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第四章:サイコロ振ったら家買います
馬鹿共の真剣勝負
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ラジオ番組『私のポカ様』では、言い間違いのコーナーが続いていた。
重「言い間違いねぇ。そう言えばこの間さ、井戸端三人衆に捕まっちゃった時に‥」
渡「内海さんたちに?」
重「そうそう。そしたら倉科さんが『そういえば○○さんとこの奥さん発情しちゃったらしいわよぉ』なんて言うんだもん」
渡「アハハハッ! 発情は…… 発情はマズイね。まぁまぁその結果、蒸発しちゃったのかもしれないけど」
重「蒸発と発情を言い間違えるってさぁ。もう四人で大笑いしちゃったよ」
渡「そうそう、椎名さんも言い間違いしてたよ」
重「なんてよ?」
渡「やっぱり人員を増やしていかないと、なんて話してたらさぁ『正規と派遣ねぇ。でもデスクワークならパントマイムで良いんじゃ‥ 違う違う! パートタイム!』って言ったもんだから修がスグに言ったよ。『パントマイムはお前だ!』って」
重は大口を開けて笑い始める。
重「やるなぁ椎名さんも。ピエロやってる椎名さんにしか言えない言い間違えだもんなぁ。修の間髪入れないツッコミが目に浮かぶよ」
渡「子供の頃からそうだけど、修って清々しくツッコむよね」
重「よくもまぁパッと切り返せるもんだよ。ちょっとはその頭の回転力を勉強に使ったら良いのに」
渡「本人のいないとこで言ったら悪口になるって言うけど、大先生って今言ったことをわざわざ本人に言うよね」
重「言う言う。裏表のない私は言う言う! 嫌われようが何だろうが、本人の為になるようなことは言う言う! ただ大抵の場合、何を言ってやろうか忘れちゃう」
渡「……もう、基本形のバカだよね」
重のバカの形が基本形と判明したころ、昼食を終えた修は事務所に戻ってきていた。
修「はぁーあ、油差さねぇとキコキコうるせぇなぁ」
自分の座る事務イスに文句を言いながら、修は自分で入れたお茶をすすった。
修「へぇーっと、うーん暇だなぁ。今週来週はてんで仕事が入ってねぇからなぁ」
頬杖をついた修は壁の予定表をぼんやり眺める。
修「なのに再来週からは地獄のように忙しいんだよなぁ」
綺麗なままの今週来週の欄とは違い、再来週以降は欄が足らないほどの予定が組まれていた。
修「としてもだ、今週来週にもう少し依頼を受けておかねぇと、今月の儲けが芳しくない。つーことはだ……」
修は背もたれに寄りかかり、事務イスをきしませて考えにふけった。持ち前の想像力と発想力を駆使し、今、店の為に出来ることを考えていたのだった。
修「……はいはい、やってみるか。チラシ代広告代もバカになんねぇしな」
修は大きな黄色の電話帳を取り出すと、ペラペラめくり、近くの電話に手を伸ばした。
修「……もしもし。突然の電話申し訳ありません。私、若松市で何でも屋をやっております久石というものですが、何かお困りごとはございませんでしょうか?」
修が電話を掛けた先はある商店街の事務所。依頼を受ける代わりに、商店街で広告をさせてもらおうということだ。近くの二つの商店街はすでに広告・連携をさせてもらっているため、違う商店街に電話を掛けたのだった。
修「あ、あの…… もしもし?」
電話に出た男の声は、小さく震えていた。
男『う、ウチの妻が、家内が、嫁が女房が女王様がぁ! 家を出ていってしまったんです! 浮気をしていたんです妻が! 男と逃げてしまったんです……』
修「えーっと……」
男『僕がいけないんだ。口を開けば商店街の未来のことばかり。仕事仕事の男。でも僕が愛しているのは仕事じゃない、朱美、君なんだ! 君は僕に微笑んでくれる唯一の女性、命を掛けられる、いや、僕の命より大切な…… 僕の命よりぃ……』
修「あ、どうぞ、お大事に」
