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リリィの最後
しおりを挟む「ん…」
痛みがもう無い。それは出産を終えたことを私に気付かせた。
「リリィ!」
目を開けた私に1番最初に声をかけたのは愛する人だった。
「れお…ん?」
綺麗な黄色い糸のような光が目の前を行き来している。これは何だろうか。
「赤ちゃんは…?」
「リリィが頑張ったおかげで無事に産まれたよ。」
「そっか、良かった…
無事に役目を果たせて嬉しいわ。」
これで私の役目は終わった。
本当にそう思った。
「リリィ。しっかりするんだ。
産んで終わりじゃないだろう?
1番最初に抱いてやらなくてどうするんだ。」
「…え?」
抱っこ…そうか、せっかく産まれたのだから抱っこしてあげたい。
だけれど何だか体から怠くて
腕すらも動かすことができない。
「私は…死ぬのかしら?」
ぼぅっとする視界をみて私はそう口にした。
「っ。リリィは死なない。
私と共に生きるだろう?
私はまだまだリリィと過ごしたりないんだ、だから…」
「だから、頼むから生きる希望を持ってくれ。」
「…」
「まだ約束していたピクニックだって行ってない。次はどんな花が咲いているか楽しみなんだ。
次の剣武闘ではきっとフレッドに勝つところをリリィにみせたい。そしたら休みをとって2人だけでデートをしよう。
それに、何よりもまだ私はリリィにどれだけ愛しているか伝え切れていないんだ。
これから一生をかけて愛し抜く。だからリリィを愛させてほしい。私のそばでずっと見ていてほしい。」
「…レオン。」
レオンが悲しそうな顔で言葉を紡いでいく。その言葉が私の心を灯すような温かい気持ちになった。
「…デーヴィッド(愛されるもの)。
子の名前はそう付けようと思うのだ。
私やリリィだけでなく、みんなから愛される。そんな願いを込めて。」
「デーヴィッド…。素敵ね。」
「ああ。」
デーヴィッド。大切にするわ。
私とレオンの愛する息子。
どんなことがあってもあなたを愛してる。
『この子の未来が明るくなるように、私はレオンとこの国を導いていきたい。』
私が強く心でそう思うと淡いピンクの光が空に光り、散り散りに国中の空を照らした。
夜の暗さをその光が照らす。
それは国民に希望をもたらした。
「……リリィ…随分と綺麗な魔法だね。」
「……ふふっ。
…初めてにしては、上出来じゃないかしら?」
いつの間にやら目の前にあった光の糸は消え、部屋には私の大好きな顔ぶれで溢れていた。
「リリィ。よく頑張ったね。」
「おめでとう。」
みんなが口々に労いや祝いの言葉を発する。起き上がった私はレオンに肩を抱かれながら聞いていた。
「みんな…。ありがとう。」
『みんなみんな
幸せでいられますように…』
~fin
______
ここまで読んで下さった方へ。
まだまだ未熟な私の作品を最後まで読んでくださってありがとうございます。
まだ流れも決める前から、誰も見ないだろうという安易な考えでこの作品を公開しました。
そして話を進めるにつれ、どんどん追い込まれていきました。
それなのに、待っていてくださる方がいて、私はとても幸せでした。
次に出す作品は一通りの目処が立ってから公開したいと思います。
もしまた読んでいただけたら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
乙葉陽
応援ありがとうございます!
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