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戦い
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私たちがバタバタと走る中、街の人々も王都へと急いでいた。
きっと避難指示でも下されたのだろう。王都と街の間には地下へ続く避難経路が設置されている。そこへとみんな降りていくのだ。
私たちはその混雑する中を懸命に潜り、王都へと向かう。その最中、まだ逃げる準備をするセレンナが見えた。
「シャノン!ちょっと手伝って!」
エルピス孤児院には沢山の子どもたちがいる。そしてまだ乳飲み子がいるのだ。
逃げるまで時間がかかる。
「セレンナ!大丈夫?」
「えっ。皇女様⁈」
セレンナは慌てて敬意を示す為頭を下げた。私はそれを直ぐに止めるよう口を開き、次々に指示を出した。
「シャノン。移転魔法を使ってここにいる子どもたちを避難所にお願い。距離は遠くないし、魔法陣を描いてすぐにでも転送して欲しいの。」
移転魔法は決められた魔法陣に向けて人や物を転送することのできる魔法だ。それは距離があれば難しくなり、人が多いと回数も多くなる。今回の場合、シャノンの魔力では2回必要だ。
「まずはマーリンと子どもたち3人。そのあとはセレンナと残った子どもたちを。いいわね?」
名前を呼ばれたマーリンは私の正体に気づいたようだが、口を開かなかった。
さすが騎士の卵というところだ。速やかに準備を終え、怖がる子どもたちを宥めているのだ。
「…かしこまりました。」
「な、なりません。皇女様!
私どもの為にそんな高度な魔法など…
私たちは後から急いで行けばどうにかなります!」
セレンナは緊張したようにそう告げる。しかしこちらも引くわけにはいかないのだ。
「…私が放っておけないの。国民を守るのが私たち王族の役目よ。お願いだから指示にしたがって頂戴。」
「………っ…。はい。
仰せのままに。皇女様。」
まだ少し震えている彼女の頭をそっと撫でてやる。するとセレンナはビクッと反応した。
「避難所に行けばシャガートもいるわ。彼の護衛を途中で抜けてしまったから、私はシャノンと共にいると伝えて頂戴。」
「えっ。わ、わかりました。ですが、皇女様も避難をなさいますよね?」
「…ゼノが戦っているの。私も彼と共に戦いたいわ。」
「ゼノ…兄?…っ。まさか…!」
まだ会話の途中だったが、シャノンの手によって転送が完了した。
「ありがとう。シャノン。」
「いいえ。でもなぜ急に?」
「ここにいた子たちは
ゼノの家族だからよ。
私情だけど、少しくらい特別扱いしたっていいでしょう?」
「…そうですか。まあ、確かにあの人数の子どもを連れて避難するのは大変でしょうからね。適した判断だったと思います。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。さあ、行きましょう。」
私はまた来た道を戻り、カミーリアの元へと辿り着いた。
「…カミーリア。ごめんね。何もできなくて。」
私がそういうと、サワサワと葉が揺れた。
生命の樹には騎士が集まったが、
防御魔法や回復魔法を使う者しかいない。戦いに慣れている人材はゼノと共に遠征に行った為、口には出したくないが、勝ち目はない。
しかし皆、怖いと思いつつも立ち向かおうとここに立っているのだ。
何としても国と民を守る。
彼の戻るべき場所は私の手で残さなければならないのだ。
すると西の空が更に暗く染まる。それはなんだか重い空気を連れてきているようだ。
「何なのあれ…」
重々しい空の上を飛びながらこちらへ向かって来るものが目に入る。
「…ガーゴイルにキメラ…。
なんて数だ。」
悪魔のような顔をした翼のあるガーゴイル。
そして沢山の頭を持った竜、キメラ。
どちらも最悪の魔物。
目にするのは初めてだ。
「直ちに国中に防御魔法を掛けろ!
そして防壁を維持する為に防御魔法を使うことのできる者に回復魔法をかけ続けるんだ!」
シャノンの声に固まっていた者達が動き出す。そして何重にも防御魔法で造られた防壁が張られた。
「…いつまで持つのだか。」
最後に張られたのはシャノンの防御魔法だ。シャノンの防御魔法は高度なものではあるが、この数の魔物を相手に、どこまで耐えられるかは分からないようだ。
『………ヴィクトリア。』
「っ!カミーリア!
