上 下
7 / 39
一章 死後の世界に不法侵入⁉︎

1-6

しおりを挟む
「あの……守護霊代行の仕事って、どんな仕事なんですか?」
「その名の通り、守護霊がいない人を守護霊の代わりに守る仕事だよ」
「守護霊の代わり?」
「そう。人間はほとんどの人に守護霊が憑いていて、小さな危険から守ってくれているんだ。だけど……最近は守護霊不足でさ。守護霊がいない人間が増えてきちゃったんだよ」

 さらりと日常会話でもするように柊は言ったけど。
 守護霊不足⁉︎ なにそれ……!
 そんなこと聞いたことないよ!
 
 説明されたことを整理すると、つまり、私は守護霊の代わりに人を助けるってこと?

「まって……頭がついていかないよ」

 頭がパニックになりそう。
 だって、守護霊が憑いているとか。守護霊不足とか。
 そんなの階段話とか、空想の話だと思ってた。

「あー。未蘭は守護霊とか信じないタイプだった?」

 ははっと、柊が笑っている。

「うん……幽霊とか信じないタイプだから。守護霊なんて、昔の人の言い伝えだと思ってた」

 確かにお母さんは、亡くなったお父さんがいつも見守ってくれている。とかよく言っていたけど。
 その話だって、全然信じていなかった。
 柊の話を聞いても、信じられない気持ちのほうが強い。

「そっかー。未蘭は危機一髪でハラハラした経験はない?例えば目の前に何かが落ちてきて。あと一秒ずれてたら自分に当たってた。なんてヒヤッとしたことはない?」

 柊の質問に記憶を辿ってみた。
 危機一髪で、ハラハラした経験……。

 あ、1つ思い浮かんだことがある。

「そういえば、小学一年生の頃、道を歩いていたら……。何かに足がつまずいて、立ち止まったの。そしたらすぐ目の前に、プランターが落ちてきたの!もしつまずいて立ち止まっていなかったら、頭に直撃して大怪我するところだった。あれは凄く怖かったなあ」

 思い出しても、心臓がバクバクする。
 あれ、もしかして……。

「守護霊が守ってくれたってこと⁉」
「ピンポーン!きっと……。いや、そういう事例は守護霊が守ってくれたって考えるべきだね!」

 柊は明るい声をあげて、両手で大きな丸を作って見せた。

 なんとなく、私の中で妙に納得できた。
 
 ほんとうに、守護霊がいて。
 人間が危険な目に遭わあないように守ってくれてるなんて。

「守護霊代行の仕事って……人を助けるのが仕事ってこと?」
「簡単に言うとそうだね。小さな危険から助けるのが、僕たちの仕事だよ」
 
 話しているうちに、少しずつ冷静になってきた。
 
「ちなみに……労働時間は?」
「労働時間? 仕事期間が終わるまでずっとだよ」
「ず、ずっと?」
「俺らは肉体があるわけではないからね。未蘭だって、肉体から飛び出てきてしまった魂なんだよ。要は現世を彷徨っている幽霊と一緒。肉体もないから疲労もしない。現世の労働基準法なんて適用されないよ?」
 
 とんだブラック企業だ。
 労働基準法が適用されないなんて。
 それがだめなことだと、中学生の私にだってわかる。


「未蘭が手伝ってくれないと、僕が引き取った意味なくなっちゃうんだよ」
「それって……」
「死亡手続きを進めることになるかもしれない……」
 
 泣きマネみたいに、目元を両手で覆っているけど。
 涙の雫はちっとも見えない。

 普通なら、守護霊代行の仕事。なんて断るに決まってる。
 だけど、脅すような言葉に、私には選択肢なんてないようなものだと思った。
 
 
 
「とりあえずさ。やってみない?現世に戻ってお試し体験!」
「こ、断れないよね?」

 おそるおそる聞いた私に、にこりと優しい笑顔を向ける。
 まるでその笑顔が答えのようだった。
 

「よし。そうと決まれば、さっそく仕事の説明させて!」
「えー!」

 返事をする前にグイっと手を引かれた。
 しばらく歩くと、真白な空間の中に通常サイズのドアが見えた。

 それは見慣れたドアのようなサイズ感。
 ドアの前に立ち止まる。

 すると、ゆっくりとドアが開いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

処理中です...