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40 ライバル店あらわる!?(2)

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 ――しかし、三ヶ月目に入って思いがけないことが起こった。
 一日で一番混み合うランチからカフェタイムまでの時間帯に、ぱたりと客足が途絶えたのである。
「あら……今日は、いやにお客さんが少ないわね」
「そうですね、カタリナお嬢様」
 不安そうな面持ちをするマドレーヌは、呑気そうな他のスタッフたちをみやった。
 新人スタッフたちも三ヶ月目に入ると、仕込みも店舗を回すのにもベテランの域に達している。
 メアリーに至っては、キッチンの監督業務も完璧にこなす。
 前に引き継ぎを渋っていたマドレーヌも、メアリーとシフトを交互にでき、定期的に休みをとれるようになったお陰で苛々することもなくなったようだ。
 それはそれでいいけれど……お客さんは、いったいどうしたんだろう?
 開店休業状態のカフェに、お昼時とあってリオネル様と社員の方々が二階から降りてきた。
「あれ? 今日はずいぶんと静かですね」
 がらんとした店内を見て、首を傾げたリオネル様に私もため息を漏らす。
「そうなんですよ……こんな日もあるんでしょうかねぇ」
「お昼時だし、外で久しぶりにランチミーティングでもしようかって思っていたんですがちょうどいい」
 そう言って、彼は連れの三人に声をかける。
「みんな、今日はここのパニーニでランチミーティングだ。ドリンクとデザートも好きな物を頼むといい。私の驕りだから」
「ホントですか、社長! 俺、この店のパンナコッタ大好物なんですよね!」
「俺はチーズタルトにしようかなぁ」
「フルーツタルトもおいしいよねー」
 わいわいとカウンターのほうに向かう社員の皆さんをみやって、私はリオネル様に頭を下げた。
「ありがとうございます! いつも贔屓にしていただいて……」
「気になさらないでください。私としても、ここでゆっくり食事できるのはうれしいんです。オープンからずっと、パニーニもパンナコッタも売り切れでしたからね」
 困った時にそれとなく助けてくれるのが、リオネル様の素敵なところだ。
 まぁ、借家人がこんな有様では、大家としても心配になってしまうかもしれないが……。
 ――その時、護衛のマルコが慌てた様子で駆けつけてきた。
「カタリナお嬢様、大変です!」
「あら、どうしたの? マルコったら、そんなに急いで……」
 彼には私がここで仕事をしている間は、ホテルカフェとの間の連絡役をしてもらっている。
 商品の在庫のチェックに行き、不足分がこちらに余分にあれば渡しに行ったり、多めに余りそうなら引き上げたりする。それをするだけでも、フランチャイズ側の安心感は増すはずだ。
 連絡役の彼が息せき切って戻ってきたということは、ホテルカフェのほうに異変があったのだろうか?
「大変なんですっ、裏通りに競合店ができていて……」
 それを聞いて、私はまさかと思った。
 どうせ、ティールームか何かが出店したのだろうと高をくくっていたのだ。
「とにかく、一緒に来てください。そうすれば、状況はお分かりいただけます」
 マルコに急かされて、カフェをマドレーヌに任せて外に出た。
 そして、目的地に着くと驚きに目を見開いた。
 そこにあったのは、緑と白をベースにした路面店……外観も内観も、「カフェ・カタリナ」にそっくりそのままだったからだ。
 しかも、外に張り出してあるポスターに書いてあるメニューも酷似している。
 名前は微妙に変えてあるが、パニーニやタルト、焼き菓子などのラインナップもそのままうちと同じ――。
(え……これ、どういうこと?)
 そして、看板に書かれている「カフェ・ベルトラ」という名を見た瞬間、これが誰の差し金で作られた店なのか理解した――。

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