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13 守銭奴侍女の意外な才能(1)
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ホテルでのデモンストレーションは、みんなの協力のお陰で成功した。
経営者側も、私の取り組みを後押ししてくれると約束してくれた。
できたばかりのホテルで運営をするだけで手一杯。新たな取り組みを積極的にしてくれる協力者は大歓迎と、支配人も喜んでくれた。
きっと、ウルジニア侯爵の姪でエルフェネス伯爵家の令嬢だという素性が考慮されてのことなのかもしれない。
この一歩を踏み出す理由がコネだとしてもかまわない。運もコネも実力のうちだから。
思えば、前世の私には、そのどちらもなかった。
苦学生だった私は、お金持ちの友人が大学に進学してバイトせずにサークル活動に専念しているのを羨ましいと思っていた。
でも、そういうときにこう考えることにした。私はお金がない代わりに、バイトをして色々な経験を得られるんだって。
お金持ちの子のサークル活動と私のバイトで得られる経験値は異なるものだけど、将来自分が行く道で同じように糧になる。
いや、もし就職していたとしたら、バイト経験のほうが飲食業界では歓迎されるくらいだ。
だから、嫉妬の気持ちを捨てて前向きに頑張ることにした。
カフェでバイトをした経験がなかったら、こんな風にカフェをやりたいというモチベーションもなかっただろう。
それに、支配人からフードについてはよく考えられているって褒められた。
アイデア自体は前世の知識をベースにしているから、私が考え出したものでも何でもないけれど、誰かから褒められるのは正直うれしかった。
それが間接的に、ホテルのアピールにつながるなら人助けにもなるし、自己実現もできるし一石二鳥だ。
(私って、本当に仕事が好きなんだわ)
つくづく、私はそう思った。
王都に来てから、エルフィネス伯爵夫人から「いい人は見つかったの?」と督促じみた手紙が届いた。
申し訳ないけれど、夢追い人の私にもう男は不要だ。
前世の夢……死ぬ前に、カフェ経営をするということ、そして、恋愛をしたいっていうこと。咄嗟にその二つを思い浮かべた私。
いま、はっきりとわかった。
どちらかを選ばないといけないとしたら、私は間違いなくカフェ経営のほうを選び取る。
なぜなら、世の中にはクズ男が溢れている。
フィリップだって、最初は私に優しくしてくれた。それなのに友人のエレオノールと浮気して、挙句の果てにできちゃった結婚! しかも、それを知らせずに私と婚約破棄したところが度量の狭さを感じる。
別に腹立たしいポイントは、婚約破棄をされたことじゃない。慰謝料が少なすぎることだ。
そんな屈辱を受けたら、ふつうは5万ゴールドの慰謝料では足りないはず。
ところが、すでにエルフィネス伯爵が婚約破棄の書類の取り交わしと慰謝料の受領を済ませてしまっている。いまさら文句を言っても後の祭りだ。
(いいわよ! 足りない分は、経営者として一流になってジャンジャン稼いでやるから!)
私はテスト店舗で出すメニューを考えながら、決意を新たにした。
――カフェのテスト期間は一週間。
日曜日は安息日とされているが、ホテルに宿泊する人のデータをとりたいので、あえて七日間連続で出させてもらうことにした。
その代わり、時間帯はとても短い。
十二時から十六時までの四時間が、与えられた営業時間だ。
ランチについては宿泊客から簡単に摂れる食事が欲しい、と前々から要望があったため。そして、ティータイムについてはメインダイニングがクローズしているから、宿泊客のニーズがあるのではないか、ということで決められた。
ホテルのメインダイニングに集まるお客さんと、カフェに来るお客さんでは同じホテルに泊まっていると言っても客層も用途も違う。
経営者側も、私の取り組みを後押ししてくれると約束してくれた。
できたばかりのホテルで運営をするだけで手一杯。新たな取り組みを積極的にしてくれる協力者は大歓迎と、支配人も喜んでくれた。
きっと、ウルジニア侯爵の姪でエルフェネス伯爵家の令嬢だという素性が考慮されてのことなのかもしれない。
この一歩を踏み出す理由がコネだとしてもかまわない。運もコネも実力のうちだから。
思えば、前世の私には、そのどちらもなかった。
苦学生だった私は、お金持ちの友人が大学に進学してバイトせずにサークル活動に専念しているのを羨ましいと思っていた。
でも、そういうときにこう考えることにした。私はお金がない代わりに、バイトをして色々な経験を得られるんだって。
お金持ちの子のサークル活動と私のバイトで得られる経験値は異なるものだけど、将来自分が行く道で同じように糧になる。
いや、もし就職していたとしたら、バイト経験のほうが飲食業界では歓迎されるくらいだ。
だから、嫉妬の気持ちを捨てて前向きに頑張ることにした。
カフェでバイトをした経験がなかったら、こんな風にカフェをやりたいというモチベーションもなかっただろう。
それに、支配人からフードについてはよく考えられているって褒められた。
アイデア自体は前世の知識をベースにしているから、私が考え出したものでも何でもないけれど、誰かから褒められるのは正直うれしかった。
それが間接的に、ホテルのアピールにつながるなら人助けにもなるし、自己実現もできるし一石二鳥だ。
(私って、本当に仕事が好きなんだわ)
つくづく、私はそう思った。
王都に来てから、エルフィネス伯爵夫人から「いい人は見つかったの?」と督促じみた手紙が届いた。
申し訳ないけれど、夢追い人の私にもう男は不要だ。
前世の夢……死ぬ前に、カフェ経営をするということ、そして、恋愛をしたいっていうこと。咄嗟にその二つを思い浮かべた私。
いま、はっきりとわかった。
どちらかを選ばないといけないとしたら、私は間違いなくカフェ経営のほうを選び取る。
なぜなら、世の中にはクズ男が溢れている。
フィリップだって、最初は私に優しくしてくれた。それなのに友人のエレオノールと浮気して、挙句の果てにできちゃった結婚! しかも、それを知らせずに私と婚約破棄したところが度量の狭さを感じる。
別に腹立たしいポイントは、婚約破棄をされたことじゃない。慰謝料が少なすぎることだ。
そんな屈辱を受けたら、ふつうは5万ゴールドの慰謝料では足りないはず。
ところが、すでにエルフィネス伯爵が婚約破棄の書類の取り交わしと慰謝料の受領を済ませてしまっている。いまさら文句を言っても後の祭りだ。
(いいわよ! 足りない分は、経営者として一流になってジャンジャン稼いでやるから!)
私はテスト店舗で出すメニューを考えながら、決意を新たにした。
――カフェのテスト期間は一週間。
日曜日は安息日とされているが、ホテルに宿泊する人のデータをとりたいので、あえて七日間連続で出させてもらうことにした。
その代わり、時間帯はとても短い。
十二時から十六時までの四時間が、与えられた営業時間だ。
ランチについては宿泊客から簡単に摂れる食事が欲しい、と前々から要望があったため。そして、ティータイムについてはメインダイニングがクローズしているから、宿泊客のニーズがあるのではないか、ということで決められた。
ホテルのメインダイニングに集まるお客さんと、カフェに来るお客さんでは同じホテルに泊まっていると言っても客層も用途も違う。
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