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小話
しおりを挟む小話①グリニエル
扉が閉まったのは確かに見届けた。
しかし私は、数秒前の衝撃で、エミリーを部屋に帰してしまったのだ。
そうそれは、
あまりにも可愛らしく笑うエミリーの顔。
そしてあまりにも愛おしそうに私を見つめるその眼差しと、柔らかな手のひらに、私は息をするのも忘れて惚けたのが原因だ。
「~~っ…!」
ぶわっと私の胸の内で大きくなる気持ちは、早くエミリーを自分のものにしたいという独占欲。
先程エミリーと一緒に過ごそうとしたのだが、それは失敗してしまった。
想いが通じ合ったことに舞い上がり、あまりにも急きすぎたと思う。あの時のエミリーの困り顔は可愛…いや、本当に困惑しているようだった。
初めてではないとはいえ、やはり急ではいけなかったのだろう。いや、なんなら、隣で眠るだけでもいいから帰すべきではなかったかもしれない。
ただ私の腕の中で眠ってくれるだけで、私は満たされる。
……嘘ではない。
繋がりたいと思うのは事実だが、あまりにも急いて嫌われることだけは避けなければならない。
やっと実ったこの想いは大切にしなければならないと思うのだ。エミリーが決心できるまで気長に待とうじゃないか。
この10年の片想いに比べれば大した長さじゃない。
私はにやけるその顔を片手で押さえつつ、ベッドへと座る。
明日、又は明後日には、エミリーが私の恋人であると周りに見せつけることができる。
互いに付けたピアスは、互いが近付くことで輝きを増す。それを見れば彼女に近付く男など出てこないだろう。
「……早く正式に婚約したいものだ。」
ポッと出た本音に、私はカァァっと赤くなる。
「早く起きてエミリーと過ごそう…。」
そうしてベッドへと入り、目を瞑る。
エミリーと過ごす妄想は、時間の限りを尽くしたが、夢にまでは出てきてはくれなかった。
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