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リリベルの中和
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「うぅぅぅ。悪阻恐るべしだわ…」
ベッドに横になったままの私には、力を抑えてくれるイライジャと、念のために護衛としてリオネルが置かれていた。
「呪いは解呪できますが、悪阻などの現象は止めることができませんからね。」
暴走しそうな魔力は止めてもらっているが、悪阻は防ぐことが出来ないらしい。
悪阻は子どもが順調に育っている証拠ですよと医者に言われれば、仕方ないと思うしかなかった。
「それにしても、毎日誰かが護衛につかなくとも、私はリリベル様に手を出したりはしませんのに。」
「そういう心配も多少はあるのかもしれませんが、誰かに狙われれば戦うことのできる者がいた方が良いというだけだと思います。だからあまり深く考えないでください。」
冷静なリオネルにそう言われてイライジャはホッとしていた。
「そういえば、今度フィリネル様がグリニエルに留学なさるそうですね。」
「っ。」
「なんだかこちらへ来る前に沢山教養を受け直しているそうで。」
フィリネルがリオネルを狙っていることを知らないイライジャは私にフィリネルの状況を教えてくれた。
「あら、そうなの?受け直さなくともマナーはきちんとしていたと思うのだけれど?」
フィリネルは自由奔放ではあるが、公の場ではそれなりにこなす子なので教養を受け直す必要はないと思った。
「なんでも、貴族家に嫁ぐために必要なもののようです。」
「ああ。それで…」
きっとリオネルへの想いが溢れたのだろうと推測できるが、フィリネルの思いを知らないイライジャはそのまま続けた。
「サウスユークではどこの貴族へ嫁がれるのかと噂立っていて、沢山の縁談が持ちかけられているようです。」
あちゃー。リオネルの前でこんな話をしなくても…と思う。
「ふ、フィーは可愛らしいものね。
声がかかるのも頷けるわ。」
お願いだから余計な事は言わないで!
そう心で念じることしかできなかった。
もしリオネルがフィリネルのことを恋対象として見ることができなくなったら、私はフィリネルに合わせる顔がないのだ。
「ですが。フィリネル様は自ら、
『私の運命の人はもう決めてあるのです。私はその方以外との結婚は致しません。』と自身の生誕祭で国民の前で仰いまして。
お兄様であるミファエル様に縁談が纏まらなかったらどうするつもりだ。と、こっ酷く叱られておりました。」
なんだか容易に想像がつく。
リオネルはどんな顔をしているのだろうかと気になり、ベッドから顔を出す。
すると動揺することもなく、ただ窓の外を眺めるリオネルがいた。
え。
どっち?
有りなのか無しなのか私には
想像できない。
でも。リオネルは確かに、真剣に考えてくれている事は知っているので、私は何も言わなかった。
「…そういえば、リオネル様はウィルフレッド様の弟君なのですよね?」
「…ええ。そうですが?」
「あの。…アールグレイ様はお元気でしょうか?」
アールグレイとはイライジャにとって叔母に当たる。きっとノースノールドに帰った際にイヴェールから話を聞いたのだろう。
「…ええ。とても元気です。」
「…そうですか。」
「もし良ければ会われますか?母も会いたいと言っていましたので。」
「え、宜しいのですか?」
先王の元から逃げてきたアールグレイ様が自分と会いたくないかもしれないと思っていたようで、イライジャは驚いていた。
「ええ。母が命を狙われることも、監禁される心配ももう無いのだと分かったようで安心しておりました。」
「良かった。ではリリベル様の魔力が安定したら、その機会を承りたいです。」
「はい。伝えておきます。」
ニッコリとリオネルが笑う。
私はそれを見て良かったと思った。
「…イライジャ様。
やはり私には魔力を抑えられるような力はないのでしょうか?」
ノースノールド王家、第3皇女の息子であるリオネルは、自分にその力が無いことを知っている。
「残念ながらその力は第一子に強く反映されるのです。
4番目にお生まれになったアールグレイ様は力で言えば先王の半分以下。
