50 / 76
リリィの初外交のドレス
しおりを挟む
生理も落ち着き、いつものように執務をこなすことができるようになり、私は充実した毎日を過ごしていた。
殿下は喜んでくれたものの、私にされるより、する方がいいのだと言っていたので、あれ以来させて貰えない。
クロエと陛下は無事に婚約でき、正式に婚儀へと進めそうだと言う。婚儀と言っても大々的にはやらず、簡易的に役職のある者だけ集めたパーティでお披露目をすると言う。
その為、私とレオンの婚儀よりも早く行うことになった。
「おめでとうクロエ。あ、御義母様。」
綺麗な礼をするとクロエがそれを止める。
「やだ、リリィったら。人目がないところではいつものように接して欲しいわ。私たち友達なのだから。」
そう言ってクロエは笑顔を向けてくれた。
クロエはサラノア様の生まれ変わり。王宮や別邸に仕える者はみんなが知っている。
別邸で暮らすことになったクロエに侍女をつける話になった時、クロエは前世で侍女として仕えたイザベラを指名した。イザベラは私の侍女のローラとアドラの母である。
前世の記憶があるクロエは次々に使用人の名前を当てていったのだ。するとすぐに前世がサラノア様だという確証を得ることができた。前世とは違い、皆クロエとすぐに打ち解けたらしい。前世でサラノア様が何年もかけて積み重ねた思い出を、無駄にすることがなくて本当に良かったと安堵した。
私は王太子妃の執務である外交の話をクロエに聞く。
「南にあるサウスユークとはどんな国なのですか?」
まだ1度も足を踏み入れたことのない外国を少しでも知りたくてクロエに聞く。
「サウスユークは、とても暖かくて褐色の肌をした人が多い国よ。そして自信家が多いわね。昔と変わっていなければ、露出の多い服が一般的かしら。気候が暑いから自然とそういう服装になるみたいよ。そして情熱的で恋多き人種だと言われているわ。」
詳しいことを知っているクロエに、流石はサラノア様の生まれ変わりだと思った。
「エドウィンの婚約者はサウスユークの第一皇女で、あの時はとても揉めたわ。」そう言って笑ってはいるが、相当大変だっただろうなと思う。
「どうやって解決したのですか?」
「まあ、早く言えば皇女様に認めてもらえたと言うことかしら?」そう言っていたので、もう蟠りはないのだろうと感じた。
「サウスユークには馬車で1週間ほどかかるのだけれど、グリニエルとサウスユークは同盟を結ぶ友好国だから魔法での転送が許されているわ。グリニエルとサウスユークにものの何分かで着くことが出来るの。それなりの魔力とお金がかかるから頻繁には使われないのだけれど、安心して向かうことができるでしょう?」
そう言ってクロエは笑いかけてくれた。
「今回は3日間滞在するだけだから、そんなに気負わずに行ってくるといいわ。レオンノアの婚約者のお披露目として行くのだから堂々とするのよ。」そう言って励ましてくれた。
それからサウスユークで咲く植物の話や暖か過ぎるサウスユークでの過ごし方を教えてもらったのだった。
___
「レオン、少し話があるのだけれど。」
そう言って入ったのは執務室だ。
「どうした、リリィ。」
直様自分のご指名がかかったことにレオンはとても嬉しそうだ。
「サウスユークでは、グリニエルと気候が違うから、ドレスの発注をしたいのだけれど、クロエと話をしながら決めたいから王宮に呼び付けたいの。良いかしら?」
本当なら街まで買いに行きたいのだが、サウスユーク用の薄着のドレスを作るとなると、すぐに王太子妃が街を出歩いていると気付かれてしまう為、仕方なく王宮に呼ぶことにしたのだ。
王太子妃としての外出となれば護衛がいくらいても足りない。
私はクロエからそう指摘されたので、レオンに相談しにきたのだ。
「ああ。分かった。すぐ手配するよ。」
___
次の日、ドレス作りのラメリア・ウォーカーがやってきた。王宮の客間には私とクロエ。そしてレオンがいた。
「ラメリアは腕が良くて、私も以前サウスユークに行くときに仕立てて貰ったことがあるの。」
クロエがそういうと、ラメリアはクロエが何者なのかとジッと見ていた。
「…サラノア様でしょうか。」
少し疑いつつも、やはり面影があるようで、直ぐに気付いていた。
「ええ。訳あって若いのだけれど、あなたのことは良く覚えているわ。素敵なドレスだったもの。今日は私の義娘に外交用のドレスを仕立ててほしいのよ。」
お願いできるかしらとクロエが言う。するとラメリアは笑ってお任せくださいと言っていた。
「王太子殿下はお下がりくださいませ。今からサイズなどを測ります。そして殿下がいては、サウスユーク用のドレスを仕立てるのに支障が出るので、仕上がり後の確認だけでお願い致します。」
キッパリと言うラメリアに少し驚く。すると隣でクロエが、私の時にエドウィンが露出が多すぎるとか丈が短いとか仕立ての邪魔になる発言ばかりしたから仕方ないの。ごめんなさいね。とレオンに言っていた。
レオンは渋々執務に戻り、扉の向こうには護衛としてリオネルが置かれた。
「王太子妃様。私はラメリア・ウォーカーと申します。まさか人生の中で王太子妃様2人のドレスを仕立てることができようとは思ってはおりませんでした。力を尽くしますので、素敵なドレスを作りましょう。」
そう言ってラメリアは笑っていた。
サウスユークでは今、胸元が大きく開いたものやホルターネック、オフショルダー、深いスリットが入ったものや背中の大きく開いたものが流行っているらしい。
どのデザイン用紙を見ても、自分に合うのだろうかと不安になるものばかりだ。
サウスユークのドレスは主に胸元が大きく開いているらしく、クロエも苦戦したらしい。
「私の時はエドウィンが大反対して、結局、薄い透けた布を胸元にあしらってもらったわ。」苦笑いでクロエが言う。
「ええ、ええ。陛下はサラノア様の肌を誰にも見せたくないのだと豪語しまして、ドレスが1着も作れないのではと心配になりました。」ラメリアは陛下は職人泣かせだと少し怒ったように言う。
「どのデザインならいいと思う?」私がそう聞くとホルターネックで肩を出すデザインと、オフショルダー、そしてスリットが入っているものはあまり抵抗なく着れるだろうとオススメされる。
私はそのデザインでドレスをしたててもらうことにする。クロエも混ざって3人でデザインを固めていき、納得できるものが完成したのだ。
ラメリアはその原案の提出をせずに作業に取り掛かるという。理由は言わずともわかった。せっかく固まった案を白紙に戻しかねない人物がいるからだ。
私はラメリアにお願いし、ドレスの心配はなくなったのだった。
殿下は喜んでくれたものの、私にされるより、する方がいいのだと言っていたので、あれ以来させて貰えない。
クロエと陛下は無事に婚約でき、正式に婚儀へと進めそうだと言う。婚儀と言っても大々的にはやらず、簡易的に役職のある者だけ集めたパーティでお披露目をすると言う。
その為、私とレオンの婚儀よりも早く行うことになった。
「おめでとうクロエ。あ、御義母様。」
綺麗な礼をするとクロエがそれを止める。
「やだ、リリィったら。人目がないところではいつものように接して欲しいわ。私たち友達なのだから。」
そう言ってクロエは笑顔を向けてくれた。
クロエはサラノア様の生まれ変わり。王宮や別邸に仕える者はみんなが知っている。
別邸で暮らすことになったクロエに侍女をつける話になった時、クロエは前世で侍女として仕えたイザベラを指名した。イザベラは私の侍女のローラとアドラの母である。
前世の記憶があるクロエは次々に使用人の名前を当てていったのだ。するとすぐに前世がサラノア様だという確証を得ることができた。前世とは違い、皆クロエとすぐに打ち解けたらしい。前世でサラノア様が何年もかけて積み重ねた思い出を、無駄にすることがなくて本当に良かったと安堵した。
私は王太子妃の執務である外交の話をクロエに聞く。
「南にあるサウスユークとはどんな国なのですか?」
まだ1度も足を踏み入れたことのない外国を少しでも知りたくてクロエに聞く。
「サウスユークは、とても暖かくて褐色の肌をした人が多い国よ。そして自信家が多いわね。昔と変わっていなければ、露出の多い服が一般的かしら。気候が暑いから自然とそういう服装になるみたいよ。そして情熱的で恋多き人種だと言われているわ。」
詳しいことを知っているクロエに、流石はサラノア様の生まれ変わりだと思った。
「エドウィンの婚約者はサウスユークの第一皇女で、あの時はとても揉めたわ。」そう言って笑ってはいるが、相当大変だっただろうなと思う。
「どうやって解決したのですか?」
「まあ、早く言えば皇女様に認めてもらえたと言うことかしら?」そう言っていたので、もう蟠りはないのだろうと感じた。
