15 / 39
二章 とんでもないお仕事はじめました
2-7
しおりを挟むそしてあっという間にこの日の守護霊代行の仕事が終わった。
守護霊代行。
神様みたいな力はないけれど、ちょっとだけ小さな危険を助けて、人の手助けをする。
そんな仕事だった。
担当の人間に、存在がバレてはいけない。
もちろん話しかけることはルール違反。
この日の反省点といえば……。
若菜ちゃんに危険が迫ったときに、思わず声をあげてしまったこと。
結果的に助けることはできたけれど。
ルール違反をしてしまったことは、しっかり反省しないといけない。
「お疲れ様。いろいろあったけど。一応合格です!」
そういって柊は両手で大きな丸をつくって、にこりと笑った。
「ご、合格?」
「一応、今日は試験も兼ねてましたー」
えー! 知らなかった。
あっけらかんというので、驚いてしまう。
「それでさ。上層部から調査結果がきてたよ」
「調査結果?」
その言葉に、空気が凍るように緊張感が走った。
だって、調査結果って、私のことだよね?
早く聞きたいのに、聞くのが怖いような……。
心臓がバクバクとうるさくなる。
「まずはおめでとう。ここから重要な話……!」
私はごくりと息を飲んで続きを待った。
「未蘭は死んでないみたい。間違って死後の世界にきてしまったようだな」
死んでない?
ということは、また生きて現代に戻れるってこと?
私はホッと肩を落とした。
だけど、すぐに疑問が頭に浮かぶ。
どうして死後の世界に迷い込んでしまったんだろう……。
私がぐるぐると考えていると、柊は話を続けた。
「なんで死後の世界にきてしまったかというと……未蘭の身体は、どうやら仮死状態みたいだ」
「か、仮死状態⁉︎ それって……どういうこと?」
なにがなんだか分からなかった。
仮死状態?それって、どういうこと!?
「仮死状態は、正式にはまだ身体は生きている。だけど魂が彷徨って、三途の川を渡って死後の世界に迷い込んでしまったみたい」
ゆっくりと説明してくれるんだけど。
難しくて首を傾げた。
そんな私を見て、柊は困ったような顔をして続ける。
「未蘭と出会った場所は、死後の世界と呼ばれているけど。厳密に言うと現世と死後の世界の境界線なんだ。未蘭も見たと思うけど、大きな扉の先が本当の死後の世界ってわけ」
「私の身体は仮死状態で、魂が足を踏み入れてしまったってこと?」
「かなり珍しいことだけど……」
頭が混乱してきた。
私の身体は生きてる。だけど、魂はここにあるってことは……。
「そ、それって、やっぱり……そのうち、死ぬってこと?」
「今は生きてるけど。魂がこっちに迷い込んでしまってる以上、死は近いっていうことではあるな」
柊は言いにくそうに、肩を落とした。
「死」その言葉がズンと心に重くのようにのしかかる。
死後の世界にいたときは、覚悟を決めたはずだったけど。
生きているかもしれないという期待が生まれら、やっぱりまだ生きたいっていう気持ちが強くなった。
その願いが打ち砕かれたようで、心がぽっきり折れそうだ。
もう、怖くてたまらないよ。
うつむく私の顔を柊は両手ではさんだ。そして上へと待ちあげる。
ぱちっと綺麗な瞳と目があった。
ふいに目があって、こんな状況なのにドキッと胸が高鳴る。
「まだ落ち込むには早いぞ」
「えっ、」
両手を私の顔から話すと、にかっと笑った。
「続きがあってだな。未蘭が死亡予定者リストに載っていなかったこと。少女を助けて善意に溢れていること。その点が考慮されて……」
「う、うん」
私は緊張で手が震えだす。
ぎゅっと握りしめて前を向いた。
「そこに、守護霊代行の人出が足りていない状況が重なって……その結果、守護霊代行の仕事を遂行後、未蘭は現世に戻れるってさ」
「……も、もどれる? ほ、ほんとう?」
胸がぶわりと熱くなった。
私、死ななくていいってことは……。
また、学校でみんなに会えるってことだよね。うれしい……!
「特例だってさ。よかったな」
そういって、柊は手のひらを広げて、高くかかげた。
私より慎重の高い柊の手のひらは届かなくて。
ぴょんと跳ねて、ぱちんとハイタッチをした。
「ありがとう!」
「俺はなにもしてないよ」
優しく笑ったあと、思い出したようにハッとする柊。
「あ、まだ続きがあった」
「つ、続き?」
なんだか怖くておそるおそる聞き返す。
「守護霊代行の任務は三人。ちなみに今回の担当者は含まない。だってさ」
「えー! っていうことは、あと三回……」
「そう。明日からは一人で」
「ひ、ひとり?」
急に不安になってきた。
だって、今日は柊がそばにいてくれていたのに。
いきなりひとりで守護霊代行の仕事をするだなんて。
不安で仕方ないよ。
「不安なのはわかるけど、今日の感じで大丈夫だから、自信持って!」
両手でガッツポーズをつくってみせた柊を見たら、自然と顔がゆるんだ。
その優しさに嬉しくなって、不安が広がっていた心が軽くなる。
「うん……頑張ってみる」
不慮の事故により死後の世界に迷い込んでしまった私は、守護霊代行の仕事をすることになった。
担当する人間はあと3人。
無事任務を終えることができたら、元の身体に戻れるらしい。
信じられないような話だけど、今現実に起きていること。
この不思議な体験は、とんでもないラストを向けることになる……。
13
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?二本目っ!まだまだお相手募集中です!
月芝
児童書・童話
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
ひょんなことから、それを創り出す「剣の母」なる存在に選ばれてしまったチヨコ。
天剣を産み、これを育て導き、ふさわしい担い手に託す、代理婚活までが課せられたお仕事。
いきなり大役を任された辺境育ちの十一歳の小娘、困惑!
誕生した天剣勇者のつるぎにミヤビと名づけ、共に里でわちゃわちゃ過ごしているうちに、
ついには神聖ユモ国の頂点に君臨する皇さまから召喚されてしまう。
で、おっちら長旅の末に待っていたのは、国をも揺るがす大騒動。
愛と憎しみ、様々な思惑と裏切り、陰謀が錯綜し、ふるえる聖都。
騒動の渦中に巻き込まれたチヨコ。
辺境で培ったモロモロとミヤビのチカラを借りて、どうにか難を退けるも、
ついにはチカラ尽きて深い眠りに落ちるのであった。
天剣と少女の冒険譚。
剣の母シリーズ第二部、ここに開幕!
故国を飛び出し、舞台は北の国へと。
新たな出会い、いろんなふしぎ、待ち受ける数々の試練。
国の至宝をめぐる過去の因縁と暗躍する者たち。
ますます広がりをみせる世界。
その中にあって、何を知り、何を学び、何を選ぶのか?
迷走するチヨコの明日はどっちだ!
※本作品は単体でも楽しめるようになっておりますが、できればシリーズの第一部
「剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!」から
お付き合いいただけましたら、よりいっそうの満腹感を得られることまちがいなし。
あわせてどうぞ、ご賞味あれ。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる