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第二章 誰がための罪。
30 大義の裏にあるもの
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知っていますか少年よ、と女は吐き捨てるように続けた。
『ある日我が村に、一人の行き倒れの男が入り込みました。《印》を持つ男でしたが、私たちは慈悲を与えた。誠心誠意看病しました。やがて男は村に居着いた。まじめな好青年だと誰もが思いました。マリアさえも――』
見抜けなかった。ぽつりと涙のような声がこぼれる。
『マリアは見抜けなかったのです。その男を愛してしまったマリアには――その男こそが悪の火種だと、分からなかった』
……あるいは、分かっていて見ぬふりをしていたのか。
女の唇が歪む。すっと持ち上げた指が、彼らのはるか向こう――ラナーニャたちが避難している場所へと向けられる。今まさにセレンが、オルヴァを抱えたカミルを連れて転移しようとしている。
「あそこで虫の息の男は、その災厄の子孫です」
ああ――シグリィは小さく嘆息する。
「……納得しました」
ふん、と女は鼻を鳴らした。何を生意気な、お前には分かるまいと言いたげに。
そんな動作をつぶさに見るたび、思う。
(本当によくできた像だ……)
空でゆらゆらと輪郭を揺らす巨大な女。明らかに術の産物なのに、動作が妙に生々しい。生きている人間に見える瞬間が、たしかにある。
(本人の魂が――核が、よほど近くにあるのか。それとも……)
いつの間にか森の幻影が消えていた。何もない夜のクルッカを、不気味な音を立てて風が渡る。
シグリィは今、クルッカ跡地に完全に足を踏み入れていた。
この森は、つまりこの『魔女』の能力の範囲だ。ここより外では、魔女の力は半減する。オルヴァとて、不意をつかれなければあれほどの重傷になることはなかっただろう。
一方で、森跡地の中でなら、彼女はその能力を存分にふるえる。ここに踏み込むことは、彼女の領分で戦う意思を告げるということだ。
『少年よ。私に勝とうというのですか。魔女と呼ばれたこの私に』
「勝とうではない。勝つんです」
女が愉快そうに輪郭を揺らして笑った。だが――シグリィの表情を見て、ぴたりと止まる。
『……お前は何を考えている?』
「最初から不思議だった。あなたの術に引きずり込まれたのは、なぜオルヴァさんとカミルだけだったのか――。大人数は引きずりこめないのだとしても、人選が妙だった。オルヴァさんは白虎じゃない」
女の頬がぴくりと動く。淡々と語るシグリィを、空からにらみつけるように。
『……序列でしかないわ。大義の邪魔になるのはまず戦闘能力の高い大人の男。……昔から、私たちを追ったのは男たちだった』
「大義。大義というのなら」
なぜ。シグリィは強く問うた。
「なぜ、私をまっさきに狙わなかった」
『――』
「分かっているはずだ。あなたたちの大義にのっとるならば、私が最も忌まわしい存在だということは。それとも――それが分からなかったとでも?」
『お、前は――』
女の髪がざわざわと広がりうねる。憎悪と、わずかな恐怖とで、瞳が震えている。
「それにも関わらずあなたはあの二人を選んだ。かつて村を焼き払った男たちと同じ白虎の戦士であるカミルを、そして憎い男の子孫であるオルヴァさんを」
オルヴァが狙われた理由が分かった瞬間に、全てが理解できた。
とても単純なことだったのだ。この女はただ、ただひたすらに、
「――何よりも復讐を優先した。あなたに大義を語る資格はあるのか!」
けたたましい声が空をつんざいた。
それはもはや声と呼べる代物ではなかった。女の中でうずまく全ての感情に紡がれて、天を割らんばかりの轟音だった。
やがて長く尾を引く雄叫びが止み――。
空を仰ぎながら、女は胸で両手を組み合わせる。
『そう、そうですとも。私は憎い。あの男たちが憎い! おお我らが神よ、あなた方の解放より先に、私はあの男たちを消し去りたい……!』
祈るように天を見上げる女は、敬虔な修道女の顔でありながら、その裏に復讐の炎をたぎらせる。
『――それの何が悪いというのでしょう? 少年よ、お前は家族を、仲間を目の前で殺されてなお、下手人に怒りを覚えないとでも? 復讐を考えることが愚かなことだとでも?』
「……」
『誰に許されなくてもいい。私は、私の思いのためにあの男たちを狙ったのです。後悔などない』
ゆうらり、と揺らめいた、魔女の口元の微笑。
シグリィは何も応えなかった。彼女の選んだ道の是非など、彼が口を出すことではない。
ただ――吹っ切れた人間は、強い。
お前はどうするのです、と女がシグリィに問うた。
『たしかにお前はふしぎな気配を持つ。どう解釈しても我らにとっては忌々しいその気配を、それでも私は見逃したというのに。あえて私と戦うことを選ぶとは――』
「どうしてだろうな」
つぶやく。それは彼自身に向けた言葉でもあった。
(セレンやカミルと共に戦う方が有利だったんだ。だが……)
どうして自分は、こうすることを選んだ?
