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1.推しがいる世界最高すぎた件
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私は40歳、アラフォー独女かつ貴腐人。
推しに貢ぎたい一心で仕事をアホほど熟してたら役職まで昇り詰めてた生粋のオタクである。
それはまぁいい。悔いはない。
いわゆる港区女子とやらに擬態して生きてきたからリアルもそれなりに楽しんできていたし、これからも両立して楽しんでいくつもりだった。
そのはずだったのだが…
目の前には知らない天井。
…いや、王道のセリフで申し訳ないだが。
落ちてきたら殺傷能力高そうなシャンデリア。
天井に聖書っぽいテンペラ画が描かれて
いかにもな画角。
自宅のウォーターベットよりは劣るがまぁまぁな寝心地のだだっ広いベットから上半身を起こして状況確認。
グレージュにごてっとした模様の壁紙にも全く見覚えないんだけどな。
あぁ、これは夢だ。
見覚えなくもない世界観だし、きっといい夢なはず。
このまま寝てしまえば目覚めた時にはクソ幸せが待ってるに違いない。
そう思って再び横たわる。
推しを5人くらい並べても余りそうなベットに大の字を描いて再び目を瞑る。
「………ル!…もう、アルってば!いい加減起きないと遅刻するんだからね!」
推しの声がする。
鼻にかかったような甘い声。
あぁ…♡一生聞いていたい。
アレ、でもそんなアラームつけてたかな?
推し課金すごすぎて何に使ったか覚えてないんだけど。
目を閉じたままで鈍る思考の渦に意識をまどろわせていると頬に触れられた感覚と、次いで訪れたピリッと走る刺激に瞳をかっぴらくとそこには濃紺の髪にピンクの吊り目がちな瞳が印象的な幼い顔立ちの美少女と見紛うほどの少年が呆れ顔でこちらを見下ろしている。
「……はーたん…?」
「はぁ?寝ぼけてんのも大概にしなよ?!」
推しめっちゃ怒ってる。いや、怒ってるのも最高に…
「可愛い…」
手を伸ばしたら簡単に触れられた推しの頬。
あったかい…。
そして柔らかい。
さすが10代、ピッチピチや。
はーたん、もとい私の嫁のハーラル様、天使すぎやろ。
髪もサラサラ…。
つか何この夢、触れるんだけど。
頬から手を滑らせて瞳とお揃いのピンクの石が埋め込まれたピアスに触れた。
耳の形まで綺麗とか、さすがはーたん♡♡♡
ん…??
なんか推しがめっちゃ赤くなってんだけど。
反応も神すぎじゃない?
「耳まで真っ赤だね…。照れてる姿も可愛い」
ん…?自分の声が自分じゃないように聞こえる…?
かなりのイケボ。
いやいや、アル✖️ハーが好きすぎるからって
嫁の旦那の声に聞こえるとか、もう脳内腐敗凄すぎるんでね?
「もう!知らないっ!アルなんてアルフリート殿下って呼んじゃうんだからっ」
ぬぉおおおお!
ご馳走様ですぅうううう♡
これははーたんが拗ねた時の最高ツンセリフ!
殿下呼びして距離を置いてやるって意味ですよね、はい、ご褒美あざっす!
「それは困るな…」
までが
一連のやり取りですよね!
存じあげておりますとも!!
とまぁ
ひたすらデレデレしてしまうんだけど…
とりま、まず状況把握だよね。
頬を膨らませてプンスカしてるけど部屋を出て行ってないところが面倒見の良さというか最高のツンデレというか…
最強に可愛い推しの頭を撫でてベットからとりあえず出る。
うわっ、髪の毛ふんわふわのサラサラ!猫か!猫じゃん!!
鼻血吹き出す前に退散してバスルームに向かえば
「メイド呼ぶー?」
と、はーたんのお気遣いの一言。
ツンデレなのにこーゆーとこよ。こーゆーとこ!
お気遣いの出来る賢さと配慮にますますグッときます。
あぁ…神!!