修は面倒に絡みつかれる前に電話を切った。
修「……気を取り直して」
修は小規模ながら最近人気の出ているアウトレットパークの事務所に電話を掛けた。
修「もしもし。突然の電話申し訳ありません。私、若松市で何でも屋をやっております久石というものですが、何かお困りごとはございませんでしょうか?」
修はアウトレットパークに電話をしたつもりでいたが、番号を押し間違えて別の店に電話をしてしまっていた。それに気が付かない修が声を待っていると、悲しげな女性の声が聞こえてきた。
女性『私がいけないんです。夫が夢を託す事業の資金集めとはいえ、バカな男に騙された私が… 私がいなくなったら、夫は、商店街は…… うぅ……』
修は自分の運命というやつに、恨みを抱くのはまだ早いと思っていた。
修「あ、あの、つかぬ事を伺いますが、お名前は?」
女性『えっ、名前ですか? 源氏名は‥』
修「あ、いえ、あの…… 本名は朱美さんですか?」
女性『どうして私の本名を?!』
次の瞬間、朱美のキャッという声が聞こえたかと思うと、ドスのきいた男の声が受話器から聞こえてきた。
男『店の電話を勝手に使うんじゃねぇ!』
その後、電話は乱暴に切られてしまった。だが、修はまだ運命というやつを信じ、先程の商店街に電話を掛けた。
修「あ、もしもし。先程、電話を掛けた何でも屋で‥」
男『あぁっ! 何でも屋さん! さっきはどうして電話を切っちゃったんですかぁ!』
悲壮感漂う男の叫び声が、修の耳をつんざく。
修「いえ、あのですね、偶然の偶然で、奥様の朱美さんを見つけまして……」
男『えぇっ!? 朱美を!? この短時間で!? しかも名前だけで!?』
修「いえ、あくまで偶然といいますか、もしかしたら違うかもしれ‥」
男『いいです! それでもいいです! どこにいるんですか朱美は!』
修「えーっとですね……」
修は電話の履歴を確認すると、大きな黄色の電話帳に指を当てて、間違い電話をしてしまった店の住所を男に教えてやる。
男『そこに朱美がいるんですね!?』
修「おそらくですよ?! 何でも、夫の事業の為の資金集め、商店街がどうとか、男に騙されたとか‥」
男『やっぱり! 朱美は、朱美は俺なんかの為に…… 何でも屋さん、ありがとうございました!』
修「あの、ちょっと、一人で行っちゃダメですよ! 万が一を考えて警‥」
男はすでに電話を切っていた。修はあれだけ信じていた運命というやつに殺意を覚えた。人生最初で最後の殺意を。
そのころ、重と渡は最後の配達先であるフミの家に到着していた。古さの中に味わいがある平屋で、七十六歳になるフミは一人暮らしをしている。
重「フミおばあちゃーん! 俺です、重でーす!」
庭の垣根からフミの姿が見えた重は、いつもより若い声を出した。
フミ「あらまぁ、いつもご苦労様。どうぞどうぞ」
優しく微笑むフミおばあちゃんは、縁側で正座をして二人を迎えた。あずき色の座布団にちょこんと座って湯呑みを持つ様子は、おばあちゃんそのものだった。
重「美味しいお昼ごはんです!」
重は一枚の品書きを手に、草花の咲く庭へと入っていった。
フミ「重ちゃんは元気ねぇ」
渡「こんにちは」
重の後に続いた渡が、爽やかな笑顔を見せる。
フミ「こんにちは。渡ちゃんは涼やかで良いわねぇ。それで重ちゃん、今日のお弁当は何ですか?」
そう聞かれると、渡は弁当を優しく手渡し、重が品書きを読み始めた。
重「今日はですね、ホウレンソウのおひたし、ワカメときゅうりの酢の物。ブリの照り焼きに里芋の煮っ転がし、山菜おこわとツボ漬け……」
渡「それにオルニチンたっぷりのシジミの味噌汁です」
渡は味噌汁のカップを取り出し、こぼさぬよう縁側へ置いた。
フミ「まぁー、どれも美味しそうねぇ。重ちゃんもそう思うでしょう?」
重「もちろんですよ! 山菜おこわなんて最高ですよ」
フミ「おこわ美味しいわよねぇ。渡ちゃんは?」
渡「おひたしですね。好きなんですよ。ホウレンソウとかセリとか」
