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三章 オモテとウラのカオ
3-2
しおりを挟む「く、臭いっ!」
守護霊代行の身体でも、匂いは感じられるんだ。
鼻をさすような悪臭に顔がゆがむ。
原因はすぐに見つかった。
玄関には大きなゴミ袋が何個も置かれている。
どうやら、ゴミ袋から悪臭がもれているみたい。
私、きれい好きなんだよね……。
今すぐこのゴミの山を片付けたい気持ちでいっぱいになった。
だけど、視えてない私が勝手にゴミを片付けたら怪奇現象になってしまう。
それはルール違反になってしまうってこと。
なので私はしぶしぶ諦めた。
気を取り直して、田口先生がどこにいるか探してみる。
すると、猛獣の泣き声のような声が耳に届く。
「ぐぐっぐ。が、ぐごおおおおお」
あまりの大きな音に、肩がびくっと揺れた。
おそるおそる声がする方に視線を向ける。
声の犯人は猛獣ではなく、田口先生。
大きな口を開けて、寝ている田口先生のいびきだったんだ。
「はあ、」
大きな溜息も出てしまう。
しばらく田口先生を見ていたけど。
起きる気配はないようだ。
異臭の原因は玄関のゴミ袋だけではなかったみたい。
ベッドのすぐそばにある小さめのテーブルには、食べ終わったコンビニのお弁当がそのまま。
いつ食べたのか分からないお菓子の袋。
そして、蓋が開いたままペットボトルの中身は色がどす黒かった。
うわー。ここからも変なにおいがする。
どうして片づけないんだろう……。
ため息を吐きながら、まだ起きそうにない田口先生を見つめた。
「ゴミはごみ箱に捨てればいいだけなのになぁ」
学校では不愛想。家では片付けもせず汚部屋に住んでいるだなんて。
元々良い印象じゃなかったのに。
さらに印象が悪くなってしまった。
気分は下がったまま、散乱したゴミたちをちらりと見た。
すると、体がうずうずしだす。
だって私はきれい好きなんだもん!
ゴミを片付けたくて、仕方ないよ。
この部屋には田口先生と私しかいない。
もし私がゴミを片付けてしまったら、田口先生が起きたときびっくりしてしまう。
私の存在がバレるようなことをするのはルール違反。
だめなことだってわかってる。
だけど……。
気付くと体が動いてしまった。
そっと床に落ちていたゴミを、試しにつまんでみた。
あ、つかめた!
ひとつ、このゴミだけ片付けよう。
そう思ってゴミ箱へと運ぶ。
ひとつだけ片付けるだけのはずだったのに……。
勝手に片づけだした私は、無我夢中で掃除をはじめた。
いざ掃除を始めると、ゴミを捨てる手が止まってはくれない。
「ふう、」
深く深呼吸をした。
そのときだった。
私は気づく。
部屋を綺麗にしすぎてしまったことを。
「……どうしよう。部屋がきれいになりすぎた」
お菓子の袋などが散乱してたテーブルの上。
床に落ちていたゴミの数々を全てかたずけてしまった。
完全にやらかした……!
気づいたころには、汚部屋はゴミが無くなり綺麗な部屋に変わっていた。
完全にやらかした。綺麗にしすぎてしまった。
どうしよう。
田口先生が起きたら、部屋の綺麗さにびっくりしちゃうよね!
慌てた私は部屋をぐるぐると歩き回る。
そのときだった。
――ピピピ、ピピピピ。
大音量のアラーム音が鳴り響いた。
その音量の大きさに、肩がびくっと揺れる。
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