女が興味深げな目をするのが分かる。いつの間にか目を伏せていたシグリィは、やがて女を見上げて――笑った。
あなたが復讐に迷わないように――。
何でもないことのように、語る口調は穏やかに。
「英雄四神を侮辱する者を私は許せない。ただ、それだけだ」
ぐらりと地面が揺れた。
女の腹からわき上がる憎しみが、そのまま大地のマグマとなって地を揺るがしたかのようだった。
それはクルッカの地だけに起こった局地的な異変のようだ。女の高笑いが場を支配する。
やがて揺れる地表から、立ち昇る蒸気のように白い煙があふれ始めた。
『よろしい。――お前は敵よ』
奇妙な存在感を誇っていた女の輪郭が薄れていく。空気に溶けていく。
代わりに、白い煙が周囲の景色を塗り替えていく。
――木だ。たくさんの木。
あふれんばかりの常緑樹。その間を走る道なき道。
森の中だとすぐに分かった。ここはおそらく、かつてのクルッカの森。オルヴァが言っていた森に違いない。
それは女の記憶の中で、ずっと守られてきた世界――。
夜ではなかった。ただ、あまりに生い茂る木々ために薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。
鳥や動物の気配を鮮明に感じる。同時に、不穏な気配も――
バサァッと重い布がはためくような音がした。はっと頭上を見ると、何かがシグリィに覆い被さろうとしている瞬間だった。
顔どころか上半身に、のしりと何かがのしかかる。
獣臭さと生暖かさ。生き物だ。いや――
(“迷い子”か)
シグリィはとっさに腰の帯からナイフを抜いた。そして、内側からその獣の布を刺した。
ぐる、とくぐもった悲鳴が聞こえ、重かった生き物が跳ねるように離れる。普通ではありえない飛び方をして、頭上の枝へと戻っていく。
シグリィは改めて辺りの樹上を見る。
あちこちの枝の陰に、何かがいる。らんらんと輝く赤い光が、こちらを見つめている。
遠くで鳥の鳴き声がした。あれはふつうの動物だろうか? それとも“迷い子”だろうか?
どちらでもいい。まずは目の前の敵を。
村へいらっしゃい。耳元で囁くように、あの女の声が聞こえた。
――無事に来られるものなら。
左手にナイフ。右手に鋼糸を持ち、彼はすうと息を吸う。
すぐに行くさ。つぶやいた彼の全身から、四つの《印》の気配が爆発的に高まった。
*****
(シグリィ……)
彼が消えてしまった。あの女の姿とともに。
まるでカミルとオルヴァが消えたときのようだ。
「――」
ラナーニャは胸で手を組み合わせた。
シグリィはあの女の幻の中に引きずり込まれたのだ。それが分かる。
(彼なら、大丈夫――)
そう思う。そう思うのに、手が震える。
状況がどうなっているのか分からない。待つしかない。それが、これほどに不安で。
夜がラナーニャの体を芯まで冷やしていた。心細さも、きっと夜だからだ。
雨は止んだ。そっと空を見上げると、ようやくわずかな星がまたたき始めていた。
月はおぼろに輪郭を隠している。
空から視線を下ろし辺りを見渡しても、木々は遠く、この場はあまりに殺風景だ。セレンたちはとうに転移術を成功させた。どこを見ても何もない。
ああ――
――神に選ばれし娘よ。あの女の声が聞こえて思わず目をつぶる。
我が妹の生まれ変わりよ。そう囁かれるたび、まるで自分の隣にいる別人に語りかけられているようで。
(地租四神を崇める生き神の女性。神に選ばれし人……)
それが自分に向けられた言葉だなんて、あまりに滑稽だ。なにせ自分には《印》がないのだ。
英雄四神の世界で言えば、むしろ神に見捨てられた人間に入る。それなのに――
地租四神の世界でなら、神に選ばれた人間になるというのか。
『ある日我が村に、一人の行き倒れの男が入り込みました。《印》を持つ男でしたが、私たちは慈悲を与えた。誠心誠意看病しました。やがて男は村に居着いた。まじめな好青年だと誰もが思いました。マリアさえも――』
見抜けなかった。ぽつりと涙のような声がこぼれる。
『マリアは見抜けなかったのです。その男を愛してしまったマリアには――その男こそが悪の火種だと、分からなかった』
……あるいは、分かっていて見ぬふりをしていたのか。
