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一章 死後の世界に不法侵入⁉︎

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「あの……守護霊代行の仕事って、どんな仕事なんですか?」
「その名の通り、守護霊がいない人を守護霊の代わりに守る仕事だよ」
「守護霊の代わり?」
「そう。人間はほとんどの人に守護霊が憑いていて、小さな危険から守ってくれているんだ。だけど……最近は守護霊不足でさ。守護霊がいない人間が増えてきちゃったんだよ」

 さらりと日常会話でもするように柊は言ったけど。
 守護霊不足⁉︎ なにそれ……!
 そんなこと聞いたことないよ!
 
 説明されたことを整理すると、つまり、私は守護霊の代わりに人を助けるってこと?

「まって……頭がついていかないよ」

 頭がパニックになりそう。
 だって、守護霊が憑いているとか。守護霊不足とか。
 そんなの階段話とか、空想の話だと思ってた。

「あー。未蘭は守護霊とか信じないタイプだった?」

 ははっと、柊が笑っている。

「うん……幽霊とか信じないタイプだから。守護霊なんて、昔の人の言い伝えだと思ってた」

 確かにお母さんは、亡くなったお父さんがいつも見守ってくれている。とかよく言っていたけど。
 その話だって、全然信じていなかった。
 柊の話を聞いても、信じられない気持ちのほうが強い。

「そっかー。未蘭は危機一髪でハラハラした経験はない?例えば目の前に何かが落ちてきて。あと一秒ずれてたら自分に当たってた。なんてヒヤッとしたことはない?」

 柊の質問に記憶を辿ってみた。
 危機一髪で、ハラハラした経験……。

 あ、1つ思い浮かんだことがある。

「そういえば、小学一年生の頃、道を歩いていたら……。何かに足がつまずいて、立ち止まったの。そしたらすぐ目の前に、プランターが落ちてきたの!もしつまずいて立ち止まっていなかったら、頭に直撃して大怪我するところだった。あれは凄く怖かったなあ」

 思い出しても、心臓がバクバクする。
 あれ、もしかして……。

「守護霊が守ってくれたってこと⁉」
「ピンポーン!きっと……。いや、そういう事例は守護霊が守ってくれたって考えるべきだね!」

 柊は明るい声をあげて、両手で大きな丸を作って見せた。

 なんとなく、私の中で妙に納得できた。
 
 ほんとうに、守護霊がいて。
 人間が危険な目に遭わあないように守ってくれてるなんて。

「守護霊代行の仕事って……人を助けるのが仕事ってこと?」
「簡単に言うとそうだね。小さな危険から助けるのが、僕たちの仕事だよ」
 
 話しているうちに、少しずつ冷静になってきた。
 
「ちなみに……労働時間は?」
「労働時間? 仕事期間が終わるまでずっとだよ」
「ず、ずっと?」
「俺らは肉体があるわけではないからね。未蘭だって、肉体から飛び出てきてしまった魂なんだよ。要は現世を彷徨っている幽霊と一緒。肉体もないから疲労もしない。現世の労働基準法なんて適用されないよ?」
 
 とんだブラック企業だ。
 労働基準法が適用されないなんて。
 それがだめなことだと、中学生の私にだってわかる。


「未蘭が手伝ってくれないと、僕が引き取った意味なくなっちゃうんだよ」
「それって……」
「死亡手続きを進めることになるかもしれない……」
 
 泣きマネみたいに、目元を両手で覆っているけど。
 涙の雫はちっとも見えない。

 普通なら、守護霊代行の仕事。なんて断るに決まってる。
 だけど、脅すような言葉に、私には選択肢なんてないようなものだと思った。
 
 
 
「とりあえずさ。やってみない?現世に戻ってお試し体験!」
「こ、断れないよね?」

 おそるおそる聞いた私に、にこりと優しい笑顔を向ける。
 まるでその笑顔が答えのようだった。
 

「よし。そうと決まれば、さっそく仕事の説明させて!」
「えー!」

 返事をする前にグイっと手を引かれた。
 しばらく歩くと、真白な空間の中に通常サイズのドアが見えた。

 それは見慣れたドアのようなサイズ感。
 ドアの前に立ち止まる。

 すると、ゆっくりとドアが開いた。
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