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負け惜しみ

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 変装道具を受け取り、いざ帝国バスクルへ!

 輝星からの連絡では帝国からどのくらいの規模の軍隊が出立したのか不明だった、今回の優先順位としては正体を隠したまま軍を無力化しバスクルに押し返す事、輝星と合流して超部屋を繋げる事だ。だが……

「お前らなー、魔の森までまだ半分だぞ、何へばってんだよ」
「「……」」
「確かに、結構抑えて走ってたんだが二人にはきつかったか?」

 太郎と光宙は肩で息をしていて返事がない、おいおい訓練所の年長者組のランニングより少し早いくらいだぞ?

「……なん……て……ペースで……走るんで……すか!?」
「……」
「早朝ランニングよりちょい早いくらいだよな?」
「しかも足場がいいから、いつもより走りやすい」
「超部屋だと岩場とか森とか走るもんな、意味もなく木の上駆け抜けたりもするし」
「サリアの勇者2人がへばるとは、朝練参加決定かな」
「だな、ちゃんと一緒に訓練とかした事ないし、パーティメンバーも少しやらないとダメっぽいな、輝星のメンバーも強ければ足止めなんかされなくて済んだろうしラグナに相談だ」

 サリアの名を背負う勇者とそのパーティが弱いと話にならない、3人とは話をする事は多いがしっかり訓練を見た事ない、もっと早くにやっとけばよかったな。

「ほれ行くぞ、男には厳しくいくからなー」
「……強くなる事は俺も保証できる、夢にトシが出てくるようになってから本番だと思え、いくら止めても殴ることをやめない……悪夢が……」
「そんな夢見てたのか?アヤコさんの夢ばっか見てるのかと思ってた」
「頻度が……アヤコさんが出てくる頻度が下がるんだ……慣れるとトシの悪夢は見なくなるけどさ」

 カズが泣きそうな顔をしている、こんな時なんて言えばいいかわからない、スルーでいいや。

「そろそろモンスターも出てくるぞー、俺とカズは見てるから2人で何とかしろ、気配も教えてやらんからな」
「魔の森に入るまでは2人でなんとかしてくれよ、リーダー命令だ」

 カズリーダーが仕切っている。多少無茶しても責任はカズだから気が楽だ。怒られるのは俺だけど。

「持久力は自信ないですが戦闘なら……前より強くなったところをお見せます!」
「……太郎……二人の戦闘見た事ないのか?」
「ないけど?ピカはあるのか?」
「……トシさんのを少しな……俺達勇者なんだよな……」
「光宙!またネイティブになってんぞ!」
「ネガティブな」
「光宙!またネガティブになってんぞ!」
「言い直すなよ」
「サービスだ、最初のモンスターが来るぞー」
「はい!ピカ!最初は俺が行くぞ!」
「がんばれ!」

 すでに視界に入ったモンスター、なんだろうあれは?名前は知らないが人と同じくらいの大きさのカマキリ?が3匹、虫は小さくても大きくてもやっぱ嫌だな。

「最初から俺の考えた必殺技で行かせてもらう……ほぉあーーーー!!!!!」
「……」

 太郎の右手にある剣が闘気で覆われていく……あっという間に3匹のカマキリは倒されてしまった。

「どうっすか!」
「……気を落とさずに聞いてほしい」
「え?……まずかったっすか?」
「それな、闘気の剣な、あんまり意味ないぞ?」

 説明は苦手なんだががんばるか、後輩の勘違いを正してあげないと。

「太郎、目を瞑って両手伸ばしてみ……そう、それでこれ持って」
「はい?」

 言われた通りに指示に従う太郎。

「そのまま……その武器を自分の武器だと思って闘気で覆ってみてくれ」
「はい……ほぉあーーーー!!!!」
「おぉー!できたな、目開けていいぞ」
「なんすか!これ!折り畳み傘?」

 こっちに来た時にカバンに入ってた折りたたみ傘だ、ネットで見つけた持ち手が刀の柄やつ。

「闘気を自分のイメージに具現化?できてるから敵も切れるけど、せっかくの刀身を覆ってしまうから剣の意味ないんだよ」
「そうだったんすか……詳しいですね」
「前にトキ達が遊びでやってたからな、俺にはできないが」
「遊びって……トシさんはできないんですか?」
「魔力も闘気も外に出ないんだ、俺はいいとして闘気の剣の利点としては手元に武器がなくても武器を出せるって点なんだが、欠点が多いんだ」

 聖剣なら呼べば召喚できるから聖剣持ちの利点にはならないが、今は置いておこう。

「まず本来肉体強化などに使う分の闘気を武器に回している点、消耗している時に安定して使えない可能性がある点、最後に意識の問題で勝てないとか切れないとか考えるとダメな点だろうな」
「欠点の方が多いいっすね……」
「いい剣買った方がいいんだよな」
「わかりました……さっき言ってたましたがトシさんはできないんですよね?」
「物に流し込む事はできるのに不思議だよなー」

 本当になんなんだろうな、隠れて練習してるのにできない。

「見てろーファイアー!……な?」
「出てないですね、でも魔力は練られていた気が?」
「そうなんだよ!魔力は減るんだよ!魔法は出ないのに魔力が減る理不尽!」
「減った魔力はどこに行ったんですか?」
「さぁ?」
「……遠距離戦ならもしかして……」
「諦めろ、一般人の遠距離はトシの遠距離に入らない、100キロ離れても安心できないぞ」

 不壊の範囲内なら遠距離とは言えないけど、100キロは盛りすぎだろ!

「おい太郎!トシさんにって何言ってんだよ!」
「そうは言うけどさ目標の人に勝ちたいって思うのは普通だろ?」
「……少しは」
「トシに勝つなんて簡単だぞ?」
「「え?」」
「この間の神経衰弱もババ抜きも圧勝だったし」
「……ああ」

 くそ!なぜ誰も俺のババを抜かないんだ!?最初から最後まで俺の手の中にいやがって!神経衰弱なんて論外だ、俺への当てつけのゲームだと思っている。

「スピードは俺が勝ちましたー」
「はぁ!?トシの反則負けだろ!闘気纏いやがって危なくてカード置けねーよ!」

 ついつい熱くなっただけだ、カズ以外には使ってないし、ってか使わないとカズのスピードがやばい。

「サバゲーも俺の勝ちだしな、トシより生き残った!」
「違いますー1位以外全員敗者なので引き分けですーもしくは俺のチームが優勝なので俺の勝ちですー」
「サバゲー!?銃があるんですか!?」
「……全部遊び……」


 魔の森に到着するまで言い争いが続いた。
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