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馬車に揺られて

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 リュノーの屋敷から外に出て門に向かうと……

「あれ?グレミオ?それにみんなもどうした?……おはよう?」
 「おう、おはよう」
 「トシー!」
 「どうした?」
 「3日会えないかもって聞いたからお見送りじゃ」
 「「お見送りー!」」
 「そっかありがとなー!」
 「「「///」」」

  お見送りに来てくれた3人の頭を撫でてやりながら、グレミオに話を振る。

 「グレミオ暇なのか?」
 「誰が暇だ!忙しい中来ているのだ!」
 「そっかさんきゅー、面白い物があったら取ってくるよ」
 「ふん!……持ってけ」
 「ん?なんだこれ?」
 「新種の豆、焙煎済だ、旅先で飲むがいい」
 「おぉおおおお!!!!!!グレミオありがと!!!」
 「口に合わなくても知らん、ではな」
 「「「いってらっしゃーい」」」
 「「「行ってきます」」」

  普通に嬉しい!予想外のお見送りにコーヒーまで、こういう些細な事でもやる気が一気に出るな!
 式神?の馬もそうだが、マジックバックから馬車を出すと目立つので門から少し離れた場所で馬車を出し、馬召喚してもらい、遠出の準備が整っていく。

 「では出発致します」
 「「「はーい」」」
 「まてまて!どこから現れた!」
 「?」
 「ノアだしねー」
 「気にしてもね……トシの傍にいない方が変な感じ?」

  首をコテンと倒し何言ってんだこいつって目で俺を見ている……そんなにいつも一緒にいるか?

 「カエデは?」
 「カエデは屋敷ですよ」
 「ノアだけ来ちゃっていいのか?」
 「なにを今更……契約項目ちゃんと見てないんですか?」
 「見てないな」
 「……」
 「ヒカリがOKなら大丈夫だ」
 「前にも言いましたが!言いましたが!私はご主人様付き、専属のメイドです、残りはついでです」
 「ついでって……」
 「カエデとご主人様は一緒ですが、カエデは屋敷付きのメイドです」
 「そーなのかー」
 「……考えるの放棄しましたね?」
 「ノアはいつも一緒って事だろ?難しい事気にしてもな」
 「……もう、それでいいです……」

  馬車が出発し俺は御者席にノアと座る、ノアが傍にいるのはなんか安心するし別に問題ない、今回の馬車はヒカリにより一層改造され、わざわざ飛び降りて御者席まで行く必要がなくなった。疲れたりしたらそのまま後ろに行けるのは普通のはずなんだが便利だ。

  馬車の旅は順調に進んでいく、途中までは道も整備されていて、モンスターも滅多にいないと事前に聞いていたのでまったり景色を眺める事ができる。

 「イーヒ無理すんなよー」
 「……はーい!」
 「リリィもターニャもメリルもだぞー」
 「「「はーい」」」

  現在かなり広い馬車の中には誰もいない、外を走っている4人を景色と交互に眺めている。イーヒッドのリハビリというかなんというか、魔法関係は問題なかったらしいが体力、スタミナがなくリリィ達について行けないので訓練だそうだ、スパルタだなーと思いながら応援する。

 「ご主人様?スケベな事でも考えているのですか?」
 「そんな顔してた?」
 「イーヒの汗で張り付いた髪がいい!って顔をしていました」
 「ノアでも心が読めない時があるんだな」
 「読めないと言っているではありませんか」
 「ノアってもっと砕けてた気がするんだけど最初に戻っちゃった感じがするんだよな」
 「気のせいでは?」
 「そうかな?ノアのしたいようにしてくれていいんだけど気にはなるからなー」
 「また背中を流したりして欲しいのですか?」
 「それはして欲しいけど、そういうのとは違うと言うか…」

  うまく言えないな……

「……ご主人様は私も手籠めにしたいと?」
 「うーん返答に困るな、エロい事したいかしたくないかで言えば、考える余地なくしたい……そういう話じゃなくてさ?」
 「……勝手に胸さわったり太ももに手を這わせたり……またしたいと?」
 「あれは寝ぼけてだ!まぁしたいが」
 「契約にもありますが性的な奉仕はしませんよ、残念でしたね」
 「残念だな、でもこうやって話してるだけで……初めてか?のんびり話すのって」
 「……そうですね、いつも誰かいますから」
 「騒がしい家でごめんな」
 「毎日が楽しいですよ、こんな生活想像できなかった……」
 「ノア?」
 「すみません、気にしないでください。そろそろお昼にしましょうか」
 「ああ、そうだな、みんなー!そろそろごはんにしよー!」
 「「「はーい!」」」

  昼は簡単にシチューとパンだ、簡単に作ったはずなのに売り物にできるレベルだ……

「クリームシチューってこっち来て初めてか?」
 「初めて食べるシチューです!美味しいです!」
 「こんなシチュー見た事ないですね」
 「優しい味だねミルク?」
 「モグモグ!」
 「ミルクですね、シチューに合います」

  弱冠一名夢中になりすぎて返答できていないが久々のクリームシチューは美味かった。

 「そろそろ今回に限って俺に助っ人頼んだ理由聞いて平気か?」

  昨日は結局聞けなかった、戦闘に関しては問題ないと思うがなんで呼ばれたのだろう?

 「えっとですね最初から話しますと、イーヒの魔術に使う聖魔石を取りに行くのです、ここまでは昨日話しましたね?場所はダンジョンです」
 「ふむふむ」
 「祈禱に必要なのじゃ」
 「ここで下ネタ?そんな流れ?」
 「///ちがう!ちがう!祈禱!祈りをささげるのじゃ!///」
 「捧げるのです」
 「///……です///」
 「まぁそんな感じでダンジョンに魔石を取りに行くのですが噂で厄介な敵が稀に現れるようでして」
 「厄介な敵?3人で勝てないレベルのか?」
 「話を聞く限り余裕です、ですが……///」
 「めんどうな術を使うみたいで……///」
 「///……うん///」

  また口ごもってしまった、そんなに厄介なのか?

 「誘惑といいますか……強制発情といいますか……///」
 「レジスト失敗すると異性によって発散させないと戻らないようで……///」
 「過去にレジスト失敗した女性パーティがゴブリンを襲ったとかなんとか……///」
 「それは大変だな、俺が一緒に来た意味がやっと解ったよ」
 「///……///」
 「マッサージ要員だな!」
 「///!!!///」
 「イーヒ、そのうち顔から火が出ちゃいますよ?」
 「特に欲求不満の人が掛かりやすいと報告されたらしいです」
 「そんな敵の前に、ご主人様を連れて行って平気なのですか?」
 「「「……さぁ?」」」


  自分たちが魅了された時の為に俺が来たが、俺が魅了される心配などしていなかったようだな。 
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