女の唇が歪む。すっと持ち上げた指が、彼らのはるか向こう――ラナーニャたちが避難している場所へと向けられる。今まさにセレンが、オルヴァを抱えたカミルを連れて転移しようとしている。
「あそこで虫の息の男は、その災厄の子孫です」
ああ――シグリィは小さく嘆息する。
「……納得しました」
ふん、と女は鼻を鳴らした。何を生意気な、お前には分かるまいと言いたげに。
そんな動作をつぶさに見るたび、思う。
(本当によくできた像だ……)
空でゆらゆらと輪郭を揺らす巨大な女。明らかに術の産物なのに、動作が妙に生々しい。生きている人間に見える瞬間が、たしかにある。
(本人の魂が――核が、よほど近くにあるのか。それとも……)
いつの間にか森の幻影が消えていた。何もない夜のクルッカを、不気味な音を立てて風が渡る。
シグリィは今、クルッカ跡地に完全に足を踏み入れていた。
この森は、つまりこの『魔女』の能力の範囲だ。ここより外では、魔女の力は半減する。オルヴァとて、不意をつかれなければあれほどの重傷になることはなかっただろう。
一方で、森跡地の中でなら、彼女はその能力を存分にふるえる。ここに踏み込むことは、彼女の領分で戦う意思を告げるということだ。
『少年よ。私に勝とうというのですか。魔女と呼ばれたこの私に』
「勝とうではない。勝つんです」
女が愉快そうに輪郭を揺らして笑った。だが――シグリィの表情を見て、ぴたりと止まる。
『……お前は何を考えている?』
「最初から不思議だった。あなたの術に引きずり込まれたのは、なぜオルヴァさんとカミルだけだったのか――。大人数は引きずりこめないのだとしても、人選が妙だった。オルヴァさんは白虎じゃない」
女の頬がぴくりと動く。淡々と語るシグリィを、空からにらみつけるように。
『……序列でしかないわ。大義の邪魔になるのはまず戦闘能力の高い大人の男。……昔から、私たちを追ったのは男たちだった』
「大義。大義というのなら」
なぜ。シグリィは強く問うた。
「なぜ、私をまっさきに狙わなかった」
『――』
「分かっているはずだ。あなたたちの大義にのっとるならば、私が最も忌まわしい存在だということは。それとも――それが分からなかったとでも?」
『お、前は――』
女の髪がざわざわと広がりうねる。憎悪と、わずかな恐怖とで、瞳が震えている。
「それにも関わらずあなたはあの二人を選んだ。かつて村を焼き払った男たちと同じ白虎の戦士であるカミルを、そして憎い男の子孫であるオルヴァさんを」
オルヴァが狙われた理由が分かった瞬間に、全てが理解できた。
とても単純なことだったのだ。この女はただ、ただひたすらに、
「――何よりも復讐を優先した。あなたに大義を語る資格はあるのか!」
けたたましい声が空をつんざいた。
それはもはや声と呼べる代物ではなかった。女の中でうずまく全ての感情に紡がれて、天を割らんばかりの轟音だった。
やがて長く尾を引く雄叫びが止み――。
空を仰ぎながら、女は胸で両手を組み合わせる。
『そう、そうですとも。私は憎い。あの男たちが憎い! おお我らが神よ、あなた方の解放より先に、私はあの男たちを消し去りたい……!』
祈るように天を見上げる女は、敬虔な修道女の顔でありながら、その裏に復讐の炎をたぎらせる。
『――それの何が悪いというのでしょう? 少年よ、お前は家族を、仲間を目の前で殺されてなお、下手人に怒りを覚えないとでも? 復讐を考えることが愚かなことだとでも?』
「……」
『誰に許されなくてもいい。私は、私の思いのためにあの男たちを狙ったのです。後悔などない』
ゆうらり、と揺らめいた、魔女の口元の微笑。
シグリィは何も応えなかった。彼女の選んだ道の是非など、彼が口を出すことではない。
ただ――吹っ切れた人間は、強い。
お前はどうするのです、と女がシグリィに問うた。
『たしかにお前はふしぎな気配を持つ。どう解釈しても我らにとっては忌々しいその気配を、それでも私は見逃したというのに。あえて私と戦うことを選ぶとは――』
「どうしてだろうな」
つぶやく。それは彼自身に向けた言葉でもあった。
(セレンやカミルと共に戦う方が有利だったんだ。だが……)
どうして自分は、こうすることを選んだ?
