狐の嫁入り。…嫁……嫁！？！？俺、男ですけど！？

再び

あれから1週間が経った。
もう倒れてないといいなと思いつつ、横たわっていた場所を何度も見てしまう。そんな日々だった。


「いらっしゃいませー」
「73番1つお願い」
「あれ、今日は違う銘柄なんですね」
「おつかいなんだよ、これ」


常連客との会話にくすくすと笑いお会計をして見送る。
正直コンビニバイトなんて煙草の銘柄を覚える事に必死だったし、裏の作業は大変だしで続かないと思ってたけど慣れてしまえばどうって事ない作業ばかりだ。
常連さんも仲良くなれば面白い人が多くて…それに、いい人が多い。
……いや、まあ、そうじゃない人もいるけど。それは置いといて。

えーっと？
今の俺の状況はなんですか？


「先日は助かった。礼がしたいんだが、コレはいつ終わる？」
「…えぇと……どちらさまでしょうか…？」
「…む？…あぁ、そうか。今の姿でいると分からないか。……ふむ」
「？」


謎のイケメンさんが俺を見下ろして心当たりのない事を言い始めるものだから困っていた。
しかもさっきまで動いていた人たちが固まってるんだけど！？！？
それに、それに！！

なんでイケメンさんの頭にはケモミミがついてるんですか！？！？
あと、それ！ふっさふさの尻尾！？
どういうこと！？

俺のキャパシティーをゆうに超えているのですが…！？

コスプレ！？なんで！？
何か近くでイベントでもあったのかな！？

ぐるぐると目を回しながらどうにか理解をしようと考えてみるが、何も解決しそうにない。

すると目の前にいた謎の人がシュルルと音を立てて、狐になったではないか。
しかも、昨日手当てをした狐。


「この姿になれば思い出すか？」
「…こ、この間の！？もう傷は大丈夫なの！？朝起きたらいなくなってて、びっくりしたんだよ…！」
「それはすまない事をした。気力が十分に溜まったから一度帰っていたんだ。…正直、あのまま死ぬと思っていたからお主はオレの命の恩人だ」
「…良かった…。あ、お礼って言ってるけど俺は別にいいよ、気にしないで？怪我してる子を放ってなんておけなかったし、当たり前のことしただけだから」


狐が人間に？とか気力とは？って感じだったけど、安否が気になってたからレジから体を乗り出して聞いてしまった。
やぱりあの時結構弱ってたんだね…。でも本当に元気になったみたいで良かったぁ。

頭を振って拒否すると狐さんは不満げな顔をした。気がする。


「…それが、そうもいかんのだ。話はコレが終わってからでいい。オレをまたお主の家に連れて行って欲しい」
「それは別に、いいんだけど……っていうかよくここがわかったね。もうすぐ終わるから裏で待っててもいいよ？今日俺一人だし」
「じゃあ、そうさせてもらう」


また人間？の姿に戻り裏へと狐さんが入っていった瞬間、止まっていた人々が動き始めてあの狐さんは何者なんだと少しだけ怖くなった。

まあそれもお客さんを相手にしてたらすぐどっかいちゃったけど。