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告白
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「おはようございます。」
いつものように部屋に入ると、リア様は椅子に座ったまま動かなかった。
「リア様。今日は一日お休みを頂きましたので、何かしたいことはありませんか?」
「…。」
「そうだ、食堂で摘める物を用意してもらったので食べませんか?」
そう言いながらクラッカーやサンドイッチ、フルーツなどを広げる。
「リア様の好きなフルーツサンドイッチです。」
リア様は目線をテーブルに下げたものの、また目線を戻してボーっとしていた。
泣いたのだろうか、目尻が赤い。
冷たいタオルを用意させようと廊下にいる侍女に声をかけ、俺はいつものようにリア様の少し後ろに立った。
どれだけ時間が過ぎただろうか。
侍女が持ってきた冷タオルでリア様の目元を冷やし終え、俺とリア様はひたすらに静かな時間を過ごした。
リア様は婚約の話に相当なショックを受けている。
何か俺にしてやれることはないのだろうかと考えてみたが、大した思い付きは浮かばなかった。
そしてふと、昨日のカミーリアの言葉を思い出した。
“ヴィクトリアを想うのなら自分に正直になること。あなたの想いはきっとヴィクトリアの力になる。”
本当だろうか。
俺の気持ち。それは2つある。ヴィクトリア様に献身的に仕えていたい騎士心。そしてリア様を一心に愛する恋心だ。
そのどちらも他人と比べてずば抜けているらしい俺は、シャノン卿の推薦でヴィクトリア様の専属騎士に選ばれた。
俺がリア様に恋心を抱いていると知られれば専属騎士としていられなくなってしまうかもしれない。今の地位は俺の剣の実力と彼女を襲う心配がないという信頼によるもの。
恋心を抱いてると本人に知られれば、気持ち悪がられ、傍にいることすら叶わないかもしれないのだ。
そう思うと自身の気持ちを告げることはしたくない。側で彼女を守れることはこの上なく光栄で幸せなのだ。
しかしそれは俺の都合。
俺が気持ちを伝えることで、何かリア様の力になるのであれば、俺は素直に気持ちを彼女に伝えるしかない。
「…リア様。
面白い話かは保証できませんが、私の話を聞いてくれませんか?」
そう言うと今度は俺に目線を合わせてくれた。
その行動を見て俺は話し始めることができた。
「私には、何年も前から憧れている方がいます。
その方は努力家で聡明で優しく、その人が通れば誰もが振り返る程美しい。
でも私がその方に憧れている理由は、誰よりもその方が自分色であるからなのです。
誰の色にも染まることなく、自身の考えを持ち、自分を信じる強さを持っている。私はそんな所に惹かれております。
私は本来、騎士隊長になるつもりなどなかった。でも彼女が、私を認めてくださったのです。
“貴方は上に立つ者だ”と。」
そこまで言うとリア様は徐々に目に光が差してきた。
「”歳など関係ない。”
人より剣術に優れていても、討伐遠征で功績を残しても、俺は若いという理由でずっと認められる機会などありませんでした。
それなのに彼女は私の力を認めてくれた。
どこで耳にしたのか、いつ見てくれていたのか、きっと日々の一瞬の出来事に過ぎないかもしれませんが、私は彼女の力になりたいと思うようになったのです。
何日悩んでも彼女の笑顔が頭から離れることはなく、俺は皇女様に恋をしました。」
「私は心からあなたを愛しております。
そしてもっとも近しい騎士としてリア様の側におります。あなたの力になりたい。心からそう思うのです。
リア様が望むのであれば剣となり、リア様が苦しい時には盾となりましょう。
あなたは1人じゃない。
私が側におります。」
そこまで言うとリア様はボロボロと涙を流していた。
「ゼノ…。」
俺はゆっくりとリア様に近付き、そっと抱きしめた。
「私…結婚したくない。
まだ死にたくないの…」
結婚すればきっと愛情不足で生命の樹が暴走する。それが分かっているのだろう。
「大丈夫です。私たちが何とかしてみせます。」
想い人がいるリア様はその人との結婚でなければならない。
その人と結婚するまでは俺のように忠誠心のある者か、シャノン卿のように家族愛を持ち互いに想い合っている者がリア様の支えでなければ、生命の樹を抑える為の心を補うことはできないのだ。
それを国王陛下に分かってもらわなければならない。
「…謁見は明日よ。
一体どうするつもりなの?」
「それは、カミーリアが力を貸してくれることになっております。」
「カミーリアが?