良かった、話せるのね!」
『もう私の力も持たないわ。
みんな逃げて。』
「嫌よ!魔穴はエネルギーを欲している。きっと貴方を飲み込む為にこっちに来ているのでしょう?」
『…もう私が大地を癒すのにも限界が近いの。私が朽ちれば、空気が荒む。それを吸ったあなた達はきっと倒れてしまうわ。その前にここから逃げなさい。』
「ゼノが戻るまで必ずここで食い止めたいの!お願い、私の魔力をあげる。だからもう少し踏ん張って!」
『ありがとう。でもね、ヴィクトリア。あなたの魔力を使ったとしても、ゼノは……。ゼノはきっと間に合わないわ。』
「えっ?」
『シトロンも言っていたでしょう?
8年前。魔穴を封じた彼は戻らなかったの。1人で封じれば命を落とす。今回は3人いるようだから、その3人でやれば命は落とさないかもしれないけど、代わりに魔力はかなり消費するわ。そんな中で彼がここまで戻ってこれるはずがない。だから逃げて。』
「…。ゼノはきっと戻るわ。私にそう言ったの。」
『…っ。私も…私もきっとガイルは戻ると思っていたわ。でも戻らなかった。
私は大地を癒すのが遅れ、犠牲を沢山出した。もうそんなことはしたくない。』
「…ガイル?
……お母様の騎士よね。」
『……ええ。ガイルは誰よりも強い人だったわ。だからあの時も、魔穴の封印へと呼ばれた。しかし次々に仲間が殺され、残された彼は自らの命を使って魔穴を閉じたの。
あの頃よりも魔穴は更に大きくなった。あれを封じる為には余程の腕が必要よ。
きっと苦戦するでしょう。
そしてゼノが魔穴を封印した後、ここへと戻るまでこの防御魔法は持たないわ。
私に魔物が群がり、私が自身の暴走を謀れば大半の魔物は消すことができるはずよ。
大地は私に代わってシトロンが癒してくれる。だからあなた達は地下に隠れ、ゼノが戻るまで防御魔法で身を隠していて欲しいのよ。』
「……カミーリア。言いたいことは分かったわ。
でもあなたを1人にすることはできない。」
『…私は…彼と共に在りたいの。彼が守ったこの国を私も同様に守れるのならそれ以上の幸せはないわ。』
「彼って、もしかしてガイルのこと?
どうしてそんなに?」
『……ガイルは私が唯一愛してしまった人。私は彼に全てを捧げたいとすら思っていたわ。それくらい彼が好きなの。
だから私は、彼が守ったこの国を絶対に守りたい。』
「カミーリア……。分かったわ…。
それじゃ、あなたを頼らせてもらう。」
『ヴィクトリア…。』
「その代わり私の魔力も使って耐えて頂戴。あなたの気持ちは私と似ているから…」
『っ…。なんて頑固なのかしら…
エリザベートにそっくりね。」
「親子ですもの。」
どうやらお母様が命を張ったのはお母様自身の考えだったようだ。それなら私にもその頑固さが遺伝していても許してほしい。
「私は命をかけない。みんな生き延びるのよ。分かったわね?」
「…っ。どこからそんな自信がでてくるのよ。…でも。嬉しいわ。
……やりましょう。
ゼノが戻るまで何としても大地は私が持たせてみせるわ。』
私は手を合わせ祈る。
カミーリアに魔力をどんどん流していくと、カミーリアがどれほど渇望していたかが伝わってくるようだった。
そんな中、国に張られた防御魔法は1枚1枚削られていった。
「防御魔法が破られた者はまた内側に防壁を施せ!ゼノが戻るまで耐えるんだ!」
シャノンの防御魔法も破られ、また1番内側に防壁を貼る。何度も何度も防御魔法が破られ、直ぐそこに魔物が近づいている。
ザッと見て10、いや、15はいるだろうか。魔物というだけで厄介なのにそれが上空を飛んでいるのだ。ジリジリと確かに距離が縮む。
1人、また1人と魔力が尽き、倒れ込んでいく。最後に残ったのはシャノンだった。
シャノンは最後の1枚となった防壁を強化する為に残りの魔力を全て注ぎ込む。
「ゼノは…まだなのか…。
もう持たないぞ!」
…ゼノ。
負けられない。
逃げるわけにもいかない。
私は彼を信じたい。