「サウスユークには馬車で1週間ほどかかるのだけれど、グリニエルとサウスユークは同盟を結ぶ友好国だから魔法での転送が許されているわ。グリニエルとサウスユークにものの何分かで着くことが出来るの。それなりの魔力とお金がかかるから頻繁には使われないのだけれど、安心して向かうことができるでしょう?」
そう言ってクロエは笑いかけてくれた。
「今回は3日間滞在するだけだから、そんなに気負わずに行ってくるといいわ。レオンノアの婚約者のお披露目として行くのだから堂々とするのよ。」そう言って励ましてくれた。
それからサウスユークで咲く植物の話や暖か過ぎるサウスユークでの過ごし方を教えてもらったのだった。
___
「レオン、少し話があるのだけれど。」
そう言って入ったのは執務室だ。
「どうした、リリィ。」
直様自分のご指名がかかったことにレオンはとても嬉しそうだ。
「サウスユークでは、グリニエルと気候が違うから、ドレスの発注をしたいのだけれど、クロエと話をしながら決めたいから王宮に呼び付けたいの。良いかしら?」
本当なら街まで買いに行きたいのだが、サウスユーク用の薄着のドレスを作るとなると、すぐに王太子妃が街を出歩いていると気付かれてしまう為、仕方なく王宮に呼ぶことにしたのだ。
王太子妃としての外出となれば護衛がいくらいても足りない。
私はクロエからそう指摘されたので、レオンに相談しにきたのだ。
「ああ。分かった。すぐ手配するよ。」
___
次の日、ドレス作りのラメリア・ウォーカーがやってきた。王宮の客間には私とクロエ。そしてレオンがいた。
「ラメリアは腕が良くて、私も以前サウスユークに行くときに仕立てて貰ったことがあるの。」
クロエがそういうと、ラメリアはクロエが何者なのかとジッと見ていた。
「…サラノア様でしょうか。」
少し疑いつつも、やはり面影があるようで、直ぐに気付いていた。
「ええ。訳あって若いのだけれど、あなたのことは良く覚えているわ。素敵なドレスだったもの。今日は私の義娘に外交用のドレスを仕立ててほしいのよ。」
お願いできるかしらとクロエが言う。するとラメリアは笑ってお任せくださいと言っていた。
「王太子殿下はお下がりくださいませ。今からサイズなどを測ります。そして殿下がいては、サウスユーク用のドレスを仕立てるのに支障が出るので、仕上がり後の確認だけでお願い致します。」
キッパリと言うラメリアに少し驚く。すると隣でクロエが、私の時にエドウィンが露出が多すぎるとか丈が短いとか仕立ての邪魔になる発言ばかりしたから仕方ないの。ごめんなさいね。とレオンに言っていた。
レオンは渋々執務に戻り、扉の向こうには護衛としてリオネルが置かれた。
「王太子妃様。私はラメリア・ウォーカーと申します。まさか人生の中で王太子妃様2人のドレスを仕立てることができようとは思ってはおりませんでした。力を尽くしますので、素敵なドレスを作りましょう。」
そう言ってラメリアは笑っていた。
サウスユークでは今、胸元が大きく開いたものやホルターネック、オフショルダー、深いスリットが入ったものや背中の大きく開いたものが流行っているらしい。
どのデザイン用紙を見ても、自分に合うのだろうかと不安になるものばかりだ。
サウスユークのドレスは主に胸元が大きく開いているらしく、クロエも苦戦したらしい。
「私の時はエドウィンが大反対して、結局、薄い透けた布を胸元にあしらってもらったわ。」苦笑いでクロエが言う。
「ええ、ええ。陛下はサラノア様の肌を誰にも見せたくないのだと豪語しまして、ドレスが1着も作れないのではと心配になりました。」ラメリアは陛下は職人泣かせだと少し怒ったように言う。
「どのデザインならいいと思う?」私がそう聞くとホルターネックで肩を出すデザインと、オフショルダー、そしてスリットが入っているものはあまり抵抗なく着れるだろうとオススメされる。
私はそのデザインでドレスをしたててもらうことにする。クロエも混ざって3人でデザインを固めていき、納得できるものが完成したのだ。
ラメリアはその原案の提出をせずに作業に取り掛かるという。理由は言わずともわかった。せっかく固まった案を白紙に戻しかねない人物がいるからだ。
私はラメリアにお願いし、ドレスの心配はなくなったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
681
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる