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レオンノアの救世主

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「出産とはこんなに時間がかかるものなのか…?」

あれから痛みが乗ったり乗らなかったりのリリィは半日経つのにも関わらずまだ痛みと戦っている。

「初産ですからね…」
いつもは冷静なフレッドも流石に心配そうだ。

「あんなに痛そうなのに。
女性というものは強いのだな。」

「ええ。そうですね。」

私は先程までリリィの側にいられたのだが、陣痛が本格的になってきたと同じくらいに部屋から出されてしまった。

今部屋には医者とフレッドの母君であるアールグレイ殿が補佐として付いている。

「もし男子であれば1週間後には国王になられるのですから、もっとシャキッとしていてくださらないと。」

「…もし女子であればまたこのような心配をしなければならないのか…?」

後継ぎである男子が産まれても初めて国王に就く権利が得られる。その為、今回の出産で女子であればまた痛みに踠くリリィを見なければならない。

「男子を授かれたのであればもう次は望まない…」

出産とは命懸けのものである。
それは自分自身がよく分かっていた。

私を産んですぐに亡くなった母上。それを経験してきた父上からも、もし難産であれば無理して沢山後継ぎを産む必要はないとまで言ってもらっている。

「…それは、リリィにも確認するとよろしいかと思います。」

「うっ…。そうだな。」

確かにそうだ。
危ないところだった。また今までのように勝手に自分で判断してしまうところだった。私1人で決め付けていたことでリリィとしっかりと意思を通わせることができなかった。

だからちゃんと自分がどう思っているかを伝えなければいけない。

リリィに対してしっかりと尊重しているところを見せなければ、夫として信用してもらえなくなってしまうかもしれない。


すると中から産声が上がった。

「リリィ!」
私はいても経ってもいられなくなり、扉を開こうとしたが、フレッドに止められた。

「殿下!落ち着いてください。
呼ばれるまではここで待つように言われていましたでしょう。」

「ぐっ…」

「本当。リリィのこととなると冷静ではいられないのですから…」
困ったように笑うフレッドに、私はムスッとした。

「でも、だからこそ、殿下にならリリィを託せるというものです。」

「フレッド?」

リリィをどうぞよろしくお願い致します。」

「ああ。もちろんだ。私の全てをかけてリリィを幸せにしてみせる。」



「殿下!リリベル様が!」
扉が開き、血相を変えて出てきたアールグレイを見て、私は中へと急いだ。

「リリィ!」

中に入るとベッドに横たわるリリィが目に入る。リリィは青白くなっていたが、頬だけはまだ赤かった。
汗をかいているリリィは先程まで頑張っていたのが伺える。


「一体どういうことだ⁈」
私は医者に状況の説明を求めた。

「リリベル様の魔力が体から離れようとしているのです。
私の力では今それを遅らせることしかできません。

このままではリリベル様のお命が…」

「っ!」
なんということだ。魔力が暴走するわけではなく、体から離れようとするということはイライジャでも私でもどうすることもできない。



「私と代わりなさい。」
聞き覚えのあるその声に私は振り返った。




「魔女…ミアリサ…?」
「話は後よ。とにかく私と代わりなさい。レオンノアは私の隣で魔力を分けて頂戴。私の前にに具現化してくれればいいわ。」

「っ!わかりました。」

私は言われた通りに動く。
中和魔法を教わったときのように自分の魔力を手元へ出す。するとそれを糸のように細め、リリィの周りを囲み始めた。


「リリィ…。」


「…魔女ミアリサ。説明して頂いても?」

「簡単に言えばリリィの魔力をリリィの体から離れないように縫い留めているって所かしら。」

「縫い…留める?」

「彼女の魔力にはレオンノアあなたの魔力が混じっている。だからあなたの魔力を使えば確実に馴染ませることができるの。でもその技術はあなたにはないわ。だから私が来たのよ。」


「よ、呼ばれていた?」

「ええ。今日のお昼頃、クロエが私を訪ねて来たのよ。
それでいつ産まれるか分からないから泊まってと言われて王宮にいたの。
まさか本当に私が必要となるとは思わなかったけれど。来ていて正解だったわ。」

魔女ミアリサを呼んだのは母上の生まれ変わりであるクロエだと知る。母上は出産で亡くなった。

だからもしもの事態に備えてミアリサを呼んでいたのかもしれない。

「…ありがとうございます。」

「礼を言うのは早いわよ。
私は留めることしかできない。
リリィがもし死を考えるようであれば、リリィの想いの力でそれが現実となってしまうわ。だからリリィが気を取り戻したら、生きたいと心から思うようにリリィを引き止めて頂戴。」

「ええ。絶対にリリィを死なせません。」


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