大丈夫、と微笑んでバスルームの扉を閉めた。
シャワールームをぐるりと見渡してモノの配置を確かめる。
中世的なデザインではあるものの機能性は現代的だ。
シャンプー類が陳列された棚に
浴槽とそれから…
あ、シャワーある。
うん、これなら大丈夫。使えそうかな。
間取りや装飾見ても既視感だけで確証が得られないのは設定資料集は推しのページしか熟読してなかったからなんだけども。
今更悔やんでも仕方ない。
顔さえ確認出来ればあとはどうにでもなるでしょ。…たぶん。
そう自分を鼓舞しながら
シャワーのコックを捻って何があって大丈夫なように音を水音で遮断。
意を決して鏡を見れば
白銀の髪に優しそうな目元には空色の瞳が彩られて、長い睫毛が縁取る。
「うわ、アルフリート・ヴァン・ヴィステーリアじゃん…」
私のハマってるゲームのメイン攻略対象であり、一番人気のキャラクターが鏡に映る。
うん…、the王族的な雰囲気でまさに王子。
ま、実際に王子ではあるんだけども。
肌けたシャツから覗く均等にバランス良く付いた筋肉。スーツとかが似合うのは当然だな、なんて鏡に映る姿をまじまじと見つめてしまうのは仕方ない。造形美を愛でるような感覚だ。
平らな胸、そして男性特有のもの。
思わずしっかり存在は確認しましたけども、まぁどうにかなるかな、うん。たぶん。
そんな状況から現実逃避する様に
無駄に笑みを作って手を振れば、鏡と連動していることから
恐らくはアルに憑依ないし転生ないし何かしらの形で入ってしまった事は理解した。
転生系とかの流れで言えば自覚してわーきゃー言うものなんだろうが、そこは四十の経験の差。
あと転生ものを読み尽くしたせいで王道展開に、ああ、うん的な理解力を発揮しすぎて
大きめなリアクション無しで申し訳ない。
そんなことよりも
推しが息して動いて触れられること以上の感動はないのだ。そこはわかってほしい。
まぁ、これが一瞬の夢だろうが何だろうが
とにかく推しを愛でる事を最優先したいのだ!
こんなところで夢オチしてなるものか!!
との一心でそそくさとシャワーを浴びて身支度を始める事にしたのであった。
推しに貢ぎたい一心で仕事をアホほど熟してたら役職まで昇り詰めてた生粋のオタクである。
それはまぁいい。悔いはない。
いわゆる港区女子とやらに擬態して生きてきたからリアルもそれなりに楽しんできていたし、これからも両立して楽しんでいくつもりだった。
そのはずだったのだが…
目の前には知らない天井。
…いや、王道のセリフで申し訳ないだが。
落ちてきたら殺傷能力高そうなシャンデリア。
天井に聖書っぽいテンペラ画が描かれて
いかにもな画角。
自宅のウォーターベットよりは劣るがまぁまぁな寝心地のだだっ広いベットから上半身を起こして状況確認。
グレージュにごてっとした模様の壁紙にも全く見覚えないんだけどな。
あぁ、これは夢だ。
見覚えなくもない世界観だし、きっといい夢なはず。
このまま寝てしまえば目覚めた時にはクソ幸せが待ってるに違いない。
そう思って再び横たわる。
推しを5人くらい並べても余りそうなベットに大の字を描いて再び目を瞑る。
「………ル!…もう、アルってば!いい加減起きないと遅刻するんだからね!」
推しの声がする。
鼻にかかったような甘い声。
あぁ…♡一生聞いていたい。
アレ、でもそんなアラームつけてたかな?
推し課金すごすぎて何に使ったか覚えてないんだけど。
目を閉じたままで鈍る思考の渦に意識をまどろわせていると頬に触れられた感覚と、次いで訪れたピリッと走る刺激に瞳をかっぴらくとそこには濃紺の髪にピンクの吊り目がちな瞳が印象的な幼い顔立ちの美少女と見紛うほどの少年が呆れ顔でこちらを見下ろしている。
「……はーたん…?」
「はぁ?寝ぼけてんのも大概にしなよ?!」
推しめっちゃ怒ってる。いや、怒ってるのも最高に…
「可愛い…」
手を伸ばしたら簡単に触れられた推しの頬。
あったかい…。
そして柔らかい。
さすが10代、ピッチピチや。
はーたん、もとい私の嫁のハーラル様、天使すぎやろ。
髪もサラサラ…。
つか何この夢、触れるんだけど。
頬から手を滑らせて瞳とお揃いのピンクの石が埋め込まれたピアスに触れた。
耳の形まで綺麗とか、さすがはーたん♡♡♡
ん…??
なんか推しがめっちゃ赤くなってんだけど。
反応も神すぎじゃない?
「耳まで真っ赤だね…。照れてる姿も可愛い」
ん…?自分の声が自分じゃないように聞こえる…?
かなりのイケボ。
いやいや、アル✖️ハーが好きすぎるからって
嫁の旦那の声に聞こえるとか、もう脳内腐敗凄すぎるんでね?
「もう!知らないっ!アルなんてアルフリート殿下って呼んじゃうんだからっ」
ぬぉおおおお!
ご馳走様ですぅうううう♡
これははーたんが拗ねた時の最高ツンセリフ!
殿下呼びして距離を置いてやるって意味ですよね、はい、ご褒美あざっす!
「それは困るな…」
までが
一連のやり取りですよね!
存じあげておりますとも!!
とまぁ
ひたすらデレデレしてしまうんだけど…
とりま、まず状況把握だよね。
頬を膨らませてプンスカしてるけど部屋を出て行ってないところが面倒見の良さというか最高のツンデレというか…
最強に可愛い推しの頭を撫でてベットからとりあえず出る。
うわっ、髪の毛ふんわふわのサラサラ!猫か!猫じゃん!!
鼻血吹き出す前に退散してバスルームに向かえば
「メイド呼ぶー?」
と、はーたんのお気遣いの一言。
ツンデレなのにこーゆーとこよ。こーゆーとこ!
お気遣いの出来る賢さと配慮にますますグッときます。
あぁ…神!!
大丈夫、と微笑んでバスルームの扉を閉めた。
シャワールームをぐるりと見渡してモノの配置を確かめる。
中世的なデザインではあるものの機能性は現代的だ。
シャンプー類が陳列された棚に
浴槽とそれから…
あ、シャワーある。
うん、これなら大丈夫。使えそうかな。
間取りや装飾見ても既視感だけで確証が得られないのは設定資料集は推しのページしか熟読してなかったからなんだけども。
今更悔やんでも仕方ない。
顔さえ確認出来ればあとはどうにでもなるでしょ。…たぶん。
そう自分を鼓舞しながら
シャワーのコックを捻って何があって大丈夫なように音を水音で遮断。
意を決して鏡を見れば
白銀の髪に優しそうな目元には空色の瞳が彩られて、長い睫毛が縁取る。
「うわ、アルフリート・ヴァン・ヴィステーリアじゃん…」
私のハマってるゲームのメイン攻略対象であり、一番人気のキャラクターが鏡に映る。
うん…、the王族的な雰囲気でまさに王子。
ま、実際に王子ではあるんだけども。
肌けたシャツから覗く均等にバランス良く付いた筋肉。スーツとかが似合うのは当然だな、なんて鏡に映る姿をまじまじと見つめてしまうのは仕方ない。造形美を愛でるような感覚だ。
平らな胸、そして男性特有のもの。
思わずしっかり存在は確認しましたけども、まぁどうにかなるかな、うん。たぶん。
そんな状況から現実逃避する様に
無駄に笑みを作って手を振れば、鏡と連動していることから
恐らくはアルに憑依ないし転生ないし何かしらの形で入ってしまった事は理解した。
転生系とかの流れで言えば自覚してわーきゃー言うものなんだろうが、そこは四十の経験の差。
あと転生ものを読み尽くしたせいで王道展開に、ああ、うん的な理解力を発揮しすぎて
大きめなリアクション無しで申し訳ない。
そんなことよりも
推しが息して動いて触れられること以上の感動はないのだ。そこはわかってほしい。
まぁ、これが一瞬の夢だろうが何だろうが
とにかく推しを愛でる事を最優先したいのだ!
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