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パーティ②

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会場へと着いた途端、隊長とは別々に分かれ、入るべき上扉にいた。


そこから中へと呼ばれ、入るのだが、1人でここから入ると思うと緊張する。


「……スー…ハー…。」



深く深呼吸を終えると、後ろに人影を感じ、振り返る。

「っ。」


「すまない…驚かせてしまったようだね。」

「で、殿下!」

後ろにいたのはグリニエル様で、私はつい、いつものように敬称で呼んでしまった。

「…エミリー。君は王族だ。
私を敬称で呼んでいい立ち場ではない。
…分かるね?」




「っ。は、はい。
申し訳ありません。グリニエル様。」



王族が王族に仕えている。
そう思われれば印象は良くない。

私は、私の前に立った彼に謝った。

「…。」

「あ、グレン様…。」


そうだった。
それも言い間違えると拗ねてしまうのだ。
2人だけの時は愛称で呼ばなければならなくなったのだった。

それが彼と対等だという証ともなる。



「あの、どうしてこちらに?」

「…渡しておきたかったのだ。
ケインからエミリーはここにいると聞いてね。」


「ずっと私をお探しになられていたのですか?」

「…ああ。
まあ、原因は分かっているからいいさ。
あちらがそういう手でくるのであれば、こちらにも手はあるというものさ。」


ニッコリと笑っているのに、グリニエル様は隊長同様に瞳に怒りが灯っているようだった。


「エミリー。
君は本当に可愛くて綺麗で愛らしい。
ここの扉を開ければ、その意味が分かるだろう。
…私は自国を利用して、君を貴族達の目に触れないようにしてきた…。だから怖いのだ。
君が誰かを選び、誰かに選ばれ、誰かに取られるかもしれないこの状況がとても…。」



「グレン様…。」


そんなことはない。
誰の目にも触れないように願いでたのは私だ。彼の傍にいることを決め、婚約を薦められないために潜入騎士の道を選んだ。
今は彼のために国と国の架け橋となりたいと思っている。
私の思いは彼のことが第一。
彼のそばを離れるということはあり得ないのだ。

しかし、国と国の仲を割くわけにはいかない。
どうすれば最善の道を歩めるのか、今の私には分からなかった。


「……やはり耳は塞がれているか…。」

小さい声だったが、そう聞こえて、そういえば。と思い返す。

パーティー中にばい菌が入らないようにと、テープを貼り、その上からファンデーションを重ねてある。
側からみればピアスの穴は無いように見えるだろう。


「…こちらを付けていくといい。」

「え?」


抱きしめられるような形で、首にひんやりと置かれたのはネックレスだ。
アメジストのように透き通った紫で、シンプルで小さいのに、とても輝きを放っているそれは、なんだか魅入ってしまう。

元々首元には何も着けてはおらず、頭に乗せているティアラのみが装飾品だったため、特に違和感はないだろう。むしろこのネックレスはなんだか私を緊張から守ってくれるかのように私を安心させてくれる。


「ありがとうございます。
付け心地が凄くいいです。」

「…そうか。」


恥ずかしそうにしながら、クシャりと笑うその顔に、私は幼き頃を思い出す。
小さい頃はそうやって顔が崩れるように笑っていた。その笑顔を守りたいと思ったのだ。

そう思うと、トクンと心が跳ねた。


「…行っておいで、私のエミリー。
君は王族だ。凛とした今宵の華だよ。」

「ありがとうございます。
自信がつきました。
それでは、行って参ります。」




そう。彼の言った通りだ。
私はもう王族。

それらしい佇まいと表情。
そして雰囲気を持っていなければならない。

それが為せなければ、ヴィサレンスにもジョルジュワーンにも迷惑をかけてしまう。


そう思って、開いた扉から中へと足を踏み入れた。
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