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ウィルフレッドの不安
しおりを挟む「どういうことですか。殿下。」
「…何がだ、フレッド。」
「っ。…どうしてこれほどリリィに構うのかと聞いているのです。」
ここ最近毎週のようにリリィに接触しようとする殿下に、私の肝は冷えっぱなしである。
しかし、私が取り乱せばさらに彼の興味を引きかねない。
リリィには膨大な魔力があり、それは人の気持ちを魅了するもの。
一見何をそんなに気にするのかと思う力ではあるが、それを使い殿下を操ることだって難しくはない。
そんなことをするわけはないのだが、周りから見ればそう映る可能性だってある。
リリィの魔力に当てられた殿下が何かをしでかすかもしれない。
そうなれば罪はリリィに課せられてしまう。
それを防ぐ為、国王陛下には報告済み。
殿下にはオーウェン令嬢を近づけないようにすると言ってあるというのに、当の本人には伝わっていないのだろうか。
「それは…、あれだ。
フレッドの幼馴染を見てみたいという好奇心だ。
話せば話すほど、彼女が真っ直ぐで純粋なことが分かってきた。
あれほど素敵な令嬢はいないだろう。」
殿下は執務室に置いてあるソファへと深く腰を下ろすと、大きく息を吐きながらそう告げた。
そんな言葉に私は気が気ではない。
「っ…。お言葉ではございますが、
リリィを選ぶことは賛成しかねます。
リリィは公爵家の出自でその可能性があるのは重々承知しておりますが、まだ社交界に出て日も浅いのです。
王妃となることがどれほど大変かということが分かる以上、なりたいとは思ってもいない幼馴染をその地位に立たせたいとは思いません。」
「…。」
長い沈黙を破り、言を発したのは殿下の方。
「ああ…そうだな。…。」
それだけの言葉では彼の考えを読み取ることは難しかった。
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