女が興味深げな目をするのが分かる。いつの間にか目を伏せていたシグリィは、やがて女を見上げて――笑った。
あなたが復讐に迷わないように――。
何でもないことのように、語る口調は穏やかに。
「英雄四神を侮辱する者を私は許せない。ただ、それだけだ」
ぐらりと地面が揺れた。
女の腹からわき上がる憎しみが、そのまま大地のマグマとなって地を揺るがしたかのようだった。
それはクルッカの地だけに起こった局地的な異変のようだ。女の高笑いが場を支配する。
やがて揺れる地表から、立ち昇る蒸気のように白い煙があふれ始めた。
『よろしい。――お前は敵よ』
奇妙な存在感を誇っていた女の輪郭が薄れていく。空気に溶けていく。
代わりに、白い煙が周囲の景色を塗り替えていく。
――木だ。たくさんの木。
あふれんばかりの常緑樹。その間を走る道なき道。
森の中だとすぐに分かった。ここはおそらく、かつてのクルッカの森。オルヴァが言っていた森に違いない。
それは女の記憶の中で、ずっと守られてきた世界――。
夜ではなかった。ただ、あまりに生い茂る木々ために薄暗く、不気味な雰囲気を醸し出している。
鳥や動物の気配を鮮明に感じる。同時に、不穏な気配も――
バサァッと重い布がはためくような音がした。はっと頭上を見ると、何かがシグリィに覆い被さろうとしている瞬間だった。
顔どころか上半身に、のしりと何かがのしかかる。
獣臭さと生暖かさ。生き物だ。いや――
(“迷い子”か)
シグリィはとっさに腰の帯からナイフを抜いた。そして、内側からその獣の布を刺した。
ぐる、とくぐもった悲鳴が聞こえ、重かった生き物が跳ねるように離れる。普通ではありえない飛び方をして、頭上の枝へと戻っていく。
シグリィは改めて辺りの樹上を見る。
あちこちの枝の陰に、何かがいる。らんらんと輝く赤い光が、こちらを見つめている。
遠くで鳥の鳴き声がした。あれはふつうの動物だろうか? それとも“迷い子”だろうか?
どちらでもいい。まずは目の前の敵を。
村へいらっしゃい。耳元で囁くように、あの女の声が聞こえた。
――無事に来られるものなら。
左手にナイフ。右手に鋼糸を持ち、彼はすうと息を吸う。
すぐに行くさ。つぶやいた彼の全身から、四つの《印》の気配が爆発的に高まった。
*****
(シグリィ……)
彼が消えてしまった。あの女の姿とともに。
まるでカミルとオルヴァが消えたときのようだ。
「――」
ラナーニャは胸で手を組み合わせた。
シグリィはあの女の幻の中に引きずり込まれたのだ。それが分かる。
(彼なら、大丈夫――)
そう思う。そう思うのに、手が震える。
状況がどうなっているのか分からない。待つしかない。それが、これほどに不安で。
夜がラナーニャの体を芯まで冷やしていた。心細さも、きっと夜だからだ。
雨は止んだ。そっと空を見上げると、ようやくわずかな星がまたたき始めていた。
月はおぼろに輪郭を隠している。
空から視線を下ろし辺りを見渡しても、木々は遠く、この場はあまりに殺風景だ。セレンたちはとうに転移術を成功させた。どこを見ても何もない。
ああ――
――神に選ばれし娘よ。あの女の声が聞こえて思わず目をつぶる。
我が妹の生まれ変わりよ。そう囁かれるたび、まるで自分の隣にいる別人に語りかけられているようで。
(地租四神を崇める生き神の女性。神に選ばれし人……)
それが自分に向けられた言葉だなんて、あまりに滑稽だ。なにせ自分には《印》がないのだ。
英雄四神の世界で言えば、むしろ神に見捨てられた人間に入る。それなのに――
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