それをウィルフレッド様がほぼ受け継いでいるとあれば、リオネル様には受け継がれなかったのだと思います。」
「そうなのですね。私も力になれたら良かったのですが…」
「ええ。ですが、私の力は体から出た魔力を消し去るもの。これを中和することができ、体内へと戻してコントロールさせられれば、この国の繁栄に繋がるのですが…」
「中和…」
中和の力は稀にしか無い。
だが、1番近くにいるレオンはその力を持っている。
「レオンにはできないのかしら?」
「以前も聞きましたが、中和の力を意識して使った事はないようですので…
しかし、もしかすれば出来るやもしれません。」
「なるほど。私は勝手にリリィの魔力を抑えられるのはイライジャ様だけだと思っておりましたが、違うのですね。
1度私の方から殿下に伺いを立てるのでお待ち下さい。」
「はい。分かりました。よろしくお願いします。」
夕方になる頃、先程よりも調子が悪くなった私にレオンが話しかけてきた。
「リリィ。大丈夫か?」
護衛に立っていたリオネルと執務を終えたレオンが入れ違いになり、部屋には私とレオンとイライジャだけのようだ。
喋りたくはないが吐く事はない。
お腹は空くが食べたくないといったところだろうか。
「いつもより酷そうだな…」
「そうですね。
でも陛下がいてくれるからなのか、漏れ出す魔力を消し去る作業は幾分か楽です。」
まだ中和の力を意識して使うことのないレオンは知らず知らずのうちに私の魔力を中和しているようだ。
「そうか。役に立っているのなら良かった。」
そう言ってレオンは私の頭を撫でてくれた。
「…せめてもう少し軽ければ良いのだがな。」
「ええ。見ているこっちも滅入りそうですね。魔女の力を借りて薬が作れれば良いのですが。
生憎私の師匠は行方知れずですし、魔女と接触するには余程運が良くなければ…」
その言葉に直ぐに反応を示したのはレオンだった。
「ん?魔女ならば悪阻も無くせるのか?」
「無くすことは出来ませんが軽くすることは可能だと思います。」
「…そうなのか。」
レオンは少し考えるように黙り込んでいた。
「そういえば、先程リオネルに聞いたのだが、私も中和させる技術を身につけたいと思う。どうしたら良いだろうか?」
「そうですね。
そうするのが1番良い方法かと思います。
まずは力を理解して頂くところから話をしてもよろしいでしょうか?」
何やら難しい話が始まると、私はだんだんと眠くなってきた。
できるなら聞きたい。
自分の魔力に関することなのだから知っておきたいのだ。
しかし、その考えも虚しく私は目を閉じてしまった。
________________
「魔力とはそもそも回復するものです。
私はリリベル様から出た魔力を消すことは出来ますが、一晩寝てしまえば魔力はまた体内に蓄積されてしまいますので、いくら私が魔力を消し去ろうとも、その暴走を食い止めているだけで、根本的な解決はできません。」
眠ってしまったリリィを起こさないように、少し離れた場所で説明を聞くことになった。
「そうなのか。魔法に関する教養を受けた時に教え込まれたから、魔力が回復する仕組みは分かる。
魔力の回復は助かるものとばかり思っていたが、魔力量が多く暴走するとなれば厄介なのだな。」
「はい。リリベル様の魔力を少し削ることができたならいいのですが…。
いくら解呪の能力があろうとも、体内にある魔力をどうこうすることは出来ません。
それは命に関わる為、使えないことになっています。」
「使えないことになっている…?」
「はい。
殿下のお考えの通り、私にはできます。
しかしそれは魔力を全てを消し去ってしまう。だからしてはいけない禁魔法ですので、ご内密に…」
魔力を持つ者の魔力を全て消し去ってしまう。それは命を奪うことと同じ。
もし運が良ければ命を落とすことはないだろうが、ほぼ命を落とすことは間違いない。
「そんなことを私に話してもいいのか?」
「ええ。私は魔女と契約し、魔女になったので嘘は許されません。できないと断言すればそれは嘘になってしまいますから…。どうか今聞いたことは内密に。」
「…分かった。しかし、イライジャ。君は生きるには少しばかりお人好しが過ぎると思うぞ。」
「その時は殿下に助けを乞わせて頂きます。」
にっこりと笑うイライジャには
俺は敵わないと思った。
こいつは本当に根っからのお人好しだ。
こうやって善意でリリィを助けてくれるのだから、ノースノールドへの支援も以前より厚くなるだろう。
「そして私は消し去ってしまった魔力をリリベル様に戻すことはできません。
ですが、中和の力は漏れ出した魔力を中和し、それを戻すことが可能なのです。」
「中和した魔力を戻す…か。」
それならばリリィの命を削る心配もない。
「はい。そうすれば体を交わらせなくとも、リリベル様の魔力を中和することが可能です。」
「殿下が行っていたことは、精液や唾液をリリベル様に入れることでリリベル様の体内で魔力を中和するという比較的簡単なものでした。
それならば中和の力を意識していなくともリリベル様の力を中和することができるからです。」
「ですが、今のリリベル様の体力ではそういう行為をするのも大変ですので、漏れ出た魔力を殿下が中和をし、そして戻すことがリリベル様には1番負担のかからないものかと思います。」
「それはまだ能力をコントロールできていない私にもできることなのだろうか?」
「簡単なことではありません。
しかし、殿下ならどうにかやってのけると思うのです。」
「そうか…」
随分と信用されたものだ。
まあ、確かにリリベルのためなら何だってやってやる。そう思うのだから違いはないだろう。
「執務の時間が空くときにでも私の隣で中和魔法のコツを掴んで頂く。という事で宜しいでしょうか?」
「ああ。悪いが君に頼む以外に方法はないだろう。よろしく頼む。」
「はい。仰せのままに。」
「お前もノースノールドの王ならばすぐにそうやって頭を下げるな。示しが付かないだろう?」
「今は対等な立場ではありません。
私は受けた恩を返しているのですから、今はこれで良いのです。」
確かにノースノールドからの願いを聞き、イライジャを見つけ出してノースノールドの力にはなったが、
それはリリィの暴走を止める為にやったことで、実際はノースノールドの為だけにやったことではない。
それなのにイライジャは恩と言っていた。
私たちが売った恩よりも今回イライジャが手を貸してくれる恩の方が大きいのは確かなのだ。
私はイライジャのその姿勢を見て、確実にノースノールドとの関係は深いものになるだろうと確信した。
ベッドに横になったままの私には、力を抑えてくれるイライジャと、念のために護衛としてリオネルが置かれていた。
「呪いは解呪できますが、悪阻などの現象は止めることができませんからね。」
暴走しそうな魔力は止めてもらっているが、悪阻は防ぐことが出来ないらしい。
悪阻は子どもが順調に育っている証拠ですよと医者に言われれば、仕方ないと思うしかなかった。
「それにしても、毎日誰かが護衛につかなくとも、私はリリベル様に手を出したりはしませんのに。」
「そういう心配も多少はあるのかもしれませんが、誰かに狙われれば戦うことのできる者がいた方が良いというだけだと思います。だからあまり深く考えないでください。」
冷静なリオネルにそう言われてイライジャはホッとしていた。
「そういえば、今度フィリネル様がグリニエルに留学なさるそうですね。」
「っ。」
「なんだかこちらへ来る前に沢山教養を受け直しているそうで。」
フィリネルがリオネルを狙っていることを知らないイライジャは私にフィリネルの状況を教えてくれた。
「あら、そうなの?受け直さなくともマナーはきちんとしていたと思うのだけれど?」
フィリネルは自由奔放ではあるが、公の場ではそれなりにこなす子なので教養を受け直す必要はないと思った。
「なんでも、貴族家に嫁ぐために必要なもののようです。」
「ああ。それで…」
きっとリオネルへの想いが溢れたのだろうと推測できるが、フィリネルの思いを知らないイライジャはそのまま続けた。
「サウスユークではどこの貴族へ嫁がれるのかと噂立っていて、沢山の縁談が持ちかけられているようです。」
あちゃー。リオネルの前でこんな話をしなくても…と思う。
「ふ、フィーは可愛らしいものね。
声がかかるのも頷けるわ。」
お願いだから余計な事は言わないで!