フミ「セリも美味しいわねぇ」
フミは食事をしながら、いつもと同じように二人と面白おかしく会話をした。穏やかな時間がスズメのさえずりと共に流れ、時折吹く微風に、庭の竹の葉がさらさらと奏で始める。
縁側に座り、春の陽を浴びる三人は、本当のおばあちゃんと孫のようであった。
フミ「…………………」
楽しく話をしていたフミだったが、一瞬、寂しげな表情を浮かべた。渡と重はその一瞬にもちろん気がついた。、
重「……どうかしましたか?」
フミ「実はねぇ、近々、ここを離れるの……」
重「え? 引っ越しですか!?」
フミ「そうなの。娘夫婦が一緒に暮らそうって言ってくれてるのよ」
重「娘さんご夫婦が?」
微笑み静かに頷くフミ。その微笑みには嬉しさと悲しさが混ざっており、聞きたいことを飲み込んだ重は、黙って視線をそらすと、どこを見るでもなく考え出した。
渡「確か……」
黙っていた渡が縁側から立ち上がった。
渡「娘さんは高知にお住いでしたよね? えーっと、確か安芸市……」
フミ「よく覚えてるわねぇ!」
渡「こう見えても記憶力はあるんですよ。はっはっは……」
渡も笑った後は黙り込み、フミが入れてくれたお茶をすするだけだった。
重「そうだ!!」
渡「な、なんだよ大先生! 急に大きな声出さないでよ!」
重「ごめんごめん。いやさ、いいこと思いついたんだよ!」
渡「何?」
重「送別会だよ、送・別・会!」
渡「あっ、いいねぇ! 仲のいい人集めてさ!」
重「そうそう! それでフミおばあちゃん、いつ頃までこっちに……」
フミ「今月末かしらねぇ、娘夫婦のほうもまだ色々と準備があるようだし。もしかしたら来月末になるかもしれないわねぇ」
重「そうですか。ま、どのみち早めに声を掛けて日程を決めておかないと…… ん?」
渡「お?」
二人のポケットが同時に震え始めた。それはホームセンターで支払いをしていた知哉、椎名も同じことだった。
知哉「あれ? 椎名さんもですか?」
椎名「うん…… あ、修君からだね」
知哉「あーっと、『野暮用で少し外出ます』だぁ?」
椎名「野暮用? なにがあったんだろ?」
知哉「アイツの事ですから、こっちのことじゃないと思いますけど…」
知哉は小指を立てた。
椎名「そうだねぇ、知哉君じゃあるまいし」
知哉「やだなぁ椎名さん。硬派な俺が、そんなことあるわけが無いじゃないですか」
椎名「ゴメンゴメンそうだよね。知哉くんはコレだもんね?」
椎名は親指と小指を立てた。
知哉「…………え、アロハ?」
それから数時間後。本日の業務を全て終えた何でも屋は、あと少しで閉店時間を迎えようとしていた。
知哉「まだ帰ってこねぇよ、修のやつ。もうちょいで時間だぜ?」
重「まぁ、時間には人一倍厳しい修のことだから、そろそろ帰って来るんじゃない?」
ソファーに座って話す二人はコーヒーを飲み、事務イスに腰掛ける渡と椎名は玄米茶を飲んでいた。
椎名「それにしても野暮用ってのはなんだろうね?」
渡「なんでしょうかねぇ? まぁ、修のことですから、不真面目なことじゃないと思いますけど」
渡は何か分からないものかと、固定電話の直近の履歴を確認した。
渡「うーん、知らない番号……」
渡はスマートフォンを取り出すと、番号を検索に掛けた。
渡「商店街とキャバクラに電話を掛けてますね修は」
椎名「キャバクラ!? 修君が!?」
渡「商店街の事務所に掛けて、キャバクラに掛けて、また商店街に掛けてますねぇ…」
椎名「キャバクラを商店街事務所で挟んだの!? 修君が!?」
渡「そうなんですよ、修が挟むなんて信じられない! じゃないんですよバカ! なにボケをかましてるんですか」
椎名「丁寧語の後にバカをもってくるあたりが、僕には丁度良いんだよね」
椎名の台詞に渡が返そうとしたが、いつの間にか帰ってきていた修に先を越された。
修「ったく、何が丁度良いんだか…… 教授さん、バカに丁寧語使う必要は無いぞ」
