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10_姉上の代わりにデビュタント準備をするぞ
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それからすぐに屋敷に戻ってから僕が着替えて風呂を済ませている間にメイド長に母様へデビュタントの事で声をかけるよう伝えるとと母様もすっかり失念してたようで普段は屋敷で走るなんて事しないのに小走りで僕の部屋まで駆けつけてくれ、それからデビュタントのドレスと装飾品の準備を始めた。
姉様が戻ってきてもいいようにできるだけ姉様様のイメージを壊さないものを。
これだけは絶対に譲れなかった。
背丈は同じでも他のサイズは違うから調節が効くもので、デビュタントのしきたりを踏襲する。
なかなかハードルの高い内容だけど、逆に燃えちゃうよね。
デビュタントのドレスのベースは白。装飾は清楚なもの。
姉様にはきっとベールは長いものが似合うから総レースかパールのようなオーガンジーが似合いそう。
家紋の鷹をどこかに取り入れたいけど、勇ましくなり過ぎちゃうかな。
デッサン用の薄い紙に思いついた事をどんどん書いていく。
それを横から母様が覗き込み
「鷹の羽根はさすがに女の子のデビュタントには難しいかもねぇ。頭のベールにつけるとしても白い羽根の方が相応しいでしょう」
「羽根…。胸元に羽根をモチーフにした刺繍を銀糸で入れてはどうでしょう?こういった…。両翼を開いた状態で。それで真ん中にピンクゴールドのダイアを付ける…とか」
刺繍案を描きながら説明を続ける。
「それなら金糸がいいわね。その他の装飾もゴールドとピンクゴールドのダイアで揃えましょう。ブーケは白とピンクのバラでどうかしら?」
「姉様の雰囲気なら白のカサブランカとピンクのバラでも似合いそうですよね」
「それも素敵ね。ドレスの刺繍は胸元以外は光沢のある白い糸でカサブランカをモチーフにした刺繍を全体に添えましょう」
「じゃー…モチーフはカサブランカってトール様に伝えておきます」
「………?皇太子殿下に聞かれたの?」
「はい、合わせたいそうですよ」
「あらあらまぁまぁ、今までそんな事、一度もなかったのにどういう風の吹き回しでしょうねぇ」
「仲良しアピールしたいみたいですね。今は次の婚約者を考える気がなさそうでした…」
「うーん…、困ったわね。ますます婚約破棄しづらくなるわよ」
「大丈夫ですよ。トール様なら。きっと“夜明けの空”なんてなくても王族であるとご自身の能力で示してくれるはずです」
「まぁ…。随分と仲良くなったものね」
「元々、僕とトール様は仲は悪くなかったですからね。姉様と違って」
「そうだけど、まさかバレたりしてないでしょうね」
さすが母様だ。
……鋭い。
でも約束は約束だから。
「善処します。だいたいの方向性は決まりましたので、母様はこれぜーんぶサンプル集めてきて下さい」
先ほどの内容をまとめた紙を母様に手渡せば、ふふんと鼻を鳴らして自信たっぷりに笑みを作る。
「まぁ~母様の力を見くびらないで頂戴。明後日には揃えてみせるわ。ただ、貴方のイメージ似合う品質に届くかはわからないけど」
「姉様のデビュタントですからね。手抜きなんて許しません!」
「どうやらファッションに関する事業も始めた方が良さそうねぇ」
「え、それやりたい…」
「いいんじゃなぁい?自分のはもちろんだけど昔からベスのドレスやアクセサリーは貴方が選んでたし。今回で良い職人がいたらすぐに引き抜きなさい。母様がなんとかするわ」
「さすが母様。たのもしー」
「明日は早く返ってきなさいね。揃えられるものは揃えておくから」
「はーい」
ひらひらと手を振る母様を見送ってから椅子に深く腰を掛ける。
細かいところは決まってないから、ベールの素材はどちらがいいのかとか、ベールの上につける飾りも考えないといけないし細かいものがたくさんあるのだけれど、そこら辺はサンプルを見ながら考えればいいか。
きっと似合うものを作るから
だから姉様そろそろ帰ってきてよ…
ほんのり願望じみた言葉が出てしまうけれど、せっかくなら着て欲しい。
だいぶ回らなくなってきた頭をリセットするためによろよろとベットに向かい、そのままダイブした。
考える事はまだあるけれど、今日は動き回ったせいで体力ももう限界だった。
「今日も楽しかったな…」
トール様と話しながら何かを計画するのはとても楽しい。
いつだったか子供だけを集めたお茶会を開いた時も一緒にアレコレ考えたっけ。
何日も打ち合わせして、レクレーション的なものも取り入れて…。
その時は姉様も一緒で、姉様は遊びのことしか考えてくれなかったなぁ。
クイズ大会もオセロ大会もどっちも盛り上がってトール様も姉様も楽しそうにしていたなぁ。
あんな風に2人が笑っていられればいいな。
僕に出来ることは少ないけれど、馬車道の整備の案とかもう少し考えを纏めて提案できるようにした方がいいかも。
うちの領土みたいに高架橋を作って、その下に入るテナントとかも立ち退いた人たちが優先して入れるようにしてあげたら少しは計画が進むのかな。
