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四章
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しおりを挟む「これを見てほしいの」
そう言って差し出されたのは、一枚の紙。
名前がずらりと書いてあって、最初の方に太字で「死亡予定者リスト」と書かれていた。
つまり、この紙きれが死亡予定者リストってこと。
なんだか、先生が持っている出席簿みたい。
思っていたものより、安易なモノで少し驚いた。
どうして、今死亡予定者リストを渡されたんだろう……。
不思議に思いながらも、リストに書かれた名前を確認していくと。
「えぇぇぇぇぇぇっ!?」
それを見た瞬間、私は驚きの声をあげた。
ウ、ウソでしょ⁉︎
「中川飛鳥」そう書かれていた。
「な、中川飛鳥って、まさか……!」
聞き覚えのある名前。
慌てて楓さんに聞くと、ゆっくりと頷いた。
「あなたが話した人と同一人物よ」
足の力がガクッと抜けた。
待って、頭が混乱してきた。
ど、どうして。飛鳥先輩の名前が?
ここに書かれているってことは……つまり。
「……死ぬってこと?」
楓さんは目を伏せて言いにくそうにしている。
嫌な胸騒ぎが止まらない。
胸が張り裂けそうなくらい、苦しくなった。
「昨日までは名前はなかったのに……急遽追加されたのよ」
「急遽追加だなんて……。昨日まで名前がなかったなら、どうにかならないんですか?」
返事を濁す楓さん。
その表情で答えを知ることが出来た。
そ、そんな……。
信じられない。いや、信じたくなかったんだ。
動悸と全身の震えが止まらないよ。
「あ、あの、飛鳥先輩の死因ってなんですか?」
学校で話した時は、元気そうにみえた。
いきなり死亡予定者リストに名前があるといわれても、信じられないんだ。
「それが死因は……書いてないのよ。だから不思議でね……」
いったいどういうことなんだろう。
私には訳が分からなかった。
だけど、目の前で頭を抱える楓さんを見たら、きっと珍しいことなんだと思った。
「僕、先輩から聞いたことあるよ。「死亡予定者リスト」にのったけど。リストから除外された話」
今まで黙っていた柊が顔をのぞかせる。
「そ、それは。どうしたらいいの⁉︎」
「そのときの死亡予定者が満員で、案内人から「死亡者セーブしろ!」って言われたんだって。それで調整のために、その人は死ななかったって」
死亡予定者リストから除外されたことが過去にもあるのなら。
飛鳥先輩もリストから消せないかな?
私は瞳に期待をいっぱいに込めて、楓さんを見つめる。
「たしかに明日の死亡予定者は定員オーバーしてるのよね……だから困ってるんだけど」
ため息をはきながらいう楓さん。
そして目配せをするように、私をチラチラと見て……。
「誰か、飛鳥くんを命の危険から守ってくれたら……今回は除外できるかもねぇ」
まさかの提案だった。
それならすごくありがたい。
「わ、私がやります! その役目!」
思いきり右手を上げた。
飛鳥先輩が助かる可能性あるならなんでもできる!
「飛鳥くんはあなたが視える。だから話すことは今回多めにみるわ。だけど……本人に守護霊代行の存在も、今回の任務の内容も言ってはダメよ」
楓さんはまっすぐ私の目を見つめた。
真剣な瞳で続ける。
「あくまでも内密に……守護霊代行は機密事項だから。バレたらそのときはあなたに罰が待ってるわよ」
今までのことから、それは私が死後の世界に連れていかれるってことだと思う。
「それでもできる?」
それを分かったうえで、もう選択肢は一つしかなかった。
「はい……私、飛鳥先輩を助けたいです」
迷いはなかった。
だって、助けられる可能性があるのなら、助けたいに決まってるよ!
守護霊代行の存在は秘密にして。
飛鳥先輩を命の危険から救えばいいんだね!
……って、そんなこと本当にできるのかな?
一気に不安が押し寄せてきた。
で、でも! 私は飛鳥先輩を助けたい!
絶対に死んでほしくなんかない!
私の守護霊代行の任務最終日。
新しい任務内容が追加された。
――
担当、中川飛鳥を命の危険から守ること
――
守護霊代行のことは、内緒にしなければいけない。
つまり、飛鳥先輩には命の危険が迫っていることを知らせずに助けなければいけないってこと。
それは、難題だとヒシヒシと感じる。
「これだけは覚えておいて? 身の危険って思わぬところに潜んでいるの。だから気を引き締めてね!」
「は、はい……」
そうか。飛鳥先輩の死因がわからないから、いつ、どのタイミングで命の危険が迫ってくるかわからないんだ。
私は意を決してグッと手に力を入れた。
絶対に命の危険から守ってみせる……!
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