何事もなかったかのような態度で、修は事務所の入り口に立っていた。野暮用だなんだと心配を掛けておきやがってと、ソファーに座っていた二人はワザとらしい声を出す。
重「おさむぅ!」
知哉「おさむぅ!」
大げさに驚いたフリを見せる二人は、立ち上がって修に近づいていく。修は呆れ笑いを堪え、二人から視線をそらした。
知哉「ちょっ、一体全体、どこで油を売っていたんだよ。説明頼む」
重「スマホがある今時、連絡しないとかあり得ないから。信じられないんだが」
修の嫌がる言葉や話し方で、二人は嫌らしく詰め寄っていく。
修「やめろよ、それ……」
重「心配かけといてエラソじゃね?」
知哉「既読で返さないとか、意味分かんねぇしぃ?」
修「うるせぇってんだよ! 意味分かんねえのはお前だ! 最後の既読のやつは今は関係ねぇだろ!」
修は二人の間を強引に通ると、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、自分の事務イスに座った。
渡「それで?」
修「ん?」
渡「ん? じゃないんだよ。午後はまるまる何をやってたのかって聞いてんの」
返答次第では刀を抜くぞと言わんばかりの渡の声に、修は苦笑いで答えた。
修「あっ、えー、人助けと何でも屋の宣伝活動をしていました。どちらも、えぇ、事なきを得まして、どうも……」
渡「人助けに宣伝活動?」
修「いえ、別に掘り下げるような事ではないですから……」
ポケットから手を出して姿勢を正した修を見た知哉と重は、なぜだか急いで自分たちの事務イスに座ると、揃って姿勢を正した。
重「いえね修さん、アタシたちも問い詰めてやろうとかいう気持ちでいるわけじゃないの。ただね、やれ野暮用だ、やれ人助けだ宣伝だと言われて、挙句に『掘り下げるような事ではないですから』と来られちゃ、伊勢や日向の物語。なんの事だかサッパリでしょう?」
知哉「アタシたちと修さんは金石の交わり。遠慮なしに、気兼ねなく話してちょうだいな」
長引かせれば長引かせるほど損をする。修はそう感じ、逆らうことなく説明を始めた。
修「……商店街で広告とか業務提携をさせてもらえないか電話したらだ、声色的に俺達ぐらいの男が電話に出て妻がいなくなったっていうんだよ。こりゃ下手に首を突っ込むとお互いに良いことはねぇと思って『お大事に』って電話を切ったんだよ」
それから修は、事の顛末まで流れるようにして話した。それはまるで叩き売りの口上のようだった。
渡「それじゃ、お巡りさんも来てくれて、全て丸く収まった訳だ」
修「そうそう。再会を喜んで夫婦は幸せそうに抱き合って、俺はその商店街にポスターだチラシだを配って張って。ま、そんな感じだよ」
渡「なるほどなるほど。丸く収まらなかったらどうすんだよ!」
修「な、急に大声を出すなよ!」
渡「まったく、そんな状況をよくもまぁ『野暮用』だけで済ませられるね! 警察に連絡したのは良いけど、せめて俺達と合流してから動き出しなさいよ!」
修「そう思ったけど、夫婦が心配だったからよ」
渡「こっちだって心配になるでしょ! 野暮用って言われたっきり連絡が取れないんじゃ!」
修「悪かったよ。今度からは無茶しねぇよ」
渡「まったく、頼むよもう」
二人の話が終わったその時、大人しく見守っていた椎名が、待っていましたと声を張った。
椎名「はーい! はーい!!」
突然はしゃぎ出した椎名を四人は睨むようにして見た。だが椎名はお構いなしに威勢よく声を張り上げた。
椎名「修君の話も終わり、業務時間も丁度よく終わり、明日は休日! と来れば?!」
嬉しそうな椎名は、満面の笑みを一人ずつに見せては、手に持った透明なマイクを突き出した。
椎名「はい! と来れば? と来れば?!」
修「ピエロ狩り」
椎名「この時期じゃまだ枝に花も咲いてないよ! はい! と来れば? と来れば?!」
修の口撃をあっさりかわし、しつこく繰り返し続ける椎名に、四人は根負けをしてクスクスと笑い始めてしまった。
