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07.姉上の思い出のために僕は暗躍する
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リンゴ飴にチョコバナナ、クレープにフルーツジュースに殿下のお気に入りの牛串、気がついたら両手いっぱいの食べ物を抱えて僕らは公園のベンチに腰をかける。
「その量、全部食べられる?」
「余ったら持って帰ります…」
「お腹とか壊さないでよ?エリザベートに俺が怒られかねないから」
「…姉様は今はいませんよ?」
「彼女の事だから、リューの話となれば何処からでも聞きつけて苦情を言いかねないところがあるからなぁ」
「それは否定できないですね」
殿下が苦悩しつつ頭を抱えている姿は滅多に見れないから、ちょっと面白い。
リンゴ飴のパリパリという飴の食感とりんごの歯触りを楽し見ながら殿下を眺めていると僕のリンゴ飴を取り上げて殿下が口に運ぶ。
そんなに年齢変わらない筈なのに何故か不釣り合いに見える様子に思わず笑ったら逆に不思議そうな顔をされてしまった。
「美味しいですか?」
「うーん…甘いね」
「トール様、甘いもの苦手でしょうに。なんで食べたんですか?」
「…リューが夢中になって食べてるから美味しいのかと思って」
「ははっ、それ昔もおんなじこと言ってましたよ」
「あの時も甘かった…。というか、これ甘さが増してない?」
「まさか、変わらずに美味しいですよ」
苦手な癖にいつも僕のを奪って半分食べてしまう殿下。
殿下が食べかけのリンゴ飴を奪い返して残りは僕が食べた。
実は僕のをいつも勝手に食べちゃう殿下に最初は怒っていたのだけれど、殿下のこの行動にも意味があって、全部は食べきれない僕がたくさんの種類を食べれるように手伝ってるんだ、と姉様から教えて貰ってから、あまり怒る気にもならなくなってしまった。
食べ終わったリンゴ飴の棒を空の袋に片付けて、次はチョコバナナを口にする。
殿下も食べるかな?と思って視線を向けると徐に視線が逸らされてしまった。
……何かあったのかな?
「王宮から郊外へ続く馬車通りはあちらの方に建設するんでしたっけ?」
「…へ?……あー、いや。さっき通ってきた屋台通りが連なる広場のあたりだな。そこから王城とアカデミーを結んで真っ直ぐに伸びた道路になる予定だよ」
「えぇっ?!じゃあの屋台ぜんぶ無くなっちゃうんですか?!」
「…予定ではそうなるね」
少し寂しそうに殿下は呟いた。
「僕は断固反対です!!!僕たちの思い出もぜんぶなくなっちゃうって事じゃないですか!!」
それはとても悲しい。
姉様との思い出も、殿下との思い出も全部全部大切なのに!
じわりの涙が浮かぶ。
姉様の大切な思い出と。
これから一国を担っていく責務がある殿下との思い出は
立場や役割が変われば今後は育む事ができないものなんだって僕だってちゃんと分かってる。
だから大切にしたいのに。
…トール様は違うの?
「…俺も同じ気持ちだよ。だから他にいい案はないかって思って視察も兼ねてリューをデートに誘ったんだよ」
堪えきれず溢れた涙をひとすくいしてトール様が僕の頬を撫でた。
「…じゃあ、僕も手伝います!!王都の地形には詳しくないけれど一緒に考える事はできますから」
「リューならそう言ってくれると思ってたよ。君の力を貸してもらえる?」
「もちろん!」
そうと決まればトール様の手を取って馬車へと向かう。
ちょっとお行儀悪いけど、買ったものは食べながら移動すればいい。
計画を地図に落とし込んだものを見せて貰いながら、実際の場所を通って貰った。
「うーん、平民地区はかなり生活圏にありますね。退いて貰うにしても、これから苦労するのでは?」
「そこが1番のネックでね。無理矢理、議会を通しても平民達の同意を得られないと進められないんだよ」
「…でしょうね。平民の生活なんて考えてる貴族なんて一握り…いや、砂金を探すほどかもね」
「相変わらず手厳しいな。でも実際その通りだから、この計画が議会を通ってしまったんだよね」
「ルートを変えるにしてもそれなりの説得力が必要ですし。それに平民を納得させるだけの案も用意しないとですよね」
「課題は山積みだから、まずはルート変更案から組み立ていくつもりだよ」
「…なるほど。一つ気になる点があるのでアカデミーに近い市街地の門の方に向かって頂いてもいいでしょうか?」
「仰せのままに。私のお姫様」
チュッ
──────…っ!!!!
今度は目尻のあたりにキスされた!!!
真っ赤になってるのが分かるくらい熱を持った頬を抑えてトール様から距離を取る。
口をはくはくとさせている僕に全く気にした様子もなく達者に指示を出す。
なんでもないような素振りのトール様にちょっとイラッとして
「僕はオヒメサマなんかじゃないし!男の子だし!!」
って負け惜しみ地味た口調でぽつりと呟けば、盛大に笑われた。
…悔しい。
トール様が見直しちゃうような凄い案を提案して揶揄ったこと謝らせてやるんだから!!
固い決意の元、計画図と地形を睨めっこしているうちに門に着いてしまっていた。
さっきまで睨めっこしていた大きな紙を二つ握り締めて僕は目的の場所へズンズンと足早に前へ進んだのだった。
「その量、全部食べられる?」
「余ったら持って帰ります…」
「お腹とか壊さないでよ?エリザベートに俺が怒られかねないから」
「…姉様は今はいませんよ?」
「彼女の事だから、リューの話となれば何処からでも聞きつけて苦情を言いかねないところがあるからなぁ」
「それは否定できないですね」
殿下が苦悩しつつ頭を抱えている姿は滅多に見れないから、ちょっと面白い。
リンゴ飴のパリパリという飴の食感とりんごの歯触りを楽し見ながら殿下を眺めていると僕のリンゴ飴を取り上げて殿下が口に運ぶ。
そんなに年齢変わらない筈なのに何故か不釣り合いに見える様子に思わず笑ったら逆に不思議そうな顔をされてしまった。
「美味しいですか?」
「うーん…甘いね」
「トール様、甘いもの苦手でしょうに。なんで食べたんですか?」
「…リューが夢中になって食べてるから美味しいのかと思って」
「ははっ、それ昔もおんなじこと言ってましたよ」
「あの時も甘かった…。というか、これ甘さが増してない?」
「まさか、変わらずに美味しいですよ」
苦手な癖にいつも僕のを奪って半分食べてしまう殿下。
殿下が食べかけのリンゴ飴を奪い返して残りは僕が食べた。
実は僕のをいつも勝手に食べちゃう殿下に最初は怒っていたのだけれど、殿下のこの行動にも意味があって、全部は食べきれない僕がたくさんの種類を食べれるように手伝ってるんだ、と姉様から教えて貰ってから、あまり怒る気にもならなくなってしまった。
食べ終わったリンゴ飴の棒を空の袋に片付けて、次はチョコバナナを口にする。
殿下も食べるかな?と思って視線を向けると徐に視線が逸らされてしまった。
……何かあったのかな?
「王宮から郊外へ続く馬車通りはあちらの方に建設するんでしたっけ?」
「…へ?……あー、いや。さっき通ってきた屋台通りが連なる広場のあたりだな。そこから王城とアカデミーを結んで真っ直ぐに伸びた道路になる予定だよ」
「えぇっ?!じゃあの屋台ぜんぶ無くなっちゃうんですか?!」
「…予定ではそうなるね」
少し寂しそうに殿下は呟いた。
「僕は断固反対です!!!僕たちの思い出もぜんぶなくなっちゃうって事じゃないですか!!」
それはとても悲しい。
姉様との思い出も、殿下との思い出も全部全部大切なのに!
じわりの涙が浮かぶ。
姉様の大切な思い出と。
これから一国を担っていく責務がある殿下との思い出は
立場や役割が変われば今後は育む事ができないものなんだって僕だってちゃんと分かってる。
だから大切にしたいのに。
…トール様は違うの?
「…俺も同じ気持ちだよ。だから他にいい案はないかって思って視察も兼ねてリューをデートに誘ったんだよ」
堪えきれず溢れた涙をひとすくいしてトール様が僕の頬を撫でた。
「…じゃあ、僕も手伝います!!王都の地形には詳しくないけれど一緒に考える事はできますから」
「リューならそう言ってくれると思ってたよ。君の力を貸してもらえる?」
「もちろん!」
そうと決まればトール様の手を取って馬車へと向かう。
ちょっとお行儀悪いけど、買ったものは食べながら移動すればいい。
計画を地図に落とし込んだものを見せて貰いながら、実際の場所を通って貰った。
「うーん、平民地区はかなり生活圏にありますね。退いて貰うにしても、これから苦労するのでは?」
「そこが1番のネックでね。無理矢理、議会を通しても平民達の同意を得られないと進められないんだよ」
「…でしょうね。平民の生活なんて考えてる貴族なんて一握り…いや、砂金を探すほどかもね」
「相変わらず手厳しいな。でも実際その通りだから、この計画が議会を通ってしまったんだよね」
「ルートを変えるにしてもそれなりの説得力が必要ですし。それに平民を納得させるだけの案も用意しないとですよね」
「課題は山積みだから、まずはルート変更案から組み立ていくつもりだよ」
「…なるほど。一つ気になる点があるのでアカデミーに近い市街地の門の方に向かって頂いてもいいでしょうか?」
「仰せのままに。私のお姫様」
チュッ
──────…っ!!!!
今度は目尻のあたりにキスされた!!!
真っ赤になってるのが分かるくらい熱を持った頬を抑えてトール様から距離を取る。
口をはくはくとさせている僕に全く気にした様子もなく達者に指示を出す。
なんでもないような素振りのトール様にちょっとイラッとして
「僕はオヒメサマなんかじゃないし!男の子だし!!」
って負け惜しみ地味た口調でぽつりと呟けば、盛大に笑われた。
…悔しい。
トール様が見直しちゃうような凄い案を提案して揶揄ったこと謝らせてやるんだから!!
固い決意の元、計画図と地形を睨めっこしているうちに門に着いてしまっていた。
さっきまで睨めっこしていた大きな紙を二つ握り締めて僕は目的の場所へズンズンと足早に前へ進んだのだった。
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