きっと避難指示でも下されたのだろう。王都と街の間には地下へ続く避難経路が設置されている。そこへとみんな降りていくのだ。
私たちはその混雑する中を懸命に潜り、王都へと向かう。その最中、まだ逃げる準備をするセレンナが見えた。
「シャノン!ちょっと手伝って!」
エルピス孤児院には沢山の子どもたちがいる。そしてまだ乳飲み子がいるのだ。
逃げるまで時間がかかる。
「セレンナ!大丈夫?」
「えっ。皇女様⁈」
セレンナは慌てて敬意を示す為頭を下げた。私はそれを直ぐに止めるよう口を開き、次々に指示を出した。
「シャノン。移転魔法を使ってここにいる子どもたちを避難所にお願い。距離は遠くないし、魔法陣を描いてすぐにでも転送して欲しいの。」
移転魔法は決められた魔法陣に向けて人や物を転送することのできる魔法だ。それは距離があれば難しくなり、人が多いと回数も多くなる。今回の場合、シャノンの魔力では2回必要だ。
「まずはマーリンと子どもたち3人。そのあとはセレンナと残った子どもたちを。いいわね?」
名前を呼ばれたマーリンは私の正体に気づいたようだが、口を開かなかった。
さすが騎士の卵というところだ。速やかに準備を終え、怖がる子どもたちを宥めているのだ。
「…かしこまりました。」
「な、なりません。皇女様!
私どもの為にそんな高度な魔法など…
私たちは後から急いで行けばどうにかなります!」
セレンナは緊張したようにそう告げる。しかしこちらも引くわけにはいかないのだ。
「…私が放っておけないの。国民を守るのが私たち王族の役目よ。お願いだから指示にしたがって頂戴。」
「………っ…。はい。
仰せのままに。皇女様。」
まだ少し震えている彼女の頭をそっと撫でてやる。するとセレンナはビクッと反応した。
「避難所に行けばシャガートもいるわ。彼の護衛を途中で抜けてしまったから、私はシャノンと共にいると伝えて頂戴。」
「えっ。わ、わかりました。ですが、皇女様も避難をなさいますよね?」
「…ゼノが戦っているの。私も彼と共に戦いたいわ。」
「ゼノ…兄?…っ。まさか…!」
まだ会話の途中だったが、シャノンの手によって転送が完了した。
「ありがとう。シャノン。」
「いいえ。でもなぜ急に?」
「ここにいた子たちは
ゼノの家族だからよ。
私情だけど、少しくらい特別扱いしたっていいでしょう?」
「…そうですか。まあ、確かにあの人数の子どもを連れて避難するのは大変でしょうからね。適した判断だったと思います。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。さあ、行きましょう。」
私はまた来た道を戻り、カミーリアの元へと辿り着いた。
「…カミーリア。ごめんね。何もできなくて。」
私がそういうと、サワサワと葉が揺れた。
生命の樹には騎士が集まったが、
防御魔法や回復魔法を使う者しかいない。戦いに慣れている人材はゼノと共に遠征に行った為、口には出したくないが、勝ち目はない。
しかし皆、怖いと思いつつも立ち向かおうとここに立っているのだ。
何としても国と民を守る。
彼の戻るべき場所は私の手で残さなければならないのだ。
すると西の空が更に暗く染まる。それはなんだか重い空気を連れてきているようだ。
「何なのあれ…」
重々しい空の上を飛びながらこちらへ向かって来るものが目に入る。
「…ガーゴイルにキメラ…。
なんて数だ。」
悪魔のような顔をした翼のあるガーゴイル。
そして沢山の頭を持った竜、キメラ。
どちらも最悪の魔物。
目にするのは初めてだ。
「直ちに国中に防御魔法を掛けろ!
そして防壁を維持する為に防御魔法を使うことのできる者に回復魔法をかけ続けるんだ!」
シャノンの声に固まっていた者達が動き出す。そして何重にも防御魔法で造られた防壁が張られた。
「…いつまで持つのだか。」
最後に張られたのはシャノンの防御魔法だ。シャノンの防御魔法は高度なものではあるが、この数の魔物を相手に、どこまで耐えられるかは分からないようだ。
『………ヴィクトリア。』
「っ!カミーリア!