でもどうやって…?」
「カミーリアはリア様の身体に乗り移り、動くことができるのです。
昨日も私とシャノン卿の前に出てきてくれました。」
「し、知らなかったわ…」
リア様は信じられないように驚いている。それもそうだろう。暴走の時にしか出てこなかったカミーリアが手を貸してくれるのだ。カミーリアから言われなければ俺もシャノン卿も考えつかなかっただろう。
「カミーリアが国王陛下に話がしたいそうなので、カミーリアの話を終えてからリア様が話される方がスムーズかと思います。」
「どれくらいの時間カミーリアは出てこれるのかしら。長く止まれるといいのだけれど。」
「そうですね。それはリア様に掛かっています。」
「そうなのね。お父様を説得して婚約しないで済むのなら、私も頑張るわ。それで、私は一体何をしたらいいのかしら?」
「…それでは、私を拒否しないでくれますか?」
俺はにっこりと笑ってリア様を抱き上げる。
「きゃぁっ。」
急に抱き上げられたリア様はすぐに俺にしがみ付いた。
ゆっくりリア様をベッドへと下ろし、
口を開く。
「リア様が私を拒まないでくれるのであれば、その分長くカミーリアは留まってくれます。…私の愛情は底無しですから。」
「えっ…な、何をするのかしら?」
「…キスしてもよろしいでしょうか。」
「え?」
「私はリア様を愛しております。だからキスがしたい。ダメなら…」
「だっ…ダメではない…わ。」
顔を赤く染めたリア様がそう言うので
俺は機嫌よく唇を重ねた。
ダメならどうしようかと言おうと思ったが、その前にリア様からの承諾を得られて良かった。
深く深く、俺の気持ちが届くように、
嘘ではないと分かってもらうように俺は何度もキスをした。
リア様がたとえ誰かを想っていても、その人と結ばれるその時まで、俺はリア様を愛し抜く。
それが夫としてではなく、騎士としてだとしても。俺を拒まないでくれただけで、今は十分だ。
いつものように部屋に入ると、リア様は椅子に座ったまま動かなかった。
「リア様。今日は一日お休みを頂きましたので、何かしたいことはありませんか?」
「…。」
「そうだ、食堂で摘める物を用意してもらったので食べませんか?」
そう言いながらクラッカーやサンドイッチ、フルーツなどを広げる。
「リア様の好きなフルーツサンドイッチです。」
リア様は目線をテーブルに下げたものの、また目線を戻してボーっとしていた。
泣いたのだろうか、目尻が赤い。
冷たいタオルを用意させようと廊下にいる侍女に声をかけ、俺はいつものようにリア様の少し後ろに立った。
どれだけ時間が過ぎただろうか。
侍女が持ってきた冷タオルでリア様の目元を冷やし終え、俺とリア様はひたすらに静かな時間を過ごした。
リア様は婚約の話に相当なショックを受けている。
何か俺にしてやれることはないのだろうかと考えてみたが、大した思い付きは浮かばなかった。
そしてふと、昨日のカミーリアの言葉を思い出した。
“ヴィクトリアを想うのなら自分に正直になること。あなたの想いはきっとヴィクトリアの力になる。”
本当だろうか。
俺の気持ち。それは2つある。ヴィクトリア様に献身的に仕えていたい騎士心。そしてリア様を一心に愛する恋心だ。
そのどちらも他人と比べてずば抜けているらしい俺は、シャノン卿の推薦でヴィクトリア様の専属騎士に選ばれた。
俺がリア様に恋心を抱いていると知られれば専属騎士としていられなくなってしまうかもしれない。今の地位は俺の剣の実力と彼女を襲う心配がないという信頼によるもの。
恋心を抱いてると本人に知られれば、気持ち悪がられ、傍にいることすら叶わないかもしれないのだ。
そう思うと自身の気持ちを告げることはしたくない。側で彼女を守れることはこの上なく光栄で幸せなのだ。
しかしそれは俺の都合。
俺が気持ちを伝えることで、何かリア様の力になるのであれば、俺は素直に気持ちを彼女に伝えるしかない。
「…リア様。
面白い話かは保証できませんが、私の話を聞いてくれませんか?」
そう言うと今度は俺に目線を合わせてくれた。
その行動を見て俺は話し始めることができた。
「私には、何年も前から憧れている方がいます。
