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一章 死後の世界に不法侵入⁉︎
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しおりを挟む人影の正体は、人が一列に並んでいる行列だった。
「こちらに並んでくださいー!」
行列の先の方から「死んだ人はこちらから」というプラカードを手に持つ男性が声を上げている。
プラカードに書かれた文字は気になった。
けれど、誰もいない真っ白な世界に、人がいたことがなにより嬉しかった。
この場所のことを聞きたくて小走りで駆け寄る。
「あ、あのっ! ここって……」
緊張で声が震えていたかもしれない。
勇気を振り絞って声をかけたけど。返ってきた言葉は冷たい声だった。
「今きたばかりの人?」
「はい……ここはどこですか? 家に帰りたいんですけど……」
「あー、無理ですよ? ここにいるって事は死んでますから」
プラカードを持つ男はにこりともせず、無表情で冷たく答えた。
「この先で、天国行きと地獄行きに選別するので、こちらに並んでください」
「死んでる」その言葉を聞いたら心がぷつりと折れる音がした。
そんなことはお構いなしに淡々と話すので、全く感情が追いついてこないよ。
信じたくなくて心が考えることを嫌がっているのかもしれない。
ごくりと息をのみ、行列に並んでいる人をみつめてみる。
年配の人や、若い人、そしてまだ小さな子供まで。様々な年齢の人が並んでいた。
年齢はバラバラだったけど、共通点が1つあった。
みんなの顔は下を向いていて、生気が感じられないんだ。
そして、現実離れした今の状況をあらためて考えると、やっぱり私が死んだことは確定らしい。
認めたくはないけど、ここは死後の世界のようだ。
行列に並んでいる人は、一歩一歩前に進んでいく。
「これから選別するから。ほら、ここに並んで」
ぐいっと腕を引っ張られて、行列の中に押し込まれた。
わけもわからないまま、前に進む人たちに流されるように、私の足も進んでいく。
プラカードを持ったまるで案内人のような人がいうには、これからわたしは天国行きか地獄行きかに分けられるんだって。
行列の先には上を見上げても見切れないくらいの大きな扉がみえる。
その大きな扉の前には、真っ黒のスーツを着た男性が立っていた。
「はい、君は天国」
「はい、君は地獄。ご愁傷様」
スーツを着た男性は、流れ作業のように目の前に来た人に伝えている。
男性に判別を言い渡された人は、大きな扉を開けて中にスッと入ると……。
その扉から誰かが出てくることは、一度もなかった。
だめだ、怖い。手足が震えてきた。
だって、この行列に並んでいるということは、天国か地獄かを判別されるということ。
そんなの怖くて仕方ないよ。
あの大きな扉の先は、天国か地獄か――。
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