日記

@Haruto

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本編①

8月19日 部署決め。

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 黒田と石刀が持ってきてくれた台本は長編で演劇初心者でもわかりやすい物語たちばかりで読みやすかった。
「ーーどれも面白いね」
 黒田はパチっと指を鳴らし饒舌になり始める。
「流石委員長、褒め上手だねー。でも本当に面白いものたちばかりだよ。演劇部で上演した時も評判が高かったものばかりだし」
 他のクラスメイトたちもどうやら私と同意見だったようで、だからこそここから1本を選ぶのが難しかった。
「これ、今日決めなくてもいいよね?決められないんだよね」
「確かにどれも面白いから、今決めろと言われると回答に困るかも」
 すると、クラスメイトたちに対して黒田が助言した。
「別に今日決めなくて良いと思うよー。クラスみんなが見れているわけじゃないし。グルチャに台本載せて来週あたりに投票して貰えばいいんじゃないかなー。演技の練習は8月下旬くらいからやれば十分間に合うと思うよー。30分劇だし。」
 石刀も続く。
「この台本たちのデータ、俺持ってるからグループに送るわ。投票は来週金曜日あたりを締め切りにすれば良いか。ーーどう思う、委員長?」
「うん。それで良いと思う。2人ともありがとう。みんなもそれでいいかな」
 先ほど不安を表に出していた子たちも納得したみたいだった。
「2人とも演劇部で良かった、本当に助かるよ」
 2人は少し誇らしげだった。
「じゃあ、次は部署決めだねー。クラス全員で40人だから、舞台監督を4人にして他は綺麗に4等分でいいんじゃないかなー?できれば大道具とか作ることも考えて装置の人を多めにはしたいけれど、椅子とか体重がかかるものじゃない限りダンボールで作れば人数をそこまで多くしなくてもいい気がするなー。どう思う、委員長?」
「確かにダンボールなら軽いし、1人で装置作れそうだもんね」
「石刀はどう思う?」
「異議なし。人員が足りなくなったら照明や音響から借りてこればいいし」
「じゃあそうしよー、あとは部署決めだねー」
 今日来ているのは40人中12人。暑い中来てくれたので優先的に部署を決めてもらうことにした。ちなみに一緒に花火を見た黒田と石刀の彼女である今伊勢と奥田も来ており、どうやら2人は衣装にするようだ。
「ねぇ、委員長。舞台監督あと1人誰にするー?」
「あと1人?黒田くんと石刀くん、あと1人は誰?」
「委員長」
「私!?」
 有無を言わさず私が(勝手に)舞台監督に決まっていることに驚きを隠せなかった。別にいいけども。
「でも私、演出とか上手くできないよ?ドラマとか劇とか観るタイプじゃないし」
「演出はこっちに任せてー。僕らで見るから大丈夫。委員長にはスケジューリングをやってもらいたいんだ」
「俺や黒田はそこが苦手でさ。部長とかにもたまに怒られてたわけ。もう少し余裕を持って行動しなさい!って」
「部長って本当にお母さんみたいだよねー」
「そうだよな。だからそっちを委員長にお願いしたくて。委員長そういうの得意そうだし」
 全くの偏見な気がしなくもないが、確かにスケジューリングは得意と言えるかわからないが、上手い方ではあると思う。だからこそ、勉強では一夜漬けをせず成績も上位を保っていられるのだから。
「うん、わかった。頑張ってみるよ」
「ありがとー!補佐には加納をつけるから、コキ使ってあげてねー」
「はぁっ!?」
 加納本人も驚いているが、驚いた時の声の大きさに私を含めたみんなが驚いた。大きすぎて廊下にいた先生が覗きにきていた。
「俺、装置に行こうと思ってたんだけど!?」
「だって僕らは忙しくなるだろうし。スケジュール立てるの1人だと辛いでしょー?加納は委員長と2人でも問題なさそうだし良き相談相手になるかなーって」
「……まあ、なんでもいいけど……」
 勝手に決められたことに納得が出来ていないようだが、黒田が言っていることも理解できるのか不満を飲み込んでくれたようだった。
「加納くん、よろしくね」
「……おう」
 返事までの間はなんだったのか。少し気になったが、聞かない方が良さそうだと判断し何も聞かなかった。
 他のクラスメイトたちの部署決めも終わったようで、今日は解散となった。
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