13 / 39
二章 とんでもないお仕事はじめました
2-5
しおりを挟む何事も起きないまま、放課後を迎えた。
担当の若菜ちゃんは、ホームルームが終わると、友達と談笑しながら学校を出た。
朝と同じ道を帰っていたので、まっすぐ家に帰ろうとしてるんだと思う。
若菜ちゃんが、お友達と別れて一人になった。
そのときだった。
路地に入り道幅が狭い道を歩きはじめる。
前方からは自転車がこちらに向かってきていた。
狭いけれど、歩行している人と自転車くらいならすれ違えるくらいの道幅。
だから、油断していたのかもしれない。
突然、自転車がバランスを崩したようでガタガタと左右に揺れ出した。
そのまま若菜ちゃんとの距離が縮まっていく。
バランスを取りながら立て直そうとしている様子だけど、揺れは収まらず今にも倒れそうだ。
慌てて若菜ちゃんに視線を移すと。
スマホに夢中なせいで、自転車の異変に気付いていない。
どうしよう……!
このままだと、自転車とぶつかってしまう。
迷ってる時間はなかった。
危険がすぐ目の前まできている。
急いで地面を蹴った。
若菜ちゃんを引き留めようと腕を掴もうと手を伸ばす。
あと10㎝……。
だけど、その距離が届かない。
ドクンッと心臓が音を立てた。
だめだ。間に合わない!
「あ、危ないっ!」
間に合わないと思った私は、気づくと大きな声をあげていた。
あたりに声が響き渡る。
すると、肩をびくっとゆらして若菜ちゃんは、ぴたりと立ち止まった。
どうやら私の声が聞こえたみたい。
そのときだった。
――ガタンッ。
アスファルトと金属音がぶつかったような衝撃音が鳴り響いた。
ゆらゆらしていた自転車が転倒したのだ。
「え、なになに⁉」
若菜ちゃんは戸惑っていた。
声に反応して足をとめたおかげで、衝突する時間がずれた。
つまり、若菜ちゃんと自転車はギリギリのところでぶつからなかったんだ。
怪我しなくてよかった。
ホッと胸をなでおろした。
声を出すのはルール違反だけど、助けられたことには変わりはない。
若菜ちゃんは驚いているようだけど。
怪我の危険を助けられたから、感謝とかされたりするかな?
若菜ちゃんの危険を救えたことが嬉しくて、彼女をちらりと見つめる。
「え、なに? 誰もいないところから声が聞こえた? こわっ!怖すぎるんですけどっ!」
そういって顔を歪ませた。
あれ、思っていた反応と違う。
感謝されるどころか、思いきり怖がられてしまった。
若菜ちゃんには、私の姿が視えていない。
彼女からすれば「誰もいるはずのないところから声だけが聞こえた」ということだ。
そうだよね。怖がるのも無理はない。
顔を歪めたと思ったら。瞳を揺らして今にも泣き出しそうだった。
禁止事項を思い出して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
そっか。こういうことになるから、声を出したりしたらダメだったんだ。
怖がらせるつもりなんてなくて、ただ助けたかっただけだったんだけどなぁ。
慌てていたとはいえ、声を出してしまったことに反省をする。
13
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。

こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
今、この瞬間を走りゆく
佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】
皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!
小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。
「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」
合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──
ひと夏の冒険ファンタジー
ホントのキモチ!
望月くらげ
児童書・童話
中学二年生の凜の学校には人気者の双子、樹と蒼がいる。
樹は女子に、蒼は男子に大人気。凜も樹に片思いをしていた。
けれど、大人しい凜は樹に挨拶すら自分からはできずにいた。
放課後の教室で一人きりでいる樹と出会った凜は勢いから告白してしまう。
樹からの返事は「俺も好きだった」というものだった。
けれど、凜が樹だと思って告白したのは、蒼だった……!
今さら間違いだったと言えず蒼と付き合うことになるが――。
ホントのキモチを伝えることができないふたり(さんにん?)の
ドキドキもだもだ学園ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる