電灯は高すぎてとどかない。
仕方がないので、手ごろな木箱をひとつ見つけて、持ってきた。
それに乗っかって、明かりをつける。
明かりは、部屋全体を照らすには小さすぎるが、アーテ王女の黒い影が、宝物庫の中にのびた。
ランプを吹き消した。
さあて、これで探しやすくなった。
部屋は、確かに広い。しかし、城一階分のスペースよりは、幾分狭いらしいことが、アーテ王女には理解された。どこかにきっと、扉があるにちがいない。
王女は探した。
かがみよ、かがみよ、かがみさん、は、見つからない。
ひとつ扉を見つけたが、それはアーテ王女がここに入ってきたときに使った扉だった。
扉、扉、扉。
扉はどこだろう。
そうしているうちに、なにやら棚の影から、扉の端っこらしいものが、見えていることに気がついた。
木が、するりと斜めに割れていて、その奥に、枠で囲まれたものがある形成をみせているのである。
アーテ王女は、即座に棚の荷物を床に置き始めた。
そうして棚を軽くしておいて、棚を、ずらした。
軽い素材を使っているのか、棚は、アーテ王女が動かすと、それにともなって、自由自在に運ばれた。
その裏に出てきたのは、すなわち扉である。
不思議と、赤い色で塗られた、エンジの扉。
多分ペンキであろう。
開くかしら。
アーテ王女はおもった。
ノブをまわし、扉を押した。
しかし、扉は、それに抵抗した。
押し方が逆なのだろうか。
ちがった。
鍵である。
扉には、鍵がかかっていて、そうして開くことを、頑なにこばんでいた。
なーんだ。
アーテ王女は思った。
果たして自身が今まで思っていたものに対してであったアーテ王女と、果たしてまた、その出会いが、いかにもあっけないものに思われたアーテ王女の感想。
なーんだ。
三面鏡なんて、ただのかがみではないか。
アーテ王女は思った。どうして自分は今まで、そのものに対して、これほどの疑問を持っていたのだろうか。
それはただの思い込み、果たしてそれはただのかがみだった。
しかし。
そう思った王女の前に、不思議な現象が起こったのは、そのときだった。そう思ったとき、それは発生した。
その現象は、決して外部からの刺激によって検知されるのではなく、その現象は、決してアーテ王女の周囲から起こった現象ではありえなかった。
それは、アーテ王女の心の底から、アーテ王女によって理解された現象だった。
アーテ王女はすなわち、その現象を抑えるために、アーテ王女自身の手によって、その三面鏡の扉を閉じなければならなかったし、また、その好奇心に対して、即座に蓋をして、隠さなくてはならなかった。
何を、隠さなければならなかったのか。
それは、アーテ王女にとって、生まれて初めて生まれた精神の現象であり、このときは、その感情から自身の感情を隔絶しなければならなかった。
あまりにも人間的な、あまりにも人間的な感情。
欲望。
それは、大人への、女性への、階段。
子が育ち、そうして大人の女性へと変わる、階段。
しかし、アーテ王女はその感情から、すぐにどこかへ、飛んで逃げたかったし、しかし、同時にその感情はあまりに今の、アーテ王女には手に余る、複雑な問題であった。すなわちアーテ王女は、それから逃げ出しくもあったが、近づきたくもあったのである。
どうすればいいだろうか。
アーテ王女は、かがみの前で格闘した。
冷静に、ならなければならない、冷静になれ。
アーテ王女は心の中でおもった。
アーテ王女は、自身の心の中に起こった現象と格闘した。
そうしてついに持ち出した。
アーテ王女は科学者である。
科学者ならば、それに準じた行動をとるはずである。
かがみは、何の変哲もない、かがみであることが判明した。
それなら、もう、それ以上このかがみに対して何らかの作用をする必要はないはずである。
三面鏡の前には小さな引き出しがあり、そこには、人が、女性へと変身するための道具があるように思われた。
いけない、だめ。
そう思いながらも、アーテ王女の手は、その、小さな引き出しへと伸びた。
中にはいっていたものは、間違いなくそれだった。
すなわち、口紅、ファンデーション、マスカラ、化粧水、ハンドクリーム、ペディキュウア、マニキュア。
アーテ王女は、その、開かれた魔法の小箱に、手を伸ばした。
いけない。
それに手を伸ばしてしまっては。
アーテ王女はこのとき、自身子供のままでいて、自由気ままにしていたいという感情と、大人の女性として、自身を扱いたい感情との、戦いの中にいたのである。
再び王女は思った。
自分は科学者である。
かがみに対しては、科学者としてあたり、それ以上の感情を抱いてはいけない。
自分は科学者なんだ。科学者なんだ。科学者なんだ。科学者なんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
最後に勝ったのは、アーテ王女自身の科学への執着である。
大人にはなりたい、なって見たい。その階段を上りたい。
しかしこのときアーテ王女は感情、それを抑えることに成功した。
科学者としてのアーテ王女の感情が、アーテ王女を、大人への階段から遠ざけたのである。
アーテ王女は三面鏡の引き出しを閉じると、三面鏡それ自体もすんなり閉じた。
そうしてアーテ王女は、ロイズおばさんの部屋にある、もうひとつのかがみ、ベッドのそばの、洗面台のかがみを、椅子を近づけといて調べると、何もないことがわかり、即座にその部屋を後にした。
いつまでもいると、ふとした拍子にまた、その三面鏡に近づきたくなってしまう気がしたからである。
朝食(長橋国の朝食は、いつもロイズ料理店で行われる。朝食の時間になると、長橋国中の人間、といっても、前述したように、その人口は、四人だが・・・・・・が、集まり、みんなでにぎやかな朝食になる、王様も、当然現れ、食事を共にする。しかし、ここでは詳しくその様子を記述することを避ける。それが、何より物語と関係のないことであり、今は、朝食を、アーテ王女が王様らと、かがみ調べの合間に、とったということがわかってもらえれば、それでいいからである)。
朝食が終わると、アーテ王女のかがみ探しは新たな段階に入った。考察である。アーテ王女はアーテ王女の自己の屋根裏の部屋にたどり着くと、即座に机に向かい、書いた地図と、真っ白なノートと格闘した。
果たして王国中のかがみというかがみは調べた。しかしその結果は、いずれもアーテ王女の仮説を否定するものであり、その中へ、入ることができるかがみはないということを述べるにとどまっていた。
ノートに、王女はその旨を書き込んだ。
アーテ王女の研究ノート。まずは・・・・・・。
いずれも発見不可能。長橋国には、その中にはいることができる、不思議な扉はない模様。もっと、調査の範囲を広げれば、発見することができるかもしれない様子。しかし、今は、これが精一杯。何より、長橋の外に出ることは不可能・・・・・・。
なぜならこの長橋国を出たら、アーテ王女がアーテ王女ではなくなってしまい、自由気ままな生活ができなくなってしまうからである。
再び、王女の研究ノート。
もっと、深くかがみを調べれば、何か、見落としていることが見つかるかも知れない。たとえば調査の方法を変えてみるとか。たとえば調査の時間帯を変えてみるとか。ウシミツ時にお化けが出るとうたわれるように、かがみも、時間帯によって、その特質を変化させるかもしれない・・・・・・。
アーテ王女は頭を抱えた。
果たして調査方法がいけなかったのか、それとも、アーテ王女が立てた仮説自体に誤りがあったのだろうか。
その中にはいることができる、不思議なかがみ、そんなものはない。
アーテ王女の研究はいきづまった。
どうすればいいのだろう。
しばらく考えて、思いついた概念があった。
行き詰ったときは、基本にもどれ、である。
アーテ王女はお城の図書室に向かった。
城内を走る。
途中、デッカー次官に出くわした。
デッカー次官は、アーテ王女が走っているのをみると、いつも注意をするひとである。
「わあ、王女、びっくりした。王女、何をそんなに走っているのです。子供だからといって、そんなに走っていると、いつか転んで大ケガをしますよ。まったく何の因果でこんな城内をよく走る王女を王女として出迎えたのか、不思議でありません。本当に、城内の掃除要員としてでも、出迎えればよかったのに」(この示唆は、今後のアーテ王女の冒険に、大きなせんべつを与えることになる発言であった。しかし、それはこの後の話、今はそれは詳述しない)
城の図書室は城の三階である。
途中、王様にも出くわした。
「子供は風の子、走ったほうがいい、いい走りっぷりではないか、王女や」
アーテ王女はこうした王様のおうらか性格が、好きであった。
図書室に到着すると、アーテ王女は、早速お目当ての本棚にむかった。
取り出したのは、セリーヌ・メルシオール・ボネが書いた、『鏡の文化史』という本である。
王女は本を、図書室備え付けの机のまえで開くと、そこに書いてある内容を詳読した。
かつて、何度もよんで、そうして書いてある内容が、頭に入っている本。
それを今、基本に立ち返ると銘打って、覗き込んだのである。
何か、自分が思い違い、見落としているものはいないか。
アーテ王女が本を開けてしばらく、その内容に、みおぼえがあるが、はっきりと、みおとしていた場所を発見した。
どうして自分は、今までその可能性を排除していたのだろうか。
かがみ。
それは、確かに日常的にはものを写すものでしかないものであるけれど、果たして、それ以外の用途があった。
すなわち。
人を、驚かせ、戸惑わせる道具としてのかがみである。
よく、遊園地などで見られる、かがみ、それが目の前にあって、アーテ王女がそれに手を伸ばすのを待っていた。アーテ王女はいったことはないが、書物に、話に聞いた、遊園地にあるかがみの迷路、かがみの箱の中にはいって遊ぶ装置・・・・・・。
ここは城である。
城なのだから、あって当然であろう。
そう。
鏡の間。
アーテ王女は、天にも昇る気持ちであった。
