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リリベルの最後のお出かけ

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次の日、
私はウィルとの久しぶりの外出に
ウキウキしていた。



街へ行くと知らされていた為、
ワンピースドレスを着て馬車を待つと、
ヴァージル家の馬車で迎えにきたウィルと共に馬車に乗った。










「…リリィ。」
「なあに。ウィル。」

ウィルと出かけるのはいつぶりだろうか
と馬車の小窓から外を眺めていると、
ウィルが口を開く。


「リリィは、もうすぐ王太子妃だな。」


殿下と婚儀を挙げればそうなるので、
ええそうね。と返事をした。


「婚約をしてしまえばオーウェン公爵邸に
帰ることも少なくなって、
そのまま嫁ぐことになると聞いた。
私は、リリィがそれを
寂しがっているんじゃないかと
ずっと気がかりだったんだ。」


「っ!」




ウィルを振り返るとウィルは反対のドアについている小窓から外を眺めていた。



「…、」



ウィルの言った通りだった。



私は1ヶ月を切っている婚約を
早過ぎるのではと思っていた。



殿下のことは愛している。
それなのにモヤモヤした気持ちがあったのだ。


それは邸宅にいるお父様や妹、
侍女たちと離れることが
寂しかったのだと気づいた。






「ウィル…」


ウィルは気付いてくれていた。



私の寂しさを。



「…っ」



「だからこそ、婚約する前に
自由に街を歩かせたいと思った。
…今回のことはオーウェン公爵には承諾いただいているから、リリィのしたいことをしようか。」




こちらを振り返り、
優しく微笑むウィルはどこか寂しそうだ。





「嬉しいわ、でも、
折角優勝して得た休みなのにいいの?
もっとやりたいこととかあるんじゃ…」


ウィルには続けた休みなど殆どない。
だからこそ、そんな貴重な休みを
私に使ってくれることにが申し訳ないのだ。



「リリィとは執務では会えるけど、
こうやって一緒に出かけることはなくなってしまう…
だからどんな手を使っても
殿下に勝って休みが欲しかったんだ。」

殿下に対してなのか、
ウィルは申し訳なさそうに笑っていた。

そして、その言葉を聞いてウィルとは
もう出かけたりできないのだと思った。

執務でいつも会っているからか、
全然気づかなかったと急に寂しくなった。




「さあ、リリィ笑って。
想いあっている2人が結婚できるんだ、
そんな幸せなこと他にないよ。
この休みでやりたいことをして、
笑顔で婚約できるように私と一緒に考えよう。」

ウィルには敵わない。
ウィルは私の1番の理解者で、
他に替えることのできない
大切な幼馴染だと心の中で思った。

「ウィル、ありがとう。」

その言葉を聞いたウィルは静かに笑っていた。

「さてリリィ。今日は何をしようか?」

気を取り直して予定を決める。

「ウィル。私行きたいところが沢山あるの。
良いかしら?」

「ああ。今日はとことん付き合うよ。」













私は沢山の店を回る。

それはもう目に付く店を全て回るのだ。

「この時計素敵じゃない?」

今選んでいるのはルーナンのプレゼント。

革のベルトで作られたシックな腕時計。

私は邸宅にいる全ての人にプレゼントをしたいと思って次々と店を巡っていた。

「ルーナンは時間にルーズだから良いんじゃないか。リリィがプレゼントすれば、ルーナンもちゃんと付けるだろうし。」

ルーナンは時計を見ない。
それだけ植物が好きだと言うことなのだろうが、
困ることもある。だから腕時計を選んだのだ。

次はマーサに探すわ!そう言って次の店に入る。
みんなの買い物を終える頃には、
既に昼の時間を過ぎていた。




買い物した物は全てヴァージル家に送ってもらうことにしているため、荷物はない。

オーウェン家に送られてしまっては、
プレゼントの存在がバレてしまうため、
一時的にヴァージル家に置いておいてもらうのだ。


大幅にズレてしまったランチをするため、いつも行っているカフェへと入る。
そこでウィルはベーコンサンドイッチを買い、私も真似て同じものを買う。





「リリィ。今日はいつものじゃないのか?」

いつものとはパンケーキのことだ。





「今日はいいの。ウィルと同じものを食べたいと思っていたんだもの。」


そういうと、ウィルは少し驚いていたが笑ってくれた。


人が疎の店内でランチをする。
たまにはこんなに静かなのもいいなと思った。

食べ終わってゆっくりと紅茶を飲む。

私は小さなショルダーバッグから、
先程買った包装されている小さな箱を
取り出す。

青い包装用紙に黄色のリボンを付けたシンプルなもの…それをウィルに差し出す。





「……これは?」

「さっきウィルにバレないようにこっそりと買った物なの。」



開けてもいいか?というウィルに、
コクンと頷く。



リボンを解き、箱を開けると中には万年筆が入っている。


「うわ、リリィが選んだんだよな?」

万年筆はネイビー色で艶々している、
使いやすいものを選んだ。

「ウィルがいつも使ってくれるものって何だろうと考えて万年筆にしたの。」と笑ってみせる。

「リリィ、とっても嬉しいよ。
ありがとう。」



ウィルの笑顔は私を落ち着かせる。

初めて会った時からずっとそうだった。

楽しい時も、辛い時も隣にいてくれたウィルと、もう並んで歩けなくなるのだと思うと目頭が熱くなった。


「ウィル。今まで本当にありがとう。
ウィルがいなかったら私は…」


そう言って涙が流れた。


「さっき言ったばかりだけど、
想いあって結ばれるんだ。
それは悲しいことではない。
私はずっとリリィの騎士だ。
いつでも頼っていい。」



殿下がリリィを悲しませることがあれば、
私が殿下を許さない。と安心させてくれた。





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