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黒のストッキング1
しおりを挟む「ただいま戻りました、国王陛下。」
「よくぞ戻った、ロレンザ。
ミレンネも大変だったな。無事で何よりだ。
そしてジョルジュワーンの王子、グリニエル殿。お初にお目にかかる。
ヴィサレンス帝国第13代国王、アレクサンダーだ。此度は我がヴィサレンスとの同盟を結んでもらえて感謝致す。
そしてミレンネを助けてもらったと聞いておる。…父としても礼をさせてもらいたい。
本当にありがとう。」
「いえ。その場でミレンネ皇女を助けたのは、エミレィナでございます。
むしろ光栄であることなのに、彼女のヴィサレンス行きを折ってしまい、申し訳ありません。」
「構わん。レティシアーナの娘がこちらで暮らす方が幸せなのではないかと思ったのだが、その様子を見ると違うと分かった。
無理やり連れ戻すようなことはしない。
ただ、こうやって会えて、とても嬉しく思うよ。」
私の伯父に当たるのがヴィサレンスの国王陛下だ。そんな彼が私を尊重してくれることが
うれしかった。
「エミレィナ。レの名を継ぐ者。
もう少し近づいてくれまいか。
最近歳を取ったのか目が悪くてな。
よく顔を見たいのだ。」
私はゆっくりと3歩進み、綺麗に淑女の礼を施した。
「お目にかかれて光栄でございます。
国王陛下。」
「…ふっ。
…其方はレティシアーナとよく似ている。
本当にレティの娘なのだな。」
そんなに似ているのだろうか。
そう思いながらもコクンと頷いた。
「こちらにいる間は好きに過ごすといい。
レティシアーナの子としてヴィサレンスの王家であることを証明する儀式は明日行う。
お前の伯母に当たるレロリア、そしてその姉弟も呼んである。明日の正午に集まってくれ。
私からは以上だ。」
「…国王陛下。
発言する許可を頂けますか。」
「構わん。エミレィナ、申せ。」
「…私は、ヴィサレンスの名を頂くにはあまりにも無知かと思います。王家特有の魔力もありません。
そんな私に王家である証など…。」
私は最近やっと母を知ったばかり。
そして力もない。
ヴィサレンスの王家の名を貰うには私ではあまりにも釣り合いが取れないのだ。
「いいや、エミレィナ。
お前がレティシアーナの元に生まれ、その色や名を受け継いだ時から、既にヴィサレンスとは切れないもので繋がっているのだ。
それに、ヴィサレンスのことはこれから知ればいいだけのこと。自分を卑下するでない。
私はお前の伯父だ。お前が自身を否定することは我を否定することと同義だ。いいね?
正式にヴィサレンスの名を背負い、ジョルジュワーンで暮らすといい。
その名はきっとお前を助けてくれるだろう。」
「…。」
私はこれ以上言うことはできない。
それ以上口を出せば、不敬罪に取られるかもしれないのだ。
「…ありがたき、幸せにございます。」
私はそうして腰を折り、謁見の間を出る。
なんだかどっと疲れた。
他国の王と会うなど、それも自分の伯父である人と初めて会ったのだ。緊張しないはずがなかった。
「ミレンネはエミレィナを案内してやってくれ。私はグリニエル殿とケインシュア、そしてトロアとイザベラと共に話すことがある。」
それはきっと隊長のつける稽古の話だろう。
その後に皇子達で国益の話でもするのかもしれない。そうなれば私とミレンネは居座るわけにはいかないため、そのまま別棟へと向かった。
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