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金曜日②
しおりを挟むリアはいつもと変わらない。
それを見ているとやはりリア自身が考えてしていることではないと思う。
俺はそれをはっきりとさせる為、いつものようにリアの部屋にいた。
「リア。それじゃ、おやすみ。」
「ええ。おやすみなさい。」
いつものようにギュッと抱き合い、キスをする為に少し離れる。
すると聞き取れないほどの声でリアが深眠と唱えたのが分かった。
そしてそのまま俺にキスをした。
俺は今も先週もその前も魔法をかけられていたのだと気付く。今日は無効魔法を纏っている為、魔法にかかる事はないだろう。
しかし今のだけでは証拠は不十分だ。
俺はソッとリアから離れ、いつものように笑顔で分かれて自分の部屋へと戻った。
予定の時刻を間近に控え、俺はしっかりと起きていた。
念のために魔法を使っていてよかった。やはり俺に魔法を掛けてその隙に部屋を出ていたのか。
夢遊病ではない。
それならば俺に魔法をかける必要がないからだ。
隣の部屋からバタンと扉の閉まる音が聞こえ、俺は静かに部屋を出た。
壁伝いにリアを追う。何も履いていないのか、ヒタヒタと廊下を歩く音が聞こえるのだ。
リアならばせめて低いパンプスやスリッパだけでも履くだろう。
窓の向こうを見ると、シャガートがこちらを見ていた。
コクコクと俺に向けて頷くシャガートが見ていたのはやはりリアだったのだ。
一体どこまで行くのだろうか。
1番端にある踊り場へ来ると。リアは高い場所にある窓に向かって膝を付き、祈りを捧げている。
何をしているのだろうか。
カミーリアに祈りを捧げるのであればわざわざ人目を盗む必要はない。
長い時間リアはそのまま動かなかった。
かと思えば急にリアは立ち上がり、こちらを振り返った。
『誰じゃ。』
リアの体であるが、リアではない。
その雰囲気からしてカミーリアでもない。
白い目をしている彼女は誰だ。
「……。」
俺が姿を現すと、彼女は口角を上げた。
『ほう。私の魔法を無効化するとはの。見事じゃ。褒めてやろう。』
「…お前は誰だ?」
聞いたことのない喋り方に、誰かに操られているのは明確だった。
リアに何をさせるのが目的なのか、ここで何をしていたのか。聞きたいことはあるのに言葉が出なかった。
相手を刺激すれば情報は得ることができないからだ。
『…我が名はシトロン。
其方の愛はとても美味じゃ。
妾は其方を気に入っておる。』
「…シトロン…?」
聞いたことがない。しかし、しっかりと彼女に乗り移っているのだろう。
そして何故か俺を気に入ってるらしい。
「何故ここにリアを連れてきた?」
『…答えてやりたいが、もう時間じゃ。
部屋まで戻る力は残っておらぬ。
またの。』
そう言ってシトロンはリアから意識を離したようで、リアはそのまま崩れた。
俺は咄嗟にリアを抱えることができ、ホッとしたが、リアが体を向けていた窓を見ると全身にゾワッと悪寒が走った。
そこには神々しく光る白い木があった。
「あんな樹…見たことないぞ。」
白く光る樹。それは先ほど見たシトロンを思わせる。
「……どういう事だ。」
一体何が起きている。
俺は困惑しながらも懸命に考えたが、答えを導き出す事は出来なかった。
仕方なくリアを抱き上げて部屋へと戻り、シャノン卿への報告は明日にでもしようと思った。
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