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五章
5-6
しおりを挟むそれから、リビングに飛鳥先輩のママと二人きりになった。
なんだか空気が冷たくて、ピリついているような気がする。
無言が続いて、居心地が悪くて逃げ出したくなったときだった。
「さっきはごめんなさいね」
私はぽかーんと口を開けたまま。
最初に謝られるなんて、想像していなかったから驚いた。
「い、いえ……」
「あなたから邪気は感じないのよね。でも生きてもいない。どういうことか説明してくれる?」
まっすぐな目でじっと見つめられる。
私は緊張で体が固まった。
私は深呼吸をして、ゆっくりと話し出した。
守護霊代行のことは言えないので、私の身体は仮死状態のこと。
飛鳥先輩のことを守りたいこと。その二つを、大まかに話した。
普通は信じられない話だと思う。
だけど、彼女は真剣に聞いてくれた。
「そういうことね……まぁ、悪い幽霊でないことは分かってたけど」
「は、はい……」
「飛鳥を守るって、何から守るのかしら?」
「えっと、」
私は口を噤んだ。
それはいえないことだったから。
それに、大切な息子に命の危険が迫ってると聞いて、冷静にいられる親がいるのだろうか。
「全部を信じられるわけじゃないけど……特に悪さもしなそうだしねぇ」
「悪さなんてしません……」
「飛鳥に憑いてることを許すとしますかっ」
今まで無表情でつんとしていた顔が、はじめて柔らかく笑った。
その笑顔に、私の心も軽くなる。
「さっきは、除霊しようとしてごめんなさいねー」
へらりと笑っていう。
だけど私はひっかかる。
「え、」
あの盛り塩は、除霊しようとしてたってことだ。
そう理解すると、ぞわっと鳥肌が広がった。
やっぱり苦手かも……。
せっかく下がった警戒心レベルが、また上がった。
そのときだった。
廊下の方から大きな音で、バタンッと何かが閉まる音。
「あら? 誰か外に出かけたのかな?」
なんだ。玄関が閉まった音か。
流そうとして、私はハッとする。
外に出たのが、飛鳥先輩だったら、追いかけないと!
私はその場で一礼すると、慌てて駆け出した。
リビングを出ると、ちょうど杏子ちゃんと鉢合わせた。
「今、外に出たのって……?」
「お兄ちゃん、コンビニ行ってくるってー」
間延びした声が耳に届くと、不吉な予感がした。
心にどよめきが広がりながらも、玄関から飛び出した。
なんだか無性に嫌な予感がして、心がざわざわしている。
飛鳥先輩はどっちにいったんだろう。
家を出て、右にいくか。左に行くか。迷って立ち止まる。
そんなときだった。
sumattiの通知音が、けたたましく鳴り響く。
それは今まで聞いたことのないような、頭に響く音だった。
慌ててsumattiの画面を確認すると。
『最終警告! これ以上ルール違反をすると死後の世界に強制連行とする!』
書かれたものを読むと、思考が停止する。
そう赤文字で書かれていたから。
スマホを持つ手が震える。抑えようとしても震えが止まらない。
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