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四章

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「あれ、またいたんだ……」

 そんなはずはないのに。
 飛鳥先輩と目があっていて、話かけられているような気がして……。
 私は口を滑らせてしまう。

「わ、私が視えてるの⁉︎」

 思わず声を出してしまった。
 私はハッとして、両手で口元を抑えた。

 や、やってしまった!

 いやな胸騒ぎがする。
 だって、この場には大河先輩もいるんだもん。


「今、女の子の声聞こえなかった?」

 そういって大河先輩は首をかしげる。
 嫌な予感は的中した。
 私の声が聞こえてしまったみたい。


 ま、まずいよ……!
 私の存在がバレることはルール違反なのに。

 このままだと、私のことがバレてしまうかもしれない。
 今にも泣きそうになったその時。



「……気のせいだろ」

 そういったのは、飛鳥先輩。
 驚いて顔をあげると、パチッと目があった。

 私は確信する。
 やっぱり気のせいじゃない。

 飛鳥先輩は、私のことが視えている。
 だけど、かばってくれたってことかな?

 私のことを追求されるかと思ったけど。
 飛鳥先輩は、知らないフリをしてくれた。


 視線を私から大河先輩に移すと、再び口を開いた。


「俺の絵を持ってってどうするつもりだった? 捨てるつもりだったとか?」
「ち、ちがう! 捨てるなんてない。ただ……」

 言葉を詰まらせる大河先輩。
 なにか考えるように、唇をぎゅっと噛む。
 

「良かったから。あまりにも良い絵だったから、嫉妬したんだ……」

 その声は消え入りそうなほど弱弱しかった。
 意を決したように喉をゴクンと鳴らすと。
 大河先輩は飛鳥先輩の正面にぐるりと体を向ける。
 

「……本当に悪かった」


 そう言って頭を下げた。
 大河先輩が頭を下げたことに驚くように、飛鳥先輩は目を丸くさせた。


 私もちょっと驚いた。
 昨日から見ていて、頭を下げるような人には見えなかったから。

 自分のしたことに反省をしているんだと思う。


「別に。こうして戻ってきたなら俺はいいよ。ただ……」

 言葉を途中で止めた飛鳥先輩。
 不思議に思った大河先輩は、下げていた頭を上げる。


 すると、待っていたかのように飛鳥先輩はニヤリと笑った。

「足掛けとか、しょうもない嫌がらせらやめてもらえる?」
「……あ、あぁ」

 一瞬きょとんと固まる大河先輩。
 飛鳥先輩の笑顔につられるように、ひきつりながらも笑顔になった。




 
 
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