良かった、話せるのね!」
『もう私の力も持たないわ。
みんな逃げて。』
「嫌よ!魔穴はエネルギーを欲している。きっと貴方を飲み込む為にこっちに来ているのでしょう?」
『…もう私が大地を癒すのにも限界が近いの。私が朽ちれば、空気が荒む。それを吸ったあなた達はきっと倒れてしまうわ。その前にここから逃げなさい。』
「ゼノが戻るまで必ずここで食い止めたいの!お願い、私の魔力をあげる。だからもう少し踏ん張って!」
『ありがとう。でもね、ヴィクトリア。あなたの魔力を使ったとしても、ゼノは……。ゼノはきっと間に合わないわ。』
「えっ?」
『シトロンも言っていたでしょう?
8年前。魔穴を封じた彼は戻らなかったの。1人で封じれば命を落とす。今回は3人いるようだから、その3人でやれば命は落とさないかもしれないけど、代わりに魔力はかなり消費するわ。そんな中で彼がここまで戻ってこれるはずがない。だから逃げて。』
「…。ゼノはきっと戻るわ。私にそう言ったの。」
『…っ。私も…私もきっとガイルは戻ると思っていたわ。でも戻らなかった。
私は大地を癒すのが遅れ、犠牲を沢山出した。もうそんなことはしたくない。』
「…ガイル?
……お母様の騎士よね。」
『……ええ。ガイルは誰よりも強い人だったわ。だからあの時も、魔穴の封印へと呼ばれた。しかし次々に仲間が殺され、残された彼は自らの命を使って魔穴を閉じたの。
あの頃よりも魔穴は更に大きくなった。あれを封じる為には余程の腕が必要よ。
きっと苦戦するでしょう。
そしてゼノが魔穴を封印した後、ここへと戻るまでこの防御魔法は持たないわ。
私に魔物が群がり、私が自身の暴走を謀れば大半の魔物は消すことができるはずよ。
大地は私に代わってシトロンが癒してくれる。だからあなた達は地下に隠れ、ゼノが戻るまで防御魔法で身を隠していて欲しいのよ。』
「……カミーリア。言いたいことは分かったわ。
でもあなたを1人にすることはできない。」
『…私は…彼と共に在りたいの。彼が守ったこの国を私も同様に守れるのならそれ以上の幸せはないわ。』
「彼って、もしかしてガイルのこと?
どうしてそんなに?」
『……ガイルは私が唯一愛してしまった人。私は彼に全てを捧げたいとすら思っていたわ。それくらい彼が好きなの。
だから私は、彼が守ったこの国を絶対に守りたい。』
「カミーリア……。分かったわ…。
それじゃ、あなたを頼らせてもらう。」
『ヴィクトリア…。』
「その代わり私の魔力も使って耐えて頂戴。あなたの気持ちは私と似ているから…」
『っ…。なんて頑固なのかしら…
エリザベートにそっくりね。」
「親子ですもの。」
どうやらお母様が命を張ったのはお母様自身の考えだったようだ。それなら私にもその頑固さが遺伝していても許してほしい。
「私は命をかけない。みんな生き延びるのよ。分かったわね?」
「…っ。どこからそんな自信がでてくるのよ。…でも。嬉しいわ。
……やりましょう。
ゼノが戻るまで何としても大地は私が持たせてみせるわ。』
私は手を合わせ祈る。
カミーリアに魔力をどんどん流していくと、カミーリアがどれほど渇望していたかが伝わってくるようだった。
そんな中、国に張られた防御魔法は1枚1枚削られていった。
「防御魔法が破られた者はまた内側に防壁を施せ!ゼノが戻るまで耐えるんだ!」
シャノンの防御魔法も破られ、また1番内側に防壁を貼る。何度も何度も防御魔法が破られ、直ぐそこに魔物が近づいている。
ザッと見て10、いや、15はいるだろうか。魔物というだけで厄介なのにそれが上空を飛んでいるのだ。ジリジリと確かに距離が縮む。
1人、また1人と魔力が尽き、倒れ込んでいく。最後に残ったのはシャノンだった。
シャノンは最後の1枚となった防壁を強化する為に残りの魔力を全て注ぎ込む。
「ゼノは…まだなのか…。
もう持たないぞ!」
…ゼノ。
負けられない。
逃げるわけにもいかない。
私は彼を信じたい。
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