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必要なこと
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自分の部屋になったその扉を叩く。
すると中から声が聞こえた。
「入れ。」
「こんな格好で申し訳ない…シャツのボタンが何個か取れてしまってね…」
困ったように言うシャノン卿はバスローブを着ていた。
「いえ…大丈夫です。」
やはり中では蜜なことでも行われていたのだろうかと虚しくなる。
「…ヴィクトリア様は?」
「眠っているよ。」
「そうですか…」
苦しい。その言葉に限る。
報われないと分かっていたが、やはり辛い。
最近ヴィクトリア様の近くにいすぎた為に欲が出たのだろうか。そんなことを考えた。
「混乱させているようだから、きちんと話すよ。こちらに座ってくれ。」
そう言われて向かい側の席へと座らされた。
「まずは仕事の話だ。君の仕事は何だ?」
「皇女をお守りすることです。」
「まあ、そうだな。生命の樹に行った時に皇女は仕事の話を済ませたと言っていた。
だが、その部分で抜けているところがあったようだ。だから今回こうなってしまった。」
つまりやるべきことをやらなかった為にこういう事態が起きたと言うことだろう。
「申し訳ございません。俺の責任です。」
俺の仕事という括りをしていたからには、俺が何かを忘れていたせいなのだと悟った。
頭を下げる俺に、シャノン卿は続けた。
「頭を上げてくれ。多分ヴィー…ヴィクトリア様が君に伝えなかったのだろう。」
そう言われてキョトンとした、
「何をでしょうか?」
「……毎日必ずスキンシップが必要だということだ。」
スキンシップ。スキンシップとはどこまでがそれなのだろうかと悩む。それと同時になぜそれが必要なのか分からなかった。
「1から説明するよ。まず、皇女は生命の樹を守っている。毎日エネルギーを与え、魔力を消耗していることは分かるね?
魔力は休めば回復する。しかしエネルギーを与える時に、彼女の心を少し積んでいくんだ。」
「心?」
「誰かから想われているという自信だ。
それが無くなってしまうと先程のように暴走し、誰かに愛されていると知る為に体を求めるんだ。」
先程までに何が起きていたか、今の言葉でハッキリとされてしまい、言葉を失った。
「誤解するなよ。先程の皇女は皇女であって皇女ではない。それに抱く訳ではないんだ。」
「え?」
どう見てもヴィクトリア様だった。
…いや、瞳の色だけ違かったことを思い出す。
「あれはカミーリア。生命の樹だ。
生命の樹が彼女の体を使って接触してくるんだ。心が足りないと言って、彼女と契約している者にそれを強請る。
普段のあの子ならきっと自分からキスなんてしないだろう?」
納得するしかない。
先程までの皇女は俺の知る皇女ではなかったのだから。
「……ゼノは想い人がいるそうだね。
それはヴィクトリア皇女じゃないのか?」
「っ。」
突然核心に触れられて言葉を失った。
「ゼノを調べているうちにそうではないかとずっと思っていたんだ。
そしてそうであってほしい。心から彼女を想う心はきっと彼女を救うことができると思っているんだよ。
想いがあれば、毎日のようにスキンシップをしてくれるだろうと思っていたが…
説明していなかったのならそれは無理だったのだろう。」
「…俺は何をするべきだったのですか?」
難しいことを処理しきれない俺はシャノン卿に分かりやすい説明を求めた。
「つまり、契約を済ませてヴィクトリア様にハグやキスを行なってほしい。」
それを聞き、スキンシップとは俺にとってなかなかハードルの高いものだったのだと気づかされる。
「私は毎日ハグをするようにしていたが…恋心を持っていない私の気持ちでは何とも防ぎきれなくてな。」
その言葉が俺の耳に引っかかり、シャノン卿に問う。
「え?2人は恋人同士なのでは…?」
するとシャノン卿は首を傾げた。
「ん?何を言っているんだ。
私はヴィーの従兄弟だ。」
「いとこ…?」
妙に距離が近く、ヴィーと愛称で呼んでいることにも納得した。
恋心ではなく、家族愛だったのだと思った。
「ははっ。まさかヴィーと恋人だと思われていたとは…参ったな。まあ。確かにこんな格好で何を言うんだと思うよな。
これは、シャツをカミーリアに引きちぎられてしまっただけなんだ。
…もし次暴走した時はゼノが止めてくれ。いいね?」
そう言って笑っていた。
「…とにかくゼノには一刻も早く皇女と契約を結んでほしいんだ。そうでなければスキンシップも暴走を止めることもできない。」
「お、俺は確かに皇女様を心から好き…ですが、もし皇女様に嫌がられでもしたらどうしたらいいのでしょうか?」
「それはないとは思うが…。私は仕事だから我慢しろと言ってたからな…」
「そうですか。
…分かりました。」
俺はヴィクトリア皇女に恋心を持っている。
俺がスキンシップを取りたくても彼女は嫌がるかもしれないのだ。
「ともかく、皇女が目を覚ましてからしか契約することはできない。今日はもう上がっていいから明日また皇女の部屋で3人で話そう。」
そう言い残し、シャノン卿は部屋を後にした。
ヴィクトリア皇女とシャノン卿は付き合っていなかった。しかしシャノン卿はヴィクトリア皇女の体に入ったカミーリアと何をしていたのだろうか…
抱いてはいない。だが
