王太子は想わせ令嬢の虜〔R18〕

ウィルの剣武闘

執務室を後にした私は、
中で何が起こるか予想がついた為、
その日執務室には戻らなかった。




剣武闘大会は3日後。
私は剣武闘大会に向けて修練を積み、
ゆっくりと体を休めた。








大会当日になると凄い人だかりだったが、
隊長の娘ということで、リリィには
特別席が設けられていた為、
安心して試合に臨んだ。


勝ち上がってきた剣軍の隊員を
次々に負かしていく。




私は今のところ、剣軍の中で
1番の技術を持っている。
しかし、私にも勝つことができない人がいるのだ。それが殿下。



殿下は幼き頃から座学や剣術、
そして魔術など様々なことを
血反吐を吐くほどに学んできた。

その辺の生半可な努力や才能では
越すことなどできないのだ。




誰しもが思っていた通り、
私と殿下が勝ち進む。




武闘フロアには私と殿下だけ…
普通に戦えばきっと負けるということは
容易に考えついた。
それだけ殿下は強い。









「…リリィが見てますね。」


「当たり前だ。
絶対に手加減などしないからな。」






この間私を応援していたリリィを思い出す。

初めて見に行くのだから
勝ってほしいと言ってくれた彼女に、
どうか勝利を届けたい。




始め！という合図で私と殿下は組み合う。


木の剣のため、
コツンコツンとぶつかり合う音が響く。




殿下はいつもよりも真剣で、
やはり勝てないと思ってしまった。





「…リリィは…
私に勝ってほしいのですよ。」




余裕はないがニヤリと笑い、
殿下に揺さぶりをかける。



「っ！そんな訳がないだろう。」

　

剣でぶつかる毎に会話をする。





「この勝負に勝ったら、
リリィとデートする予定です。」



「んなっ！」




「…。勝負ありですね。」
　

殿下には予想外だったのか、動きが鈍る。


その隙を見逃さず、
私は殿下の剣を天へと払った。



「…っ！クソ！」




　　
剣は殿下の手から離れ、
地面にカランと落ちた。

ワーっと観客が湧く。



無敗の殿下を初めて負かすことができた私は、
殿下に近づいて握手をする。

そして
「リリィには弱いですね。」
と笑ってみせた。




「この…っ…フレッドっ。」


相当悔しかったのか、
握った手に力が入っていた。




「そこまでだ。
どんな理由があろうと、
負けは負けだ。
お主が負ける日を見れるとは。
はっはっは……実にいい試合であった。」



国王陛下が静止を出すと、
会場の盛り上がりは静まる。

「………して、お主の願いはなんだ。
金貨か。それとも地位か…何を求める？」






「…大変恐縮ではございますが、
…5日ほどの休みを頂きたく思います。」




私の願いは決まっていたため、
考えることなく口にした。

本当にその願いで良いのかと
思っているような時間が過ぎる。


「…よし、その願い、聞き入れよう。
ウィルフレッド・ヴァージルに
5日の休暇を約束した。
今日はお開きだ。
また来年も磨いた腕に期待しよう。」




陛下のその言葉に再度会場湧くと正式に場はお開きとなり、出待ちのものが外へと並び始めた。













＿＿

いつまでも会場に残っていると
令嬢や軍の隊員に囲まれてしまうため、
すぐに剣軍の執務室に籠る。





するとコンコンと扉が叩かれ、リリィが入ってきた。

「やっぱりここだった。」
笑顔でそう言うリリィを見る。

「今日の試合凄かったわね。ウィルも殿下も格好良かったわ！」
大会の熱が冷えていないのか、リリィがいつもよりも興奮しているのが分かった。

「あれは作戦勝ちだ。普通に戦えば負けてしまうからな。」
私はリリィの言葉を否定した。それでも勝ったことには変わりないわと笑ってくれた。

「リリィ。明日から休みが取れたんだ。連れていきたいところがあるから一緒に出かけよう。」

「？。ええ、いいわよ。ウィルが私にお願いするのってなんか新鮮で嬉しいわ。」

そうしてリリィと出かける約束を結ぶことができた。