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リリベルの安定
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私はウィルに書類をもらいに執務室を訪れた。コンコンと扉を叩いて開く。
「失礼致します。」
「副隊長も殿下も今はいないよ~。」
そういうヴィヴィはぐてっと机に伸びていた。
「ヴィヴィ。誰もいないからと言って、そんな態度はダメだと思うわ。」
伏せていた顔を私に向けてヴィヴィは言った。
「だって、書類が全く片付かないんだ。」
と泣き言を洩らす。
私ははぁとため息を吐いて書類に目を通した。
「こっちの書類はお父様行きね。こっちは報告するだけでいいわ。これは判子を押して、これは却下よ。…」一通りどんな判断をすべきか分ける。
「これで少しは処理が楽になるんじゃないかしら?」そう言ってヴィヴィを見た。
「お嬢は本当に何でもできるのな。」
いつもお調子者のヴィヴィが真面目な声で言う。そのことに少し違和感があった。
「ヴィヴィ?」
すると執務室の扉が開いた。
「リリィ。もう来ていたのか。」
入ってきたのはウィルだ。
「入ってきたのが私で良かったな、殿下だったらきっとヴィヴィに手を出されていなかったかと大騒ぎされていただろう。」そう言って笑っていた。
「酷いっすよね、俺がお嬢を襲うのは魔力に当てられた時だけなのに~。」
十分恐ろしい事を言ったヴィヴィはいつものお調子者に戻っていた。
「ウィル。早速で申し訳ないけど、視察に行く資料を貰いに来たの。」
「ああ、それなら出来てる。一通り見て、何かあれば聞かせてくれ。」
私は書類に目を通していく。必要なことが全て書かれている。足りないものはウィルが付け加えてくれていたおかげで分かりやすかった。
「さすがウィル。分かりやすいわ、ありがとう。」そう言うとウィルは笑っていた。
「それより、リリィ。聞きたいことがあるんだが…。殿下と何回程シたんだ?」
「っ⁈」
突然の問いに私は驚いた。咄嗟に魔力を抑える。するとまたウィルが口を開いた。
「やっぱりか。リリィ。リリィの魔力が少しだが安定したように感じるんだ。変な事を聞いて驚かせて悪かった。」
ウィルの質問の意味が分かって安堵する。
そして咄嗟にヴィヴィを振り返った。
ヴィヴィは魔力に弱い。そのヴィヴィが、魔力に当たるたびに私は酷い目に合いそうになってきたのだ。だから心配になって振り返った。だがそこには顔を真っ赤にしているだけのヴィヴィがいた。魔力に弱いヴィヴィでも、それだけで済んでいたのだ。
「え、ヴィヴィ?」
「待ってくれお嬢。俺の名前を呼ばないでくれ。」更に真っ赤になるヴィヴィを助けてほしいとウィルに頼む。
ウィルはヴィヴィの前で手を叩く。
パンッという音と共にヴィヴィが正気に戻る。
「~はぁ。」
解放されたヴィヴィはため息をこぼした。
「ヴィヴィがこれだけの影響で済むとは思わなかった。これで少しは2人きりになっても安心できるな。」ウィルはそう言って笑っていた。
「リリィっ」
執務室が急に開かれる。
「殿下。どうなさったのですか?」
「リリィの魔力を少し感じた気がしてね。急いで戻ってきたんだ。大丈夫かい?」
そう言って殿下は私が怪我をしていないかを見る。
「殿下。リリィは少しですが、魔力が安定したようです。今それを確かめさせていただきました。」
それを聞いて私は顔を赤らめた。
「確かめた?どうやって?」
私に何かをしたと思った殿下の声が低くなった。
それをウィルは気にせずに続けた。
「リリィに殿下とのシた回数を訪ねただけです。」
そう言われて更に私は顔を赤くした。
そして殿下は何が起きたか理解したようだった。
「ウィル。私の魔力は自分の意思で使うことは可能かしら?」
「私はミアリサと違って詳しいことは分からないが、リリィの魔力が安定すれば、自分の意思で使うことが出来るようになるかもしれない。今まさに自分で魔力を抑えているように。そして、リリィの魔力は何かに思いを入れ込むことができるのだと思う。例えば人に恋心を入れたり。薬草に効果を入れたり、料理に恋心が混ざるのだってそうだろう?」
「思いを物に込める魔力。」
「今リリィが持っている能力を推測しただけだ。詳しいことはミアリサに聞いた方がいいだろう。」
「今はまだ安定と不安定の波があるんだ。不用意に使うような真似はするな。必ず私か殿下が近くにいなければ使ってはいけない。そして殿下からの安定を得た時でなければならないと考えておくべきだ。」
私はまた顔が熱くなる。安定が何を指すかが分かったからだ。
「そうね。ありがとう。気をつけるわ。」
そう言って私は逃げるように執務室を後にした。
「失礼致します。」
「副隊長も殿下も今はいないよ~。」
そういうヴィヴィはぐてっと机に伸びていた。
「ヴィヴィ。誰もいないからと言って、そんな態度はダメだと思うわ。」
伏せていた顔を私に向けてヴィヴィは言った。
「だって、書類が全く片付かないんだ。」
と泣き言を洩らす。
私ははぁとため息を吐いて書類に目を通した。
「こっちの書類はお父様行きね。こっちは報告するだけでいいわ。これは判子を押して、これは却下よ。…」一通りどんな判断をすべきか分ける。
「これで少しは処理が楽になるんじゃないかしら?」そう言ってヴィヴィを見た。
「お嬢は本当に何でもできるのな。」
いつもお調子者のヴィヴィが真面目な声で言う。そのことに少し違和感があった。
「ヴィヴィ?」
すると執務室の扉が開いた。
「リリィ。もう来ていたのか。」
入ってきたのはウィルだ。
「入ってきたのが私で良かったな、殿下だったらきっとヴィヴィに手を出されていなかったかと大騒ぎされていただろう。」そう言って笑っていた。
「酷いっすよね、俺がお嬢を襲うのは魔力に当てられた時だけなのに~。」
十分恐ろしい事を言ったヴィヴィはいつものお調子者に戻っていた。
「ウィル。早速で申し訳ないけど、視察に行く資料を貰いに来たの。」
「ああ、それなら出来てる。一通り見て、何かあれば聞かせてくれ。」
私は書類に目を通していく。必要なことが全て書かれている。足りないものはウィルが付け加えてくれていたおかげで分かりやすかった。
「さすがウィル。分かりやすいわ、ありがとう。」そう言うとウィルは笑っていた。
「それより、リリィ。聞きたいことがあるんだが…。殿下と何回程シたんだ?」
「っ⁈」
突然の問いに私は驚いた。咄嗟に魔力を抑える。するとまたウィルが口を開いた。
「やっぱりか。リリィ。リリィの魔力が少しだが安定したように感じるんだ。変な事を聞いて驚かせて悪かった。」
ウィルの質問の意味が分かって安堵する。
そして咄嗟にヴィヴィを振り返った。
ヴィヴィは魔力に弱い。そのヴィヴィが、魔力に当たるたびに私は酷い目に合いそうになってきたのだ。だから心配になって振り返った。だがそこには顔を真っ赤にしているだけのヴィヴィがいた。魔力に弱いヴィヴィでも、それだけで済んでいたのだ。
「え、ヴィヴィ?」
「待ってくれお嬢。俺の名前を呼ばないでくれ。」更に真っ赤になるヴィヴィを助けてほしいとウィルに頼む。
ウィルはヴィヴィの前で手を叩く。
パンッという音と共にヴィヴィが正気に戻る。
「~はぁ。」
解放されたヴィヴィはため息をこぼした。
「ヴィヴィがこれだけの影響で済むとは思わなかった。これで少しは2人きりになっても安心できるな。」ウィルはそう言って笑っていた。
「リリィっ」
執務室が急に開かれる。
「殿下。どうなさったのですか?」
「リリィの魔力を少し感じた気がしてね。急いで戻ってきたんだ。大丈夫かい?」
そう言って殿下は私が怪我をしていないかを見る。
「殿下。リリィは少しですが、魔力が安定したようです。今それを確かめさせていただきました。」
それを聞いて私は顔を赤らめた。
「確かめた?どうやって?」
私に何かをしたと思った殿下の声が低くなった。
それをウィルは気にせずに続けた。
「リリィに殿下とのシた回数を訪ねただけです。」
そう言われて更に私は顔を赤くした。
そして殿下は何が起きたか理解したようだった。
「ウィル。私の魔力は自分の意思で使うことは可能かしら?」
「私はミアリサと違って詳しいことは分からないが、リリィの魔力が安定すれば、自分の意思で使うことが出来るようになるかもしれない。今まさに自分で魔力を抑えているように。そして、リリィの魔力は何かに思いを入れ込むことができるのだと思う。例えば人に恋心を入れたり。薬草に効果を入れたり、料理に恋心が混ざるのだってそうだろう?」
「思いを物に込める魔力。」
「今リリィが持っている能力を推測しただけだ。詳しいことはミアリサに聞いた方がいいだろう。」
「今はまだ安定と不安定の波があるんだ。不用意に使うような真似はするな。必ず私か殿下が近くにいなければ使ってはいけない。そして殿下からの安定を得た時でなければならないと考えておくべきだ。」
私はまた顔が熱くなる。安定が何を指すかが分かったからだ。
「そうね。ありがとう。気をつけるわ。」
そう言って私は逃げるように執務室を後にした。
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