そう心で念じることしかできなかった。
もしリオネルがフィリネルのことを恋対象として見ることができなくなったら、私はフィリネルに合わせる顔がないのだ。
「ですが。フィリネル様は自ら、
『私の運命の人はもう決めてあるのです。私はその方以外との結婚は致しません。』と自身の生誕祭で国民の前で仰いまして。
お兄様であるミファエル様に縁談が纏まらなかったらどうするつもりだ。と、こっ酷く叱られておりました。」
なんだか容易に想像がつく。
リオネルはどんな顔をしているのだろうかと気になり、ベッドから顔を出す。
すると動揺することもなく、ただ窓の外を眺めるリオネルがいた。
え。
どっち?
有りなのか無しなのか私には
想像できない。
でも。リオネルは確かに、真剣に考えてくれている事は知っているので、私は何も言わなかった。
「…そういえば、リオネル様はウィルフレッド様の弟君なのですよね?」
「…ええ。そうですが?」
「あの。…アールグレイ様はお元気でしょうか?」
アールグレイとはイライジャにとって叔母に当たる。きっとノースノールドに帰った際にイヴェールから話を聞いたのだろう。
「…ええ。とても元気です。」
「…そうですか。」
「もし良ければ会われますか?母も会いたいと言っていましたので。」
「え、宜しいのですか?」
先王の元から逃げてきたアールグレイ様が自分と会いたくないかもしれないと思っていたようで、イライジャは驚いていた。
「ええ。母が命を狙われることも、監禁される心配ももう無いのだと分かったようで安心しておりました。」
「良かった。ではリリベル様の魔力が安定したら、その機会を承りたいです。」
「はい。伝えておきます。」
ニッコリとリオネルが笑う。
私はそれを見て良かったと思った。
「…イライジャ様。
やはり私には魔力を抑えられるような力はないのでしょうか?」
ノースノールド王家、第3皇女の息子であるリオネルは、自分にその力が無いことを知っている。
「残念ながらその力は第一子に強く反映されるのです。
4番目にお生まれになったアールグレイ様は力で言えば先王の半分以下。
それをウィルフレッド様がほぼ受け継いでいるとあれば、リオネル様には受け継がれなかったのだと思います。」
「そうなのですね。私も力になれたら良かったのですが…」
「ええ。ですが、私の力は体から出た魔力を消し去るもの。これを中和することができ、体内へと戻してコントロールさせられれば、この国の繁栄に繋がるのですが…」
「中和…」
中和の力は稀にしか無い。
だが、1番近くにいるレオンはその力を持っている。
「レオンにはできないのかしら?」
「以前も聞きましたが、中和の力を意識して使った事はないようですので…
しかし、もしかすれば出来るやもしれません。」
「なるほど。私は勝手にリリィの魔力を抑えられるのはイライジャ様だけだと思っておりましたが、違うのですね。
1度私の方から殿下に伺いを立てるのでお待ち下さい。」
「はい。分かりました。よろしくお願いします。」
夕方になる頃、先程よりも調子が悪くなった私にレオンが話しかけてきた。
「リリィ。大丈夫か?」
護衛に立っていたリオネルと執務を終えたレオンが入れ違いになり、部屋には私とレオンとイライジャだけのようだ。
喋りたくはないが吐く事はない。
お腹は空くが食べたくないといったところだろうか。
「いつもより酷そうだな…」
「そうですね。
でも陛下がいてくれるからなのか、漏れ出す魔力を消し去る作業は幾分か楽です。」
まだ中和の力を意識して使うことのないレオンは知らず知らずのうちに私の魔力を中和しているようだ。
「そうか。役に立っているのなら良かった。」
そう言ってレオンは私の頭を撫でてくれた。
「…せめてもう少し軽ければ良いのだがな。」
「ええ。見ているこっちも滅入りそうですね。魔女の力を借りて薬が作れれば良いのですが。
生憎私の師匠は行方知れずですし、魔女と接触するには余程運が良くなければ…」
その言葉に直ぐに反応を示したのはレオンだった。
「ん?魔女ならば悪阻も無くせるのか?」
「無くすことは出来ませんが軽くすることは可能だと思います。」
「…そうなのか。」
レオンは少し考えるように黙り込んでいた。
「そういえば、先程リオネルに聞いたのだが、私も中和させる技術を身につけたいと思う。どうしたら良いだろうか?」
「そうですね。
そうするのが1番良い方法かと思います。
