上 下
4 / 39
一章 死後の世界に不法侵入⁉︎

1-3

しおりを挟む


 人影の正体は、人が一列に並んでいる行列だった。


「こちらに並んでくださいー!」


 行列の先の方から「死んだ人はこちらから」というプラカードを手に持つ男性が声を上げている。


 プラカードに書かれた文字は気になった。
 けれど、誰もいない真っ白な世界に、人がいたことがなにより嬉しかった。
 この場所のことを聞きたくて小走りで駆け寄る。
 
「あ、あのっ! ここって……」

 緊張で声が震えていたかもしれない。
 勇気を振り絞って声をかけたけど。返ってきた言葉は冷たい声だった。
 
「今きたばかりの人?」
「はい……ここはどこですか? 家に帰りたいんですけど……」
「あー、無理ですよ? ここにいるって事は死んでますから」
 
 プラカードを持つ男はにこりともせず、無表情で冷たく答えた。
 
「この先で、天国行きと地獄行きに選別するので、こちらに並んでください」
 

 「死んでる」その言葉を聞いたら心がぷつりと折れる音がした。

 そんなことはお構いなしに淡々と話すので、全く感情が追いついてこないよ。

 信じたくなくて心が考えることを嫌がっているのかもしれない。
 
 ごくりと息をのみ、行列に並んでいる人をみつめてみる。

 年配の人や、若い人、そしてまだ小さな子供まで。様々な年齢の人が並んでいた。
 年齢はバラバラだったけど、共通点が1つあった。

 みんなの顔は下を向いていて、生気が感じられないんだ。
 
 そして、現実離れした今の状況をあらためて考えると、やっぱり私が死んだことは確定らしい。

 認めたくはないけど、ここは死後の世界のようだ。

 
 行列に並んでいる人は、一歩一歩前に進んでいく。


「これから選別するから。ほら、ここに並んで」

 ぐいっと腕を引っ張られて、行列の中に押し込まれた。

 わけもわからないまま、前に進む人たちに流されるように、私の足も進んでいく。

 プラカードを持ったまるで案内人のような人がいうには、これからわたしは天国行きか地獄行きかに分けられるんだって。
 
 行列の先には上を見上げても見切れないくらいの大きな扉がみえる。

 その大きな扉の前には、真っ黒のスーツを着た男性が立っていた。

 
「はい、君は天国」
「はい、君は地獄。ご愁傷様」
 
 スーツを着た男性は、流れ作業のように目の前に来た人に伝えている。

 男性に判別を言い渡された人は、大きな扉を開けて中にスッと入ると……。


 その扉から誰かが出てくることは、一度もなかった。
 
 だめだ、怖い。手足が震えてきた。
 だって、この行列に並んでいるということは、天国か地獄かを判別されるということ。


 そんなの怖くて仕方ないよ。
 
 あの大きな扉の先は、天国か地獄か――。
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記

葉月百合
児童書・童話
 小学上級、中学から。十二歳まで離れて育った双子の兄妹、光(ひかる)と桃代(ももよ)。  舞台は未来の日本。最先端の科学の中で、科学より自然なくらしが身近だった古い時代たちひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。そんな全寮制の寄宿学校へ入学することになった二人。  兄の光が学校になれたころ、妹の桃代がいじめにあって・・・。  相部屋の先輩に振り回されちゃう妹思いのお兄ちゃんが奮闘する、ハートフル×美味しいものが織りなすグルメファンタジー和風学園寮物語。  小学上級、中学から。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

処理中です...