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お出かけ①
しおりを挟む「エミリー。」
「あら、レヴィ…。おはよう。」
私が朝、食堂へと歩いていると、レヴィが声をかけてきた。
「朝早くどうしたの?仕事があるんじゃ…」
「ああ。それは今から向かうんだ。
その前に御礼を言いたくてね。
…昨日はセレインを連れてきてくれてありがとう。助かったよ。」
「いいのよ。それより、大丈夫だったの?
その…昨日は…。」
聞いてもいいことなのか分からない私は、とりあえずふんわりと話題にのみ触れてみた。
「………ああ。勿論だよ。
セレインと私がいてどうにもならないことはないさ。
君のおかげでセレインの外交官入りも決定しそうで、今日は大忙しだよ。」
「まぁ。そうなのね。
なら良かったわ。」
昨日のことが上手くいったことで、セレイン様は外交官となり、レヴィは三柱になるという。ますますヴィサレンスの外交は賑わうことだろう。
そう思っていると、セレイン様もやって来たのが見えた。
「ご機嫌よう。エミリー。」
「ええ。おはようございます。
セレイン従姉様。」
「昨日はありがとう。
レヴィがこちらに向かったのを見て、私も来たの…。あなたには、感謝してもしきれないわ。ありがとう。」
「いいえ。そんな…私なんて何も…」
レヴィとセレイン様が私に向けて柔らかく笑ってくれることが、とても恥ずかしい。
彼らの役に立つことができて本当によかった。
「私たちは少し忙しくなってしまうが、君がいるうちは少しでも時間を作って過ごしたいと思っているよ。」
「ええ、そうよ。あと少ししかこちらにいられないんですもの…。今度ミレンネも誘ってお茶会でもしましょう。
楽しみにしていて頂戴。」
「ふふっ…ええ。楽しみにしておきます。
お2人とも、お仕事頑張ってくださいね。」
「それじゃ、私たちはもう行くよ。
また時間が合うときに会いに来るから。」
「また後でね。エミリー。」
「はい…!」
私は2人の背を見送る。
2人との距離が縮まったような気がする。
あんなに刺々しかったセレイン様もいない。
きっとそれはレヴィと分かり合えたからだろうと感じた。
「なんだかいい雰囲気だったな。」
「ひゃぁっ!グリニエル様!」
2人を見送った後、また食堂へと歩く為に向きを変えた私の前に立っていたのは、グリニエル様だった。
「いらしたのなら声を掛けてくだされば良いのに…。」
私はバクバクとなる胸を押さえて抗議すると、グリニエル様はなんだかふてくされているようだった。
「グリニエル様?」
「………私ともっと過ごしてくれると言っていたのに、もう浮気をするのか?」
「なっ…そんなことあるわけないじゃないですか…。」
じっとりとした目で、何を的外れなことを言うのだろうか。
そう思って抗議すると、途端に笑顔に変わった。
「そうかそうか。それなら、今日、私とデートしよう。」
「…は?」
「ロレンザ殿にも許可は得ているし、ステファニーにも街へ出るための服を準備をするようにとつたえてあるから、心配はいらないよ。」
「…。」
それはそれは根回しがいいことだ。
最初から彼は私と出かけるつもりだったのだろう。
「ほら、観光も大切だろう。
ヴィサレンスで得た情報はきっとジョルジュワーンでも役に立つ。
それに、クローヴィスとサターシャにも土産が必要だろう。
ね?一緒に出掛けよう。」
「…。」
彼は次々私に畳み掛けるように理由を述べる。
彼が諦めるような様子はない。
それなら受けるしか道はないのだ。
「…分かりました。
ですが、仕事は終わっているのですよね?
残っている執務などはありませんか?
そうでなければ怒りますからね!」
プクッと頬を膨らませると、彼はニコニコと笑顔になる。
「勿論だとも。さあ。そうと決まれば朝食を済ませて早く出掛けよう!」
「…。」
申し出は嬉しい。
しかし急すぎるのだ。
どこを回ったら良いかも分からないのに
楽しめるだろうか。
そう不安になりながら、朝食を取った。
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