守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく

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四章

4-1

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 本日の担当。
 水瀬 大河 18歳 男性
 桜ヶ丘高校三年生



 翌日。
 二人目となる担当の情報がsumattiに送られてきた。

 三年生ということは、上級生だ。
 今回は名前を見ても知り合いではなかった。

 

 
 今日担当する大河先輩の元へと向かっていく。

 情報をもとにたどり着いたのは、モダンな雰囲気の外観の一軒家。
 植木鉢には、色とりどりの花が植えてある。

 
 ごくりと息をのむ。
 そして、インターホンを鳴らすことなく家の中に通り抜けた。

 ぎゅっとつむっていた目をあけると、目の前は広々とした玄関だった。
 そして入ってすぐ階段があった。

 まだ誰も起きていないようで、しんと静まり返っている。
 私はそろりと、階段を上った。

 なんとなくだけど、大河先輩のいる部屋は二階かなって思ったんだ。
 それは見事的中する。

 二階の一番手前の部屋のドアには「大河」と書かれたネームプレート。
 ここが大河先輩の部屋だと教えてくれた。

 すっとドアを通りぬける。
 部屋に入ると、嗅いだことのある匂いが鼻に残る。

 これ、なんの匂いだっけ。
 すぐに思い出せなかったのは、たまにしか知らない匂いだったから。

 首をかしげながら部屋を見渡した。
 
 部屋の壁には、絵画がいくつも飾られていた。
 勉強机の上には、筆や油彩道具が少し乱雑に置かれている。

 あ、このつんと鼻を刺すような臭い。
 絵の具の匂いだ。

 美術室で嗅いだことのある匂いだと気づいた。

 そんなとき、爽やかな音楽が鳴り響く。
 ベッドのふちに置いてあるスマホから流れている。

 どうやらアラームの音楽みたい。
 音楽で目を覚ました大河先輩が、寝ぼけたようすでスマホを探している。

 
「ふああー」

 大きなあくびをしながら体を起こすと、両手をあげて背伸びをした。
 そして、スマホのアラームを解除する。

 今日の担当大河先輩。
 癖っ気なのか、ふわりとしたウェーブした茶色みのある髪の毛。
 切れ長の目は、少し怖い印象だった。


 あれ…?
 大河先輩の顔を見て、どこかで会ったような気がした。
 だけど思い出せない。

 頭の中でぐるぐる考えていると。


 あ! この先輩、飛鳥先輩を転ばせた人だ!

 大河先輩の顔をじっと見ていたら思い出した。
 昨日の朝、昇降口で飛鳥先輩に足をかけて転ばせた犯人。
 嫌な笑い方をするいじめっ子だ、
 
 思い出した途端、なんだかムッとしてきた。
 だって、今思い出しても腹が立ってくるんだもん。

 今日の担当、大河先輩はいじめっ子だなんて。
 気持ちが沈んでしまいそうになる。

 ぐっと感情を抑えた。
 その代わりに、ギッと睨みつけてみる。
 まぁ、私の姿は視えていないから、伝わらないんだけどね。

 
 私の威嚇は、伝わることはなく。
 大河先輩は、朝食を食べて着替えをして準備を整えると。
 あっという間に家を出た。
 だるそうに足を引きずって歩きながら、学校へと向かっていく。

 


「おはー」
「おいっす」
「大河、おはよ」

 大河先輩はともだちが多いみたい。校内で誰かとすれ違うたびに挨拶をされる。

 向かった先は教室ではなかった。
 廊下を歩いてたどり着いたのは美術室。

 誰もいない美術室に入ると、大河先輩は顔を歪ませた。

「くそっ」

 舌打ちをして、イライラした様子。
 立てかけられた絵画の前で、その絵画をするどい目つきで睨んでいる。
 
「描けない。飛鳥より、俺は描けないのかよ」

 大河先輩は、低い声でつぶやいた。

 あれ?その名前って……。
 思い出して、私はハッとする。
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