もしもそれを見つけることができれば、それこそが、アーテ王女が捜し求めている、不思議な世界につながる扉であろう(ここには、アーテ王女の議論の飛躍があるが、目をつぶろう。アーテ王女は、自身、城の中を探しても見つからなかった扉を求め、そうして自身考えなかった扉を発見することができて、有頂天になっていたのである。しかし、結論を先に言うと、アーテ王女がこの後発見する鏡は、アーテ王女が捜し求めていた扉そのものであったので、その飛躍は、目がつぶられることになった)。
しかし、いったいどこに、そんなものがあるのだろうか。
アーテ王女は自身自信があった。
今までに、城の中で、入ったことのないし、長橋国にある住人の部屋だってそうだった。
アーテ王女はデッカー次官の部屋にさえ、針金を折り曲げて、侵入したことがあった(もしもデッカー次官が、この事実を知ったら、目の玉を三角にして、怒ったであろう。しかし、目に見えない鎖を持ってよしとする、デッカー次官は、アーテ王女の存在を、部分否定していても、部分受け入れていた。ちなみに、この、アーテ王女の特技である鍵を針金で開ける、は、アーテ王女がこのあと行なう『奇跡を行う国』での生活で、重要な役割を果たすことになる)。
アーテ王女は自身自信があった。
入ることができる部屋はすべて当たったが、しかし発見することができなかった。
というより、見てはいなかった。
しかし。
アーテ王女は立ち上がった。
椅子を引くと、キイーと、床と、椅子の、こすれる音がした。
ある。
まだ調べてはいないところが、あった。
アーテ王女は立ち上がると、再び走りだした。
王国の宝物庫。
そこに、きっとかがみの部屋があるに違いない。
城の中を走っていると、再びデッカー次官にでくわした。
次官は、アーテ王女が走っている姿を見ると、再び、小言を言った。
「王女、何度いったらわかるのですか。廊下を走ってはいけない。さもないと、そのうち本当に、転んで大ケガをしますよ。本当にもう、ぶつぶつ、ぶつぶつ」
しかし、アーテ王女は歩みをやめなかった。
それが、王国の地下の宝物庫にあるという確信が、その歩みをやめさせなかった。
「ちょっと、王女」
デッカー次官が、アーテ王女の背後で叫んだ。
しかし、アーテ王女はそれを無視した。
今は、それを聞いている場合ではない。
また今度にして、デッカーさん。
『宝物庫の鍵』と、電気が切れている可能性を見越して、ランプと、マッチを、王国の兵士控え室から拝借すると、アーテ王女は即座に宝物庫を急いだ。
かがみの間について
王国の宝物庫は、城の中にある、内部階段から侵入できる。そこには明かりがない。
暗い。
一瞬アーテ王女は躊躇した。しかし、学問への執着が、アーテ王女の歩みを、その、暗がりへと向かわせた。
アーテ王女は気を入れるために、大きく一回深呼吸をすると、誰も見たことのないような、地獄の狭間へと、階段を降りていった。
マッチでランプに灯をともす。
しゅるるるるるという音を起こして燃えるマッチが、ランプに灯をともすと、ランプからは、今まで見たこともないような明かりを、アーテ王女にあたえた。
果たして宝物庫は?
階段を降りていくと、やがてランプの灯かりに影が、出現した。
その前に扉があった。
ランプを置く。
どうする。
アーテ王女は少し、躊躇した。
しかし。
鍵を、その。
扉の鍵穴に押し込むと、ボロッと、何か、鍵穴で、さびの落ちる音がして、
「・・・・・・・・・・・・」
鍵を回すとその音はさらに大きくなった。
がり、がりがりがりがり、
ぼそぼそぼそぼそ。
香茶
今までこの扉に挑戦したものはいないのだろうか。それはすさまじい音だった。
アーテ王女は、鍵が開くと、扉を中へと押した。
祇夷
ぎいいいいいいい。
「・・・・・・・・・・・・」
古びた扉が開く音がして、中の暗闇が、アーテ王女に迫った。
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、アーテ王女も負けてはいなかった。
何を暗闇。
それはただ、明かりがないだけ。
決してそれは、悪魔だけが持っている、邪悪な波動ではありえない。
ランプを前に押し出すと、アーテ王女は中へと歩みを進めた。
見ると、それほど暗くはない。
床の下から、外の明かりが漏れていた(これは、長橋国の宝物庫(地下室)が、長橋国の最下層部にあるためであって、地下室といっても、決して土の中にあるわけではないことを意味している。つまり、今、アーテ王女が立っている場所は、長橋国の中の床一枚隔てた空中ということになる)。
もしも、この国にかがみの間があるとしたら、それはここしかない。
アーテ王女は、それらしい痕跡を、宝物この中に探した。
しかし、長橋国の宝物庫は、まるで物置のようだった。さまざまな、つかわれなくなったガラクタが、ところ狭しと並んでいる。
ランプを並んでいるものどもに当てると、アーテ王女はひとつひとつ確かめていった。
何かの空きビン。ぼろぼろになったクマだかなんだかのぬいぐるみ。誰からが置き忘れたのか懐中電灯。なにやら古そうな本類。折りたたみ式のベッドだかなんだかわからないもの。
これが、宝物?
