6 / 38
必要なこと
しおりを挟む
自分の部屋になったその扉を叩く。
すると中から声が聞こえた。
「入れ。」
「こんな格好で申し訳ない…シャツのボタンが何個か取れてしまってね…」
困ったように言うシャノン卿はバスローブを着ていた。
「いえ…大丈夫です。」
やはり中では蜜なことでも行われていたのだろうかと虚しくなる。
「…ヴィクトリア様は?」
「眠っているよ。」
「そうですか…」
苦しい。その言葉に限る。
報われないと分かっていたが、やはり辛い。
最近ヴィクトリア様の近くにいすぎた為に欲が出たのだろうか。そんなことを考えた。
「混乱させているようだから、きちんと話すよ。こちらに座ってくれ。」
そう言われて向かい側の席へと座らされた。
「まずは仕事の話だ。君の仕事は何だ?」
「皇女をお守りすることです。」
「まあ、そうだな。生命の樹に行った時に皇女は仕事の話を済ませたと言っていた。
だが、その部分で抜けているところがあったようだ。だから今回こうなってしまった。」
つまりやるべきことをやらなかった為にこういう事態が起きたと言うことだろう。
「申し訳ございません。俺の責任です。」
俺の仕事という括りをしていたからには、俺が何かを忘れていたせいなのだと悟った。
頭を下げる俺に、シャノン卿は続けた。
「頭を上げてくれ。多分ヴィー…ヴィクトリア様が君に伝えなかったのだろう。」
そう言われてキョトンとした、
「何をでしょうか?」
「……毎日必ずスキンシップが必要だということだ。」
スキンシップ。スキンシップとはどこまでがそれなのだろうかと悩む。それと同時になぜそれが必要なのか分からなかった。
「1から説明するよ。まず、皇女は生命の樹を守っている。毎日エネルギーを与え、魔力を消耗していることは分かるね?
魔力は休めば回復する。しかしエネルギーを与える時に、彼女の心を少し積んでいくんだ。」
「心?」
「誰かから想われているという自信だ。
それが無くなってしまうと先程のように暴走し、誰かに愛されていると知る為に体を求めるんだ。」
先程までに何が起きていたか、今の言葉でハッキリとされてしまい、言葉を失った。
「誤解するなよ。先程の皇女は皇女であって皇女ではない。それに抱く訳ではないんだ。」
「え?」
どう見てもヴィクトリア様だった。
…いや、瞳の色だけ違かったことを思い出す。
「あれはカミーリア。生命の樹だ。
生命の樹が彼女の体を使って接触してくるんだ。心が足りないと言って、彼女と契約している者にそれを強請る。
普段のあの子ならきっと自分からキスなんてしないだろう?」
納得するしかない。
先程までの皇女は俺の知る皇女ではなかったのだから。
「……ゼノは想い人がいるそうだね。
それはヴィクトリア皇女じゃないのか?」
「っ。」
突然核心に触れられて言葉を失った。
「ゼノを調べているうちにそうではないかとずっと思っていたんだ。
そしてそうであってほしい。心から彼女を想う心はきっと彼女を救うことができると思っているんだよ。
想いがあれば、毎日のようにスキンシップをしてくれるだろうと思っていたが…
説明していなかったのならそれは無理だったのだろう。」
「…俺は何をするべきだったのですか?」
難しいことを処理しきれない俺はシャノン卿に分かりやすい説明を求めた。
「つまり、契約を済ませてヴィクトリア様にハグやキスを行なってほしい。」
それを聞き、スキンシップとは俺にとってなかなかハードルの高いものだったのだと気づかされる。
「私は毎日ハグをするようにしていたが…恋心を持っていない私の気持ちでは何とも防ぎきれなくてな。」
その言葉が俺の耳に引っかかり、シャノン卿に問う。
「え?2人は恋人同士なのでは…?」
するとシャノン卿は首を傾げた。
「ん?何を言っているんだ。
私はヴィーの従兄弟だ。」
「いとこ…?」
妙に距離が近く、ヴィーと愛称で呼んでいることにも納得した。
恋心ではなく、家族愛だったのだと思った。
「ははっ。まさかヴィーと恋人だと思われていたとは…参ったな。まあ。確かにこんな格好で何を言うんだと思うよな。
これは、シャツをカミーリアに引きちぎられてしまっただけなんだ。
…もし次暴走した時はゼノが止めてくれ。いいね?」
そう言って笑っていた。
「…とにかくゼノには一刻も早く皇女と契約を結んでほしいんだ。そうでなければスキンシップも暴走を止めることもできない。」
「お、俺は確かに皇女様を心から好き…ですが、もし皇女様に嫌がられでもしたらどうしたらいいのでしょうか?」
「それはないとは思うが…。私は仕事だから我慢しろと言ってたからな…」
「そうですか。
…分かりました。」
俺はヴィクトリア皇女に恋心を持っている。
俺がスキンシップを取りたくても彼女は嫌がるかもしれないのだ。
「ともかく、皇女が目を覚ましてからしか契約することはできない。今日はもう上がっていいから明日また皇女の部屋で3人で話そう。」
そう言い残し、シャノン卿は部屋を後にした。
ヴィクトリア皇女とシャノン卿は付き合っていなかった。しかしシャノン卿はヴィクトリア皇女の体に入ったカミーリアと何をしていたのだろうか…
抱いてはいない。だが
体を求められるということはどこまでがそれなのだろうと思い、俺はなかなか寝付く事ができなかった。
すると中から声が聞こえた。
