守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく

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四章

4-5

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 それから、大河先輩はキャンバスをもって美術室に戻ってきた。

 飛鳥先輩のキャンバスを返すためだ。

 勝手に持っていったキャンバスを、元にあった場所に戻すと。
 深いため息をついた。

 その表情が、さっきまでの毒気はぬけて、優しくなったように見えた。
 
 大河先輩が盗用しなくて本当によかった。
 私の心もほっとして軽くなる。

「俺……飛鳥に嫉妬してたんだな」

 ぽつりとつぶやいた。
 その顔は、悲し気で瞳からは今にも涙が零れ落ちてきそうだった。

 大河先輩は、飛鳥先輩の才能に嫉妬していたんだ。
 だから、いやがらせをしたり、盗用をしようと考えたのかな。

 今まで知らなかった大河先輩の裏の心が知れて、胸のあたりがきゅっとなる。



「あのさ……」


 背中から柔らかい声が飛んできた。
 声がする方を、ゆっくりと振り返ると。

「人の絵の前でため息つかないでもらえる?」

 そこにいたのは飛鳥先輩。
 呆れたようにぼそっという。

 突然飛鳥先輩が登場したので、驚いた私は浅く息を吸った。
 それに、気になっていることがある。
 

 飛鳥先輩をちらりとみると、違和感を感じた。

 あれ、なんだろう。この違和感……。
 それは守護霊代行の仕事をして、はじめて感じる違和感。

 お、おかしいよ。
 だって、そんなはずないもの。

 違和感を消し去るように、ぶんぶんと顔を左右にふる。

 もう一度飛鳥先輩をみて、心臓がどきりとする。
 


 目が、あって……る?
 飛鳥先輩が私をじっと見ていた。

 
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