【完結】本来は転校生と王子のラブストーリーだったはずだけど、とにかく推しを愛でたい

みちはる

文字の大きさ
上 下
2 / 12

2.推しが素晴らしすぎる

しおりを挟む
ガタンゴトンと心地よい馬車の揺れの中、窓に視線を送る伏せがちの目にかかる睫毛が長すぎて、まるで神に作られし至高の存在のような推しをガン見してる元貴腐人のメイン攻略対象です。
あぁ…尊い…っ!!!

「ねぇ…何か僕の顔についてる?ずっと見てるじゃん」

「え?あ、可愛いなぁって」
「はぁ?!何言ってんの!今日、変だよ。学校行くのやめる?」
「それは(推しとの時間が減るから)困る…」
「無理しなくてもアルなら成績も単位も大丈夫じゃん」

心配そうな面持ちで推しが額に手を当ててきた。
ちょw俯瞰でみたいんだけど!!!

「…微熱っぽくない?」

ひぃ!きゃわいぃいいいいいい!
ますます体温が上がってますがアナタのせいですよ!間違いなく!!

だけど一緒にいれなくなるのは勿体無すぎるので
ここは普段通りに見えるよう、なりきりなんちゃらとWebに公開しまくったアル✖️ハー小説で経験値を死ぬほど詰んだアルフリートの口調と行動を意識して動かねば…!

「そんな顔しないで。大丈夫、ハーラルが心配してくれたから、ほら、もう元気だよ」
「もう…またそんな事言って…」

普段から歯の浮くようなセリフを言うキャラでよかったー!
可愛いだの褒めまくったって通常営業だもん。
だからファンの間で非公式にこのCPが盛り上がりすぎるわけだけども。

心配して気にかけてくれる愛しの推し様は何度も気にかけながらこちらを伺ってくれるから学校に着くまでの十数分、幸せしかない時間が流れていた。
幸せな時間ほどあっという間に過ぎるわけで
いつの間にかオープニングCGで何度も見た校門の前で馬車が止まる。
わぉ、そのまんま!
制服姿の推しとセットで最高すぎる!!
先に馬車を降りて待つ推しの姿に心の中でにやけながら、馬車を降りると
某ロボットアニメを彷彿するようなインスピレーションと共に空気を切り裂き視界入ってくる数本の矢。


はーたんが危ない!!

咄嗟に推し様を抱きしめて庇い、次に来る痛みに備えて眼をキュッと瞑って構えた。


パァンッと激しい音を立てた事に気づいて目を開けると矢は散り散りに砕け、風に消えていく。
きっとはーたんの防御壁のおかげだろう。
なんて最高なんだ!うちの推しは!!!!

推しを強く抱きしめながら頭に浮かんだ呪文を詠唱すれば足元に魔法陣が浮かび出し、水で型取られた鳥の群れが矢が飛んできた方向へと飛び立ち、その後を追うように複数の影が移動していくのがわかった。
これ以上、出来ることは無さそうなので腕の中のはーたんに視線を落とすと真っ赤な顔して何か言いたげな彼と目が合う。
え、めっちゃ可愛い。
思わず抱き締める力が強くなってしまったのは許して欲しい。

「大丈夫…?」
「それはこっちのセリフ!アルは僕を守るんじゃなくて自分を守りなよ!臣下を守るとか、ホントバカなの?!」

うわ、めっちゃ怒ってらっしゃる。
そんな姿も可愛いけども…。

「なんの為の僕だと思ってんの?!むしろ盾になるのは僕の役目なのに…!」

確かに防御・支援魔法が得意なハーラルだからこそ、側近かつ護衛として側にいる事が多い。
彼が作り出す魔法防御壁は物理、魔法ともに耐久性があるため破る事は魔力切れでもない限りほぼ不可能と言われているのだ。
逆にアルフリートは攻撃に特化しており剣技・体術・魔法のどのパラでも優れているのだが支援系はそれほど得意ではない。
それ故のこの組み合わせがたまらんのですけども…!

「俺は…ハーラルの事を臣下とも盾とも思った事は一度もないよ。…君は何よりも大切な人なんだ。だから、例え1ミクロンだろうと傷付けたくはない」

あ、やべ。ミクロンの単位この世界線にはねーわ。
「………バカ」

あ、気にしてない様子で目を逸らした。
てかそんな事よりも
そのバカの言い方ぁあああああああ!!!!
鬼可愛いんですけど!!!!!
はにかんだ顔がズルい!小悪魔ちゃん炸裂!!!
脳内がヒャッホー状態でお送りしてますが、会議中に妄想する時の笑顔武装スキルのため顔には決して出してません。
擬態スキルあってよかったぜ…。
などと脳内大爆発を起こしつつも
腕の中の推しを撫で撫でしまくって堪能してると
先程、反撃した時に追っていった影が戻ってきたので、推しの背中をポンポンしてから手を離すと彼らに向き直れば

「ひゅーひゅー、相変わらずお熱いね~」
ニヤニヤとした顔でピンクの綿飴のような髪の少年が声をかけてきた。

「ニコルありがとう、どうだった?」

公式でもイチャイチャしてるため、あまり周りも気にしてないのか幸いだ。

「全員とっつかまえて近衛に突き出しといたが、戻ったら尋問が必要だな」
「コンラートは物騒だね~、もっと穏便な物言いは出来ないわけ?」
「うっせぇ」

多少乱暴な物言いの短髪黒髪に赤い瞳の彼がコンラート、水色のタレ目にゆるふわヘアのセクシー担当のカインが茶化す。さっきのニコルを加えて3人は王族に仕える暗部部隊の人間だ。
王位継承第一位のアルフリートは一人息子ゆえに他の上位貴族から命を狙われる事も多いため関係者が身近に多くいるのも日常茶飯事みたいね。

「話はあとあと。ほら!早く教室行かないと授業始まっちゃうよ」

私の推し様の一声で校舎の時計台に目を移すとあと数分で予鈴がなる時間を針が示していたため、そそくさとその場を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

ヒロインの兄は悪役令嬢推し

西楓
BL
異世界転生し、ここは前世でやっていたゲームの世界だと知る。ヒロインの兄の俺は悪役令嬢推し。妹も可愛いが悪役令嬢と王子が幸せになるようにそっと見守ろうと思っていたのに…どうして?

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

処理中です...