「入れ。」
「こんな格好で申し訳ない…シャツのボタンが何個か取れてしまってね…」
困ったように言うシャノン卿はバスローブを着ていた。
「いえ…大丈夫です。」
やはり中では蜜なことでも行われていたのだろうかと虚しくなる。
「…ヴィクトリア様は?」
「眠っているよ。」
「そうですか…」
苦しい。その言葉に限る。
報われないと分かっていたが、やはり辛い。
最近ヴィクトリア様の近くにいすぎた為に欲が出たのだろうか。そんなことを考えた。
「混乱させているようだから、きちんと話すよ。こちらに座ってくれ。」
そう言われて向かい側の席へと座らされた。
「まずは仕事の話だ。君の仕事は何だ?」
「皇女をお守りすることです。」
「まあ、そうだな。生命の樹に行った時に皇女は仕事の話を済ませたと言っていた。
だが、その部分で抜けているところがあったようだ。だから今回こうなってしまった。」
つまりやるべきことをやらなかった為にこういう事態が起きたと言うことだろう。
「申し訳ございません。俺の責任です。」
俺の仕事という括りをしていたからには、俺が何かを忘れていたせいなのだと悟った。
頭を下げる俺に、シャノン卿は続けた。
「頭を上げてくれ。多分ヴィー…ヴィクトリア様が君に伝えなかったのだろう。」
そう言われてキョトンとした、
「何をでしょうか?」
「……毎日必ずスキンシップが必要だということだ。」
スキンシップ。スキンシップとはどこまでがそれなのだろうかと悩む。それと同時になぜそれが必要なのか分からなかった。
「1から説明するよ。まず、皇女は生命の樹を守っている。毎日エネルギーを与え、魔力を消耗していることは分かるね?
魔力は休めば回復する。しかしエネルギーを与える時に、彼女の心を少し積んでいくんだ。」
「心?」
「誰かから想われているという自信だ。
それが無くなってしまうと先程のように暴走し、誰かに愛されていると知る為に体を求めるんだ。」
先程までに何が起きていたか、今の言葉でハッキリとされてしまい、言葉を失った。
「誤解するなよ。先程の皇女は皇女であって皇女ではない。それに抱く訳ではないんだ。」
「え?」
どう見てもヴィクトリア様だった。
…いや、瞳の色だけ違かったことを思い出す。
「あれはカミーリア。生命の樹だ。
生命の樹が彼女の体を使って接触してくるんだ。心が足りないと言って、彼女と契約している者にそれを強請る。
普段のあの子ならきっと自分からキスなんてしないだろう?」
納得するしかない。
先程までの皇女は俺の知る皇女ではなかったのだから。
「……ゼノは想い人がいるそうだね。
それはヴィクトリア皇女じゃないのか?」
「っ。」
突然核心に触れられて言葉を失った。
「ゼノを調べているうちにそうではないかとずっと思っていたんだ。
そしてそうであってほしい。心から彼女を想う心はきっと彼女を救うことができると思っているんだよ。
想いがあれば、毎日のようにスキンシップをしてくれるだろうと思っていたが…
説明していなかったのならそれは無理だったのだろう。」
「…俺は何をするべきだったのですか?」
難しいことを処理しきれない俺はシャノン卿に分かりやすい説明を求めた。
「つまり、契約を済ませてヴィクトリア様にハグやキスを行なってほしい。」
それを聞き、スキンシップとは俺にとってなかなかハードルの高いものだったのだと気づかされる。
「私は毎日ハグをするようにしていたが…恋心を持っていない私の気持ちでは何とも防ぎきれなくてな。」
その言葉が俺の耳に引っかかり、シャノン卿に問う。
「え?2人は恋人同士なのでは…?」
するとシャノン卿は首を傾げた。
「ん?何を言っているんだ。
私はヴィーの従兄弟だ。」
「いとこ…?」
妙に距離が近く、ヴィーと愛称で呼んでいることにも納得した。
恋心ではなく、家族愛だったのだと思った。
「ははっ。まさかヴィーと恋人だと思われていたとは…参ったな。まあ。確かにこんな格好で何を言うんだと思うよな。
これは、シャツをカミーリアに引きちぎられてしまっただけなんだ。
…もし次暴走した時はゼノが止めてくれ。いいね?」
そう言って笑っていた。
「…とにかくゼノには一刻も早く皇女と契約を結んでほしいんだ。そうでなければスキンシップも暴走を止めることもできない。」
「お、俺は確かに皇女様を心から好き…ですが、もし皇女様に嫌がられでもしたらどうしたらいいのでしょうか?」
「それはないとは思うが…。私は仕事だから我慢しろと言ってたからな…」
「そうですか。
…分かりました。」
俺はヴィクトリア皇女に恋心を持っている。
俺がスキンシップを取りたくても彼女は嫌がるかもしれないのだ。
「ともかく、皇女が目を覚ましてからしか契約することはできない。今日はもう上がっていいから明日また皇女の部屋で3人で話そう。」
そう言い残し、シャノン卿は部屋を後にした。
ヴィクトリア皇女とシャノン卿は付き合っていなかった。しかしシャノン卿はヴィクトリア皇女の体に入ったカミーリアと何をしていたのだろうか…
抱いてはいない。だが
体を求められるということはどこまでがそれなのだろうと思い、俺はなかなか寝付く事ができなかった。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる