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症状

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「っ。ゼノっ。」
目を潤ませ、真っ赤な顔で俺を呼ぶヴィクトリア皇女に急いで駆け寄る。

先程まで元気だったのに、一体どうしたのだろうか。

「ヴィクトリア様⁈」
息を荒げ、辛そうな彼女に声をかけた。

彼女はフルフルと震えながら俺の腕にしがみつき、上目遣いで俺を見つめている。

「っ。ゼノ…」
ゆっくりと彼女の顔が近づいてくる。

キスされるのではないかと思うほどに近づくと、キュッと唇を噛んだのが分かった。

それを合図のように顔は離れ、代わりに俺の胸に額を当てた。

宮医を呼ぶべきなのだろうかと思った時、彼女から指示が出された。

「…ゼノっ。っ。シャノンを呼んでっ?」
縋るようにそう言われ、俺は部屋にヴィクトリア様を残してシャノン卿を呼びに向かった。

急がなければ。
そう思いながら廊下を走る。
角を曲がり、階段を下り始めると、探していた人物から声をかけられた。


「ああ、ゼノ。今そっちに向かうところだったんだ。」

たまたま階段で居合わせたシャノン卿は何も知らないのでとてもにこやかだった。

シャノン卿と入れ違いにならなくてよかったと安心し、口を開いた。

「シャノン卿。っ。ヴィクトリア様がっ…」

俺がそう言うと、シャノン卿は真剣な顔になり、ヴィクトリア様の部屋へと走った。

コンコンと扉を叩き、返事を待つ前に開けた。
「ヴィー!」

振り返るヴィクトリア様はいつものように美しいのに、瞳はいつもの色ではなく赤だった。

「ヴィクトリア様?」
いつもと雰囲気の違う彼女を呼ぶと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。

するとヴィクトリア様はシャノン卿の首に手を回してキスをした。

「っ。」
目を瞑り、どんどん深くしていく姿を呆気に取られながらも見ていた。

「んっ。」
トロンとした顔の彼女が腕を解いたことで、シャノン卿は解放され、俺に声をかけた。

「っ。くそ。遅かったか。

詳しいことは後で説明する。ゼノは廊下で…いや、別邸の外で待っていてくれ。」

扉の前や自身の部屋にはいるなと念を押され、部屋から出された。


突然のことで頭が回らない。
その中で言われた通りに別邸から出た。

庭園にある木の陰に腰を下ろす。

考えることが苦手な俺の頭で出来る限り考えてみたが、今からヴィクトリア様とシャノン卿の間で何をするのかが分からなかった。

トロンとした顔のヴィクトリア様は何とも色っぽかったと思い出す。するとドクドクと心臓が速くなるのが分かった。

「はぁ。やはり2人は…」
俺はただの邪魔者ではないだろうか。
もしくは2人がそういう関係で、カモフラージュする為に俺が置かれているのだろうか…

もう既に出されてから30分は経っている。


するとヴィクトリア様のバルコニーに出る窓がカラカラと開いた。

ふと見上げると、服を着ていないシャノン卿が手すりに腕を置きながらタバコを吸っていた。

ここからは肩ほどまでしか見えないが、何をしたのかは容易に想像できた。

「ゼノ。」
俯いた俺に声をかけたのはシャノン卿だった。

俺は見たくないと思いつつ顔を上げて返事をする。
「はい。」
「君の部屋で話そうか。」

そう言われて俺は重い足を引きずるように別邸へと戻った。
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