体を求められるということはどこまでがそれなのだろうと思い、俺はなかなか寝付く事ができなかった。
すると中から声が聞こえた。
「入れ。」
「こんな格好で申し訳ない…シャツのボタンが何個か取れてしまってね…」
困ったように言うシャノン卿はバスローブを着ていた。
「いえ…大丈夫です。」
やはり中では蜜なことでも行われていたのだろうかと虚しくなる。
「…ヴィクトリア様は?」
「眠っているよ。」
「そうですか…」
苦しい。その言葉に限る。
報われないと分かっていたが、やはり辛い。
最近ヴィクトリア様の近くにいすぎた為に欲が出たのだろうか。そんなことを考えた。
「混乱させているようだから、きちんと話すよ。こちらに座ってくれ。」
そう言われて向かい側の席へと座らされた。
「まずは仕事の話だ。君の仕事は何だ?」
「皇女をお守りすることです。」
「まあ、そうだな。生命の樹に行った時に皇女は仕事の話を済ませたと言っていた。
だが、その部分で抜けているところがあったようだ。だから今回こうなってしまった。」
つまりやるべきことをやらなかった為にこういう事態が起きたと言うことだろう。
「申し訳ございません。俺の責任です。」
俺の仕事という括りをしていたからには、俺が何かを忘れていたせいなのだと悟った。
頭を下げる俺に、シャノン卿は続けた。
「頭を上げてくれ。多分ヴィー…ヴィクトリア様が君に伝えなかったのだろう。」
そう言われてキョトンとした、
「何をでしょうか?」
「……毎日必ずスキンシップが必要だということだ。」
スキンシップ。スキンシップとはどこまでがそれなのだろうかと悩む。それと同時になぜそれが必要なのか分からなかった。
「1から説明するよ。まず、皇女は生命の樹を守っている。毎日エネルギーを与え、魔力を消耗していることは分かるね?
魔力は休めば回復する。しかしエネルギーを与える時に、彼女の心を少し積んでいくんだ。」
「心?」
「誰かから想われているという自信だ。
それが無くなってしまうと先程のように暴走し、誰かに愛されていると知る為に体を求めるんだ。」
先程までに何が起きていたか、今の言葉でハッキリとされてしまい、言葉を失った。
「誤解するなよ。先程の皇女は皇女であって皇女ではない。それに抱く訳ではないんだ。」
「え?」
どう見てもヴィクトリア様だった。
…いや、瞳の色だけ違かったことを思い出す。
「あれはカミーリア。生命の樹だ。
生命の樹が彼女の体を使って接触してくるんだ。心が足りないと言って、彼女と契約している者にそれを強請る。
普段のあの子ならきっと自分からキスなんてしないだろう?」
納得するしかない。
先程までの皇女は俺の知る皇女ではなかったのだから。
「……ゼノは想い人がいるそうだね。
それはヴィクトリア皇女じゃないのか?」
「っ。」
突然核心に触れられて言葉を失った。
「ゼノを調べているうちにそうではないかとずっと思っていたんだ。
そしてそうであってほしい。心から彼女を想う心はきっと彼女を救うことができると思っているんだよ。
想いがあれば、毎日のようにスキンシップをしてくれるだろうと思っていたが…
説明していなかったのならそれは無理だったのだろう。」
「…俺は何をするべきだったのですか?」
難しいことを処理しきれない俺はシャノン卿に分かりやすい説明を求めた。
「つまり、契約を済ませてヴィクトリア様にハグやキスを行なってほしい。」
それを聞き、スキンシップとは俺にとってなかなかハードルの高いものだったのだと気づかされる。
「私は毎日ハグをするようにしていたが…恋心を持っていない私の気持ちでは何とも防ぎきれなくてな。」
その言葉が俺の耳に引っかかり、シャノン卿に問う。
「え?2人は恋人同士なのでは…?」
するとシャノン卿は首を傾げた。
「ん?何を言っているんだ。
私はヴィーの従兄弟だ。」
「いとこ…?」
妙に距離が近く、ヴィーと愛称で呼んでいることにも納得した。
恋心ではなく、家族愛だったのだと思った。
「ははっ。まさかヴィーと恋人だと思われていたとは…参ったな。まあ。確かにこんな格好で何を言うんだと思うよな。
これは、シャツをカミーリアに引きちぎられてしまっただけなんだ。
…もし次暴走した時はゼノが止めてくれ。いいね?」
そう言って笑っていた。
「…とにかくゼノには一刻も早く皇女と契約を結んでほしいんだ。そうでなければスキンシップも暴走を止めることもできない。」
「お、俺は確かに皇女様を心から好き…ですが、もし皇女様に嫌がられでもしたらどうしたらいいのでしょうか?」
「それはないとは思うが…。私は仕事だから我慢しろと言ってたからな…」
「そうですか。
…分かりました。」
俺はヴィクトリア皇女に恋心を持っている。
俺がスキンシップを取りたくても彼女は嫌がるかもしれないのだ。
「ともかく、皇女が目を覚ましてからしか契約することはできない。今日はもう上がっていいから明日また皇女の部屋で3人で話そう。」
そう言い残し、シャノン卿は部屋を後にした。
ヴィクトリア皇女とシャノン卿は付き合っていなかった。しかしシャノン卿はヴィクトリア皇女の体に入ったカミーリアと何をしていたのだろうか…
抱いてはいない。だが
体を求められるということはどこまでがそれなのだろうと思い、俺はなかなか寝付く事ができなかった。
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