その方は努力家で聡明で優しく、その人が通れば誰もが振り返る程美しい。
でも私がその方に憧れている理由は、誰よりもその方が自分色であるからなのです。
誰の色にも染まることなく、自身の考えを持ち、自分を信じる強さを持っている。私はそんな所に惹かれております。
私は本来、騎士隊長になるつもりなどなかった。でも彼女が、私を認めてくださったのです。
“貴方は上に立つ者だ”と。」
そこまで言うとリア様は徐々に目に光が差してきた。
「”歳など関係ない。”
人より剣術に優れていても、討伐遠征で功績を残しても、俺は若いという理由でずっと認められる機会などありませんでした。
それなのに彼女は私の力を認めてくれた。
どこで耳にしたのか、いつ見てくれていたのか、きっと日々の一瞬の出来事に過ぎないかもしれませんが、私は彼女の力になりたいと思うようになったのです。
何日悩んでも彼女の笑顔が頭から離れることはなく、俺は皇女様に恋をしました。」
「私は心からあなたを愛しております。
そしてもっとも近しい騎士としてリア様の側におります。あなたの力になりたい。心からそう思うのです。
リア様が望むのであれば剣となり、リア様が苦しい時には盾となりましょう。
あなたは1人じゃない。
私が側におります。」
そこまで言うとリア様はボロボロと涙を流していた。
「ゼノ…。」
俺はゆっくりとリア様に近付き、そっと抱きしめた。
「私…結婚したくない。
まだ死にたくないの…」
結婚すればきっと愛情不足で生命の樹が暴走する。それが分かっているのだろう。
「大丈夫です。私たちが何とかしてみせます。」
想い人がいるリア様はその人との結婚でなければならない。
その人と結婚するまでは俺のように忠誠心のある者か、シャノン卿のように家族愛を持ち互いに想い合っている者がリア様の支えでなければ、生命の樹を抑える為の心を補うことはできないのだ。
それを国王陛下に分かってもらわなければならない。
「…謁見は明日よ。
一体どうするつもりなの?」
「それは、カミーリアが力を貸してくれることになっております。」
「カミーリアが?
でもどうやって…?」
「カミーリアはリア様の身体に乗り移り、動くことができるのです。
昨日も私とシャノン卿の前に出てきてくれました。」
「し、知らなかったわ…」
リア様は信じられないように驚いている。それもそうだろう。暴走の時にしか出てこなかったカミーリアが手を貸してくれるのだ。カミーリアから言われなければ俺もシャノン卿も考えつかなかっただろう。
「カミーリアが国王陛下に話がしたいそうなので、カミーリアの話を終えてからリア様が話される方がスムーズかと思います。」
「どれくらいの時間カミーリアは出てこれるのかしら。長く止まれるといいのだけれど。」
「そうですね。それはリア様に掛かっています。」
「そうなのね。お父様を説得して婚約しないで済むのなら、私も頑張るわ。それで、私は一体何をしたらいいのかしら?」
「…それでは、私を拒否しないでくれますか?」
俺はにっこりと笑ってリア様を抱き上げる。
「きゃぁっ。」
急に抱き上げられたリア様はすぐに俺にしがみ付いた。
ゆっくりリア様をベッドへと下ろし、
口を開く。
「リア様が私を拒まないでくれるのであれば、その分長くカミーリアは留まってくれます。…私の愛情は底無しですから。」
「えっ…な、何をするのかしら?」
「…キスしてもよろしいでしょうか。」
「え?」
「私はリア様を愛しております。だからキスがしたい。ダメなら…」
「だっ…ダメではない…わ。」
顔を赤く染めたリア様がそう言うので
俺は機嫌よく唇を重ねた。
ダメならどうしようかと言おうと思ったが、その前にリア様からの承諾を得られて良かった。
深く深く、俺の気持ちが届くように、
嘘ではないと分かってもらうように俺は何度もキスをした。
リア様がたとえ誰かを想っていても、その人と結ばれるその時まで、俺はリア様を愛し抜く。
それが夫としてではなく、騎士としてだとしても。俺を拒まないでくれただけで、今は十分だ。
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