まずは力を理解して頂くところから話をしてもよろしいでしょうか?」
何やら難しい話が始まると、私はだんだんと眠くなってきた。
できるなら聞きたい。
自分の魔力に関することなのだから知っておきたいのだ。
しかし、その考えも虚しく私は目を閉じてしまった。
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「魔力とはそもそも回復するものです。
私はリリベル様から出た魔力を消すことは出来ますが、一晩寝てしまえば魔力はまた体内に蓄積されてしまいますので、いくら私が魔力を消し去ろうとも、その暴走を食い止めているだけで、根本的な解決はできません。」
眠ってしまったリリィを起こさないように、少し離れた場所で説明を聞くことになった。
「そうなのか。魔法に関する教養を受けた時に教え込まれたから、魔力が回復する仕組みは分かる。
魔力の回復は助かるものとばかり思っていたが、魔力量が多く暴走するとなれば厄介なのだな。」
「はい。リリベル様の魔力を少し削ることができたならいいのですが…。
いくら解呪の能力があろうとも、体内にある魔力をどうこうすることは出来ません。
それは命に関わる為、使えないことになっています。」
「使えないことになっている…?」
「はい。
殿下のお考えの通り、私にはできます。
しかしそれは魔力を全てを消し去ってしまう。だからしてはいけない禁魔法ですので、ご内密に…」
魔力を持つ者の魔力を全て消し去ってしまう。それは命を奪うことと同じ。
もし運が良ければ命を落とすことはないだろうが、ほぼ命を落とすことは間違いない。
「そんなことを私に話してもいいのか?」
「ええ。私は魔女と契約し、魔女になったので嘘は許されません。できないと断言すればそれは嘘になってしまいますから…。どうか今聞いたことは内密に。」
「…分かった。しかし、イライジャ。君は生きるには少しばかりお人好しが過ぎると思うぞ。」
「その時は殿下に助けを乞わせて頂きます。」
にっこりと笑うイライジャには
俺は敵わないと思った。
こいつは本当に根っからのお人好しだ。
こうやって善意でリリィを助けてくれるのだから、ノースノールドへの支援も以前より厚くなるだろう。
「そして私は消し去ってしまった魔力をリリベル様に戻すことはできません。
ですが、中和の力は漏れ出した魔力を中和し、それを戻すことが可能なのです。」
「中和した魔力を戻す…か。」
それならばリリィの命を削る心配もない。
「はい。そうすれば体を交わらせなくとも、リリベル様の魔力を中和することが可能です。」
「殿下が行っていたことは、精液や唾液をリリベル様に入れることでリリベル様の体内で魔力を中和するという比較的簡単なものでした。
それならば中和の力を意識していなくともリリベル様の力を中和することができるからです。」
「ですが、今のリリベル様の体力ではそういう行為をするのも大変ですので、漏れ出た魔力を殿下が中和をし、そして戻すことがリリベル様には1番負担のかからないものかと思います。」
「それはまだ能力をコントロールできていない私にもできることなのだろうか?」
「簡単なことではありません。
しかし、殿下ならどうにかやってのけると思うのです。」
「そうか…」
随分と信用されたものだ。
まあ、確かにリリベルのためなら何だってやってやる。そう思うのだから違いはないだろう。
「執務の時間が空くときにでも私の隣で中和魔法のコツを掴んで頂く。という事で宜しいでしょうか?」
「ああ。悪いが君に頼む以外に方法はないだろう。よろしく頼む。」
「はい。仰せのままに。」
「お前もノースノールドの王ならばすぐにそうやって頭を下げるな。示しが付かないだろう?」
「今は対等な立場ではありません。
私は受けた恩を返しているのですから、今はこれで良いのです。」
確かにノースノールドからの願いを聞き、イライジャを見つけ出してノースノールドの力にはなったが、
それはリリィの暴走を止める為にやったことで、実際はノースノールドの為だけにやったことではない。
それなのにイライジャは恩と言っていた。
私たちが売った恩よりも今回イライジャが手を貸してくれる恩の方が大きいのは確かなのだ。
私はイライジャのその姿勢を見て、確実にノースノールドとの関係は深いものになるだろうと確信した。
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