今の領地の状況を父様に聞いて、そこも合わせて報告したら良いかもしれないなぁ。
うわー、まだまだやる事がたくさんある。
考え出したら止まらなくなるから、今日はもう寝ないと。
明日がいい日になりますように。
姉様が戻ってきてもいいようにできるだけ姉様様のイメージを壊さないものを。
これだけは絶対に譲れなかった。
背丈は同じでも他のサイズは違うから調節が効くもので、デビュタントのしきたりを踏襲する。
なかなかハードルの高い内容だけど、逆に燃えちゃうよね。
デビュタントのドレスのベースは白。装飾は清楚なもの。
姉様にはきっとベールは長いものが似合うから総レースかパールのようなオーガンジーが似合いそう。
家紋の鷹をどこかに取り入れたいけど、勇ましくなり過ぎちゃうかな。
デッサン用の薄い紙に思いついた事をどんどん書いていく。
それを横から母様が覗き込み
「鷹の羽根はさすがに女の子のデビュタントには難しいかもねぇ。頭のベールにつけるとしても白い羽根の方が相応しいでしょう」
「羽根…。胸元に羽根をモチーフにした刺繍を銀糸で入れてはどうでしょう?こういった…。両翼を開いた状態で。それで真ん中にピンクゴールドのダイアを付ける…とか」
刺繍案を描きながら説明を続ける。
「それなら金糸がいいわね。その他の装飾もゴールドとピンクゴールドのダイアで揃えましょう。ブーケは白とピンクのバラでどうかしら?」
「姉様の雰囲気なら白のカサブランカとピンクのバラでも似合いそうですよね」
「それも素敵ね。ドレスの刺繍は胸元以外は光沢のある白い糸でカサブランカをモチーフにした刺繍を全体に添えましょう」
「じゃー…モチーフはカサブランカってトール様に伝えておきます」
「………?皇太子殿下に聞かれたの?」
「はい、合わせたいそうですよ」
「あらあらまぁまぁ、今までそんな事、一度もなかったのにどういう風の吹き回しでしょうねぇ」
「仲良しアピールしたいみたいですね。今は次の婚約者を考える気がなさそうでした…」
「うーん…、困ったわね。ますます婚約破棄しづらくなるわよ」
「大丈夫ですよ。トール様なら。きっと“夜明けの空”なんてなくても王族であるとご自身の能力で示してくれるはずです」
「まぁ…。随分と仲良くなったものね」
「元々、僕とトール様は仲は悪くなかったですからね。姉様と違って」
「そうだけど、まさかバレたりしてないでしょうね」
さすが母様だ。
……鋭い。
でも約束は約束だから。
「善処します。だいたいの方向性は決まりましたので、母様はこれぜーんぶサンプル集めてきて下さい」
先ほどの内容をまとめた紙を母様に手渡せば、ふふんと鼻を鳴らして自信たっぷりに笑みを作る。
「まぁ~母様の力を見くびらないで頂戴。明後日には揃えてみせるわ。ただ、貴方のイメージ似合う品質に届くかはわからないけど」
「姉様のデビュタントですからね。手抜きなんて許しません!」
「どうやらファッションに関する事業も始めた方が良さそうねぇ」
「え、それやりたい…」
「いいんじゃなぁい?自分のはもちろんだけど昔からベスのドレスやアクセサリーは貴方が選んでたし。今回で良い職人がいたらすぐに引き抜きなさい。母様がなんとかするわ」
「さすが母様。たのもしー」
「明日は早く返ってきなさいね。揃えられるものは揃えておくから」
「はーい」
ひらひらと手を振る母様を見送ってから椅子に深く腰を掛ける。
細かいところは決まってないから、ベールの素材はどちらがいいのかとか、ベールの上につける飾りも考えないといけないし細かいものがたくさんあるのだけれど、そこら辺はサンプルを見ながら考えればいいか。
きっと似合うものを作るから
だから姉様そろそろ帰ってきてよ…
ほんのり願望じみた言葉が出てしまうけれど、せっかくなら着て欲しい。
だいぶ回らなくなってきた頭をリセットするためによろよろとベットに向かい、そのままダイブした。
考える事はまだあるけれど、今日は動き回ったせいで体力ももう限界だった。
「今日も楽しかったな…」
トール様と話しながら何かを計画するのはとても楽しい。
いつだったか子供だけを集めたお茶会を開いた時も一緒にアレコレ考えたっけ。
何日も打ち合わせして、レクレーション的なものも取り入れて…。
その時は姉様も一緒で、姉様は遊びのことしか考えてくれなかったなぁ。
クイズ大会もオセロ大会もどっちも盛り上がってトール様も姉様も楽しそうにしていたなぁ。
あんな風に2人が笑っていられればいいな。
僕に出来ることは少ないけれど、馬車道の整備の案とかもう少し考えを纏めて提案できるようにした方がいいかも。
うちの領土みたいに高架橋を作って、その下に入るテナントとかも立ち退いた人たちが優先して入れるようにしてあげたら少しは計画が進むのかな。
今の領地の状況を父様に聞いて、そこも合わせて報告したら良いかもしれないなぁ。
うわー、まだまだやる事がたくさんある。
考え出したら止まらなくなるから、今日はもう寝ないと。
明日がいい日になりますように。
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