アーテ王女は思った。
宝物庫というから、アーテ王女はまた、有価証券だか、金塊だかがうずたかく積まれているものだとばかり思っていたのである。
それが。
宝?
しかし、そういうのだから、そうなのだろう。
どうみてもガラクタとしかみられないものが、果たしてみる人によっては宝であるということもありうる。
いや、そういう問題ではないだろう。
しかし、この状態を見たら、宝物庫というよりも、物置と、いったほうがいいのではないか。
それはさておき。
今のアーテ王女には、それがガラクタであるか、宝であるかについては関心がなかった。
問題。問題はかがみである。
問題のかがみのはってある部屋に、アーテ王女は探索の手を広げた。
外部から見た様子では、城の各階と、同じだけの広さの空間がそこにある、はずである。
それは狭くもあり、広くもある。
ざっとした計算では、部屋が、三つ、悠々入る計算になる。
果たして、その中に、不思議な鏡をたたえる部屋は、あるのだろうか。
何もかにもがごちゃ混ぜになった空間を、王女は歩いた。
歩くたびにふわふわ綿埃がまって、アーテ王女の足にまとわりついた。
いったいいつから、ここには人が入ってはいないのだろう。
下にランプをかざすと、そこには足跡らしい足跡は、アーテ王女のものだけだった。
いや、足跡が残らないほどに、床にはたくさんの埃が積もっていた。
喘息だったら大変ね。
アーテ王女はおもった。
部屋。
見た限りでは、部屋らしい部屋は山積みにされたダンボール、木箱、ズタ袋、こうもり傘、棚にはいろいろな箱が並び、一応整頓された痕跡をしめしていた。
「・・・・・・・・・・・・」
ドア、ドア・・・・・・。
しかし、なかなかとびらがある様子はない。ここは、ひとつなぎの、切れ間のない大部屋なのだろうか?
歩くと、柱にぶつかった。
いたっ。
電気は通ってはいないのだろうか。
いくら古いとはいえ、電灯ぐらいは用意されえいてもおかしくはないだろう。
やがて、壁際に沿って歩くアーテ王女の目に、電灯の痕跡、電気傘が見つかった。
それに近づいて、しかし、アーテ王女には、その電灯は高すぎてとどかない。
仕方がないので、手ごろな木箱をひとつ見つけて、持ってきた。
それに乗っかって、明かりをつける。
明かりは、部屋全体を照らすには小さすぎるが、アーテ王女の黒い影が、宝物庫の中にのびた。
ランプを吹き消した。
さあて、これで探しやすくなった。
部屋は、確かに広い。しかし、城一階分のスペースよりは、幾分狭いらしいことが、アーテ王女には理解された。どこかにきっと、扉があるにちがいない。
王女は探した。
かがみよ、かがみよ、かがみさん、は、見つからない。
ひとつ扉を見つけたが、それはアーテ王女がここに入ってきたときに使った扉だった。
扉、扉、扉。
扉はどこだろう。
そうしているうちに、なにやら棚の影から、扉の端っこらしいものが、見えていることに気がついた。
木が、するりと斜めに割れていて、その奥に、枠で囲まれたものがある形成をみせているのである。
アーテ王女は、即座に棚の荷物を床に置き始めた。
そうして棚を軽くしておいて、棚を、ずらした。
軽い素材を使っているのか、棚は、アーテ王女が動かすと、それにともなって、自由自在に運ばれた。
その裏に出てきたのは、すなわち扉である。
不思議と、赤い色で塗られた、エンジの扉。
多分ペンキであろう。
開くかしら。
アーテ王女はおもった。
ノブをまわし、扉を押した。
しかし、扉は、それに抵抗した。
押し方が逆なのだろうか。
ちがった。
鍵である。
扉には、鍵がかかっていて、そうして開くことを、頑なにこばんでいた。
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