2 / 39
一章 死後の世界に不法侵入⁉︎
1-1
しおりを挟む「お父さん、行ってきます」
元気よく挨拶をしたけど、返事は返ってこない。
部屋の片隅にある小さな仏壇。
飾られた写真の中で、お父さんは笑っているからだ。
私の名前は早川未蘭。中学一年生。
私が生まれてすぐに、病気で死んでしまったってお母さんが言っていた。
記憶にはないお父さんの写真に向かって、毎朝挨拶をするのが日課になってるんだ。
「今日も未蘭を見守っていてください」
そう言ってお母さんは、仏壇の前になると、いつも悲しそうに笑うんだ。
「大丈夫だよ。私、毎日元気いっぱいだから!」
お母さんを元気づけるように、大きな声で言ってみた。
「行ってきまーす!」
家を出ていつもと同じ通学路を歩いて学校に向かう。
お母さんは、仏壇を前にすると、悲しそうに笑うんだけど。
私にはよくわからなかった。
だって、私にはお父さんの記憶がないんだもん。
お母さんが口癖のように言っている「未蘭を見守っていてください」っていうのも、正直よくわからなかった。
幽霊なんて見えたことがないから、死んだ人が見守ってくれてるっていう話も、信じられないんだ。
そんなことを思っていたら……。
あちこちから楽し気な声が聞こえてきた。
通学路の先には、小学校と中学校があるから、この時間は人がたくさん歩いてるんだ。
私もいつも通り学校に向けて歩いていた。その時だった。
ふと気づくと気になる小さい人影が見える。
小学校低学年くらいの女の子が1人、ポツンと立っていた。
気になって様子を伺ってみたら、瞳いっぱいに涙を溜めて、今にも泣き出しそうな顔をしている。
あまりにも可哀そうで、キョロキョロと辺りを見回してみたけど、その子の他に同級生らしい子はいなかった。
それに、道ゆく人は少女に誰も話しかけようとしない。
どうしよう。私は声を掛けるか迷っていた。
迷子ではなくただその場にいるだけなのかもしれない。
だけど、わたしは今にも泣き出しそうな少女をなんだか放っておけなかった。
つぎの瞬間には、足が動いていた。
「どうしたの? 迷子になっちゃった?」
にこりと笑って優しい声で話しかけてみた。
女の子は声を掛けられた事に驚いたのか、肩をビクッと震わせた。
そして、今にも溢れ出てきそうな涙が溜まって瞳がうるうると揺れている。
「だ、大丈夫! お姉さんは怖くないよ?」
今にも泣き出しそうなので、あたふたしてしまう。
そんな私に、女の子は返事をせず小さく頭を振った。
迷子じゃないってこと?
うーん、どうしよう。
どうしたらいいかわからなくて、少し目を少女から離した。
次の瞬間。すぐに後悔する。
「あ、ちょっと! 待って!」
女の子が急に走り出してしまったんだ。
私が慌てたには、理由がある。
女の子が走ったすぐさきは、車が多く走る車道だったからだ。
考えるよりも先に私の体が動いた。地面を蹴って女の子を追いかけたけど、小学生の脚力は想像以上に早い。
無我夢中で追いかけた。そしてなんとか女の子の腕を掴む。
「あっ、危ないっ、からっ……」
いきなり走って息切れをしていた呼吸を整えた。
ハア、ハア。よかった。間に合った。
ほっと胸をなでおろした。
つぎの瞬間――!
14
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます
井藤 美樹
児童書・童話
私の両親はお人好しなの。それも、超が付くほどのお人好し。
ここだけの話、生まれたての赤ちゃんよりもピュアな存在だと、私は内心思ってるほどなの。少なくとも、六歳の私よりもピュアなのは間違いないわ。
なので、すぐ人にだまされる。
でもね、そんな両親が大好きなの。とってもね。
だから、私が防波堤になるしかないよね、必然的に。生まれてくる妹弟のためにね。お姉ちゃん頑張ります。
でもまさか、こんなことになるなんて思いもしなかったよ。
こんな私が〈聖女〉なんて。絶対間違いだよね。教会の偉い人たちは間違いないって言ってるし、すっごく可愛いモフモフに懐かれるし、どうしよう。
えっ!? 聖女って給料が出るの!? なら、なります!! 頑張ります!!
両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です!!
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記
葉月百合
児童書・童話
小学上級、中学から。十二歳まで離れて育った双子の兄妹、光(ひかる)と桃代(ももよ)。
舞台は未来の日本。最先端の科学の中で、科学より自然なくらしが身近だった古い時代たちひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。そんな全寮制の寄宿学校へ入学することになった二人。
兄の光が学校になれたころ、妹の桃代がいじめにあって・・・。
相部屋の先輩に振り回されちゃう妹思いのお兄ちゃんが奮闘する、ハートフル×美味しいものが織りなすグルメファンタジー和風学園寮物語。
小学上級、中学から。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる