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最悪の双子③
しおりを挟む『なんだろう。温かくて気持ちいい…
心地よくていい香りがするみたい…。』
『でも、なんだか力が抜けるね…。』
「…ソアレ。彼らの呪いを全て消し去り、2人の中の力も浄化して…。」
『……。』
何も応えてはくれない。
しかしそれが私のそばにいてくれることは何となく気付いていた。
初めてコンタクトを受けたのは、隊長とミレンネが神殿で正式に聖女と勇者となったときだ。
あの時微かに温かくなった自身の手を不思議に思っていた。
それがアネモスとの出会いを経て、もう1つの加護があるのではないかと思った。
まあ、それが確信に変わったのはついさっきではあるが、私はその力を借りるほかない。
『魔力が足りぬ…。』
低く、脳内に響く声。
私はその声に応えた。
「っ足りる!全部使ってやって!」
足らないなんて言わせない。
想いに気付いた私は以前よりも魔力が増しているはず。
風の精霊であるアネモスがどうにか私の魔力を少量でも動いてくれているのだから、太陽の精霊であるソアレもそうだろう。
それに、死んででも双子を止めなければ、先程隊長とルキアの邪魔をした意味がない。
そう思った。
『エミレィナ…怖いよ…。』
「っ!」
眩しいのか、レシファーもミカレルも目を押さえてしゃがみ込む中、私はその2人に目をやった。
『温かいけど怖い…。
僕こんなの知らないよ!』
『僕もどうしたらいいか分からない…。
助けて…、エミレィナ!』
「っ!」
心地いいはずのその刺激は、2人には経験したことのないものの様で、2人は怯えるばかり。
しかし私はその力を操るだけで精一杯だった。
「っ…もう少しなのに…っ」
「エミリー!踏ん張れ!」
「っ!グリニエルさま…。」
私の背に手を置いた彼は私を支えた。
「得意ではないが、ないよりはいいだろう。」
そう呟いた彼が目を瞑り集中すると、私の体内に魔力が流れ込んでくるのが分かった。
「っ!」
「分かるかい?
私の魔力だよ…。
送り出すには3分の1程度まで凝縮されてしまうからあまり効率的には良くないが、今はこれが最善だ。」
私しか使うことのできないも能力。
しかし魔力が足りない。
それに気付いてくれたグリニエル様は私にどんどん魔力を注いでくれた。
「これなら…っ!」
先程よりも力を加えてその光を放つと、徐々に私の体力も終わりを見せる。
「…まだなの…?」
『…エミレィナ…選ばれし者…。
レティシアーナの願いは聞き入れた…。』
「え?…っどういう…。」
プツンッ。
そう脳内に響く様に、私の魔力は底をつき、私よりも先にグリニエル様がゆっくりと倒れる姿が目に映る。
ああ…。助けなければ…。
そう思うが私も同様に力尽き、スローモーションの様にゆっくりと膝から崩れ落ちた。
その間、双子に目をやると、見たこともない男が2人を庇う様に抱きしめていた…。
「…。」
誰だろうか。
しかし、敵には見えなかった。
邪魔をしにきたわけでもなさそう。
そう思って目を閉じた。
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