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84 彼と共に生きる人生は薔薇色に(1)
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「まあ、カタリナちゃん! 戻ってきたのね、歓迎するわ!」
ウルジニア侯爵邸の離れにまた滞在することになった私は、イザベラ叔母さんにハグされて大歓迎を受けた。
「ありがとうございます。マドレーヌとマルコも引き続きお世話になってしまって、恐縮です」
「いいのよ。うちは息子たちが外にいるから、若い人たちがいてくれるほうがいいわ……そのうち長男がお嫁さんを連れてくるまで離れは自由に使っていいからね。まぁ、一生独身かもしれないけどね!」
そんな叔母さんの冗談に笑いながら、私は懐かしい部屋に戻った。
今は南部地方のエルフィネス伯爵邸よりも、このタウンハウスを心地よく感じている。
カフェの色々なメニューを考案したライティングデスク、リオネル様とのデートの前にマドレーヌに髪を結ってもらった鏡台、そして、初めての恋に胸をときめかせながら眠りについた寝台も――。
すべてが、自分にはなくてはならないもののように感じている。
ついさっき、私はリオネル様……ベルクロン王国の第二王子であるリオネル・デ・ベルクロン殿下の王子妃になることが内定した。
正式な婚約式はまだだけど、国王陛下の後押しがあるのだから、さすがのエルフィネス伯爵夫妻でも文句のつけようもない話だろう。
どこまでリオネル様がご自身の身分を公表するか、そして、私が「カフェ・カタリナ」に顔を見せるかは今の段階ではまだ決まっていない。
でも、細々とでもいいからカフェに携わり続けたいと思っている。
その希望を告げたら、リオネル様は快諾してくれた。
「お嬢様がそうおっしゃるなら、できるだけ譲歩しましょう……ただし、私以外の男にその魅惑的な微笑みを分け与えるのはやめてくださいね」
……接客業でお客さんに笑わないのも無理だから、なるべくこれからは経営側に移らなくては、と思っている。
リオネル様は、アステリウス公爵領に行くのは限られた場合のみ。王都に留まって、いまご自身に任されている事業を続けていくとのこと。
国王陛下は若くして事業家として大成したリオネル様の知見を見抜いて、ユーレック商会に鉄道事業を任せたらしい。
公共事業というのは、縁の下の力持ち。とても地味な仕事だが、リオネル様はご自身に与えられた役割をコツコツとやっていくつもりだ。
おそらく、新聞を賑わすのは王太子となる彼の兄だろう。
でも、リオネル様のような人こそが国を支えているのだと知っている。
人知れない苦労をしている彼を、私はそばで支えていきたいと思った。
久しぶりの「カフェ・カタリナ」は、すっかりマドレーヌの天下になっていた。
自分へのマージンが入るからか、店の前にでかでかと焼き菓子マドレーヌのポスターが貼ってある。
しかも、アイスボックスクッキーに倣って、ココアマドレーヌと紅茶マドレーヌという新たな商品を出し、プレーン味を含めたマドレーヌ三色セットまで販売している。
(もう……勝手にそんなことしちゃって!!)
内心呆れ果てる私だったが、ココア味と紅茶味を試食させてもらったら、これがなかなかおいしかった。
売上を確認したところ、お客さんの評判も上々のよう。
今回ばかりは、マドレーヌの商品開発能力を褒めてやらなきゃいけないだろう。
ウルジニア侯爵邸の離れにまた滞在することになった私は、イザベラ叔母さんにハグされて大歓迎を受けた。
「ありがとうございます。マドレーヌとマルコも引き続きお世話になってしまって、恐縮です」
「いいのよ。うちは息子たちが外にいるから、若い人たちがいてくれるほうがいいわ……そのうち長男がお嫁さんを連れてくるまで離れは自由に使っていいからね。まぁ、一生独身かもしれないけどね!」
そんな叔母さんの冗談に笑いながら、私は懐かしい部屋に戻った。
今は南部地方のエルフィネス伯爵邸よりも、このタウンハウスを心地よく感じている。
カフェの色々なメニューを考案したライティングデスク、リオネル様とのデートの前にマドレーヌに髪を結ってもらった鏡台、そして、初めての恋に胸をときめかせながら眠りについた寝台も――。
すべてが、自分にはなくてはならないもののように感じている。
ついさっき、私はリオネル様……ベルクロン王国の第二王子であるリオネル・デ・ベルクロン殿下の王子妃になることが内定した。
正式な婚約式はまだだけど、国王陛下の後押しがあるのだから、さすがのエルフィネス伯爵夫妻でも文句のつけようもない話だろう。
どこまでリオネル様がご自身の身分を公表するか、そして、私が「カフェ・カタリナ」に顔を見せるかは今の段階ではまだ決まっていない。
でも、細々とでもいいからカフェに携わり続けたいと思っている。
その希望を告げたら、リオネル様は快諾してくれた。
「お嬢様がそうおっしゃるなら、できるだけ譲歩しましょう……ただし、私以外の男にその魅惑的な微笑みを分け与えるのはやめてくださいね」
……接客業でお客さんに笑わないのも無理だから、なるべくこれからは経営側に移らなくては、と思っている。
リオネル様は、アステリウス公爵領に行くのは限られた場合のみ。王都に留まって、いまご自身に任されている事業を続けていくとのこと。
国王陛下は若くして事業家として大成したリオネル様の知見を見抜いて、ユーレック商会に鉄道事業を任せたらしい。
公共事業というのは、縁の下の力持ち。とても地味な仕事だが、リオネル様はご自身に与えられた役割をコツコツとやっていくつもりだ。
おそらく、新聞を賑わすのは王太子となる彼の兄だろう。
でも、リオネル様のような人こそが国を支えているのだと知っている。
人知れない苦労をしている彼を、私はそばで支えていきたいと思った。
久しぶりの「カフェ・カタリナ」は、すっかりマドレーヌの天下になっていた。
自分へのマージンが入るからか、店の前にでかでかと焼き菓子マドレーヌのポスターが貼ってある。
しかも、アイスボックスクッキーに倣って、ココアマドレーヌと紅茶マドレーヌという新たな商品を出し、プレーン味を含めたマドレーヌ三色セットまで販売している。
(もう……勝手にそんなことしちゃって!!)
内心呆れ果てる私だったが、ココア味と紅茶味を試食させてもらったら、これがなかなかおいしかった。
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