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四章
4-9
しおりを挟む目をぱちっと開けると現世とは違う。
風も匂いも感じない。そんな無機質な場所は死後の世界だとすぐに分かった。
予想通り死後の世界へと扉だったみたい。
あたりをきょろきょろと見まわすと、少し先の方で柊が大きく手を振りかざしていた。
「おーい! 未蘭! こっち!」
柊の姿をみたとたん、ふっと体の緊張がとけたきがした。
私は柊の元へとかけだした。
だけど、途中で足が止まった。
柊の横にもうひとりいるのがみえたから。
柊の横には、黒いスーツを着た大人の女性が立っていた。
無表情な顔は怒っているように見える。
なんだか怖くなって、歩く足が重くなった。
なんだろう……なんか怖い。
良い印象はもてなくて、ドキドキと動悸がする。
私がルール違反をしたのは事実だ。
守護霊代行は人と話してはいけないのに、飛鳥先輩と話してしまったんだもん。
怒られても守護霊代行をクビになっても仕方がない。それだけのことをしてしまった。
いったい私はどうなるんだろう。
仮死の状態って聞いたけど、もう死後の世界から戻れないかもしれない。
つまり、私は死ぬかもしれない。ということだ。
嫌なことばかり頭に浮かんで、今にも涙が落ちてしまいそうだ。
ゆっくりと足を進めて、柊たちの目の前にたどりついた。
「なんで呼び出しされたのかは、わかっているわよね?」
「……はい」
女性の声は、どこか冷たくて。
嫌な予感がつよくなった。
それに、呼び出されたことに、心当たりはある。
むしろ心当たりがいくつもありすぎて、言い訳も出てこないよ。
そう思った私は、深く息を吸った。
「思い当たること、あ、あります」
そういって、じっと見つめる。そんな私をみて、何度か頷くと女性はゆっくり口を開いた。
「まず自己紹介が先ね。私は楓といいます。守護霊代行の上層部にいるわ」
柊から聞いていたことだった。
守護霊代行には上層部がいて、管理してるって言ってたっけ。
つまり、楓さんは偉い人だ!
「通達がきたの。あなた人と話したって本当?」
ドキッ。心臓がはねた。
怖くて手が震えそうになる。
「実は……」
私は覚悟を決めた。飛鳥先輩との間に起きたことを素直に話した。
きっと説明はへたくそだったはず。
だけど楓さんは相槌をうちながら、最後まで聞いてくれた。
全部話し終えた後、楓さんは天を仰いでなにか考えているようだった。
その間もなんて言われるのか怖くて、私の心臓はドキドキと鳴り続ける。
すごく怒られるんだろうな……。
そう思って、目をぎゅっとつむっていると。
「その子は、霊感があるのかしら?」
「へ?」
ぱちりと目を開けて楓さんを見ると、意外にもあっけらかんとした態度。
怒られると思っていた私は拍子抜けしてしまう。
「れ、霊感?」
「霊感がある人は私たちのことが、ぼや~とホワホワした光みたいに見えるって聞いたことがあるわ。私たちも魂だから、簡単に言うと幽霊と同じだからね……」
なんだかすごく納得した。
そういえば、飛鳥先輩も私が透けて見えるっていってたっけ。
一瞬だけ考えて、それから優しい笑顔をむける。
「イレギュラーなことだったとはいえ。ルール違反はルール違反よ」
もちろん、その通りだと思った。
ルール違反をしたのは私だもん。
「わ、私は……どうなるんですか?」
やっぱりこのまま死後の世界へと連れていかれるのだろうか。
あぁ、こんなことなら、守護霊代行のときに、お母さんに会いに行けばよかったな。
友達の顔も見に行けばよかった。
そんなことを考えていたら。
「どうしようかしらね……」
腕を組んで考えている楓さん。
私はちょっとだけホッとする。
すぐに死後の世界へと連れていかれると思っていたから。
「は、反省はしてます!」
えーい!この際、思ったことは言ってしまおう。
もう後戻りできないと思った私は、すがるように楓さんをみつめる。
「ルール違反は一回で、解雇。のはずなんだけどね……実は問題が発生してるの」
も、問題って⁉︎
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