知哉「何ですかもう」
椎名「いいから、早く早く! 時間が勿体無いよ!」
知哉「今こうしてる時間のほうが勿体無いですよ!」
重「おっ、バカが珍しく‥」
知哉「ケンカ売ってんのか!?」
重「売ってねぇよ、やんのかコラ!」
知哉「売ってるじゃ‥」
重「はいはい。椎名さん、早く言ってくださいよ。と来れば、の先を」
椎名はなんで分からないのかと、じれったい顔をして言った。
椎名「修君の話も終って、業務時間も丁度よく終って、明日は休日! と来ればボードゲームに決まってるじゃない!」
椎名の言葉を聞いた修は、勢い良くイスから立ち上がった。
修「謀怒解威武!?」
低く分厚い声を出す修。
渡「いま漢字にして言ったろ?」
修「しょうがねぇやな!」
握った拳を突き出し、たくましい筋肉を浮き上がらせる修。
修「知哉! 昨日ピエロに受けた借り、返してやろうじゃねぇか!」
知哉「あぁ、たっぷり利子をつけてな!」
昨日の悔しさを思い出した知哉は、修に応えて立ち上がる。
重「なにが利子だよ。二人とも昨日は突っ走って自滅しただけじゃない。ねぇ教授さん?」
渡「やってやる……」
重「はい?」
渡「やってやるぞ! 今日の俺に詰めの甘さは無い! 最後の最後でピエロに捲くられるような事は無い!」
重「ムキになっちゃってまぁ……」
渡「大先生は銀行役だったからそんな事が言えるんだよ!」
椎名「そうだよ重君。それに今日は『是、人生なり』っていうボードゲームだから、銀行役とか無いんだよ?」
重「………ポンコツの皆さんに、私の権力・知力・強運をお見せしましょう」
いい年をした大人五人が睨み合うと、空気はザワつき始めた。これから始める熾烈を極めた男たちの戦いに。
重「言い間違いねぇ。そう言えばこの間さ、井戸端三人衆に捕まっちゃった時に‥」
渡「内海さんたちに?」
重「そうそう。そしたら倉科さんが『そういえば○○さんとこの奥さん発情しちゃったらしいわよぉ』なんて言うんだもん」
渡「アハハハッ! 発情は…… 発情はマズイね。まぁまぁその結果、蒸発しちゃったのかもしれないけど」
重「蒸発と発情を言い間違えるってさぁ。もう四人で大笑いしちゃったよ」
渡「そうそう、椎名さんも言い間違いしてたよ」
重「なんてよ?」
渡「やっぱり人員を増やしていかないと、なんて話してたらさぁ『正規と派遣ねぇ。でもデスクワークならパントマイムで良いんじゃ‥ 違う違う! パートタイム!』って言ったもんだから修がスグに言ったよ。『パントマイムはお前だ!』って」
重は大口を開けて笑い始める。
重「やるなぁ椎名さんも。ピエロやってる椎名さんにしか言えない言い間違えだもんなぁ。修の間髪入れないツッコミが目に浮かぶよ」
渡「子供の頃からそうだけど、修って清々しくツッコむよね」
重「よくもまぁパッと切り返せるもんだよ。ちょっとはその頭の回転力を勉強に使ったら良いのに」
渡「本人のいないとこで言ったら悪口になるって言うけど、大先生って今言ったことをわざわざ本人に言うよね」
重「言う言う。裏表のない私は言う言う! 嫌われようが何だろうが、本人の為になるようなことは言う言う! ただ大抵の場合、何を言ってやろうか忘れちゃう」
渡「……もう、基本形のバカだよね」
重のバカの形が基本形と判明したころ、昼食を終えた修は事務所に戻ってきていた。
修「はぁーあ、油差さねぇとキコキコうるせぇなぁ」
自分の座る事務イスに文句を言いながら、修は自分で入れたお茶をすすった。
修「へぇーっと、うーん暇だなぁ。今週来週はてんで仕事が入ってねぇからなぁ」
頬杖をついた修は壁の予定表をぼんやり眺める。
修「なのに再来週からは地獄のように忙しいんだよなぁ」
綺麗なままの今週来週の欄とは違い、再来週以降は欄が足らないほどの予定が組まれていた。
修「としてもだ、今週来週にもう少し依頼を受けておかねぇと、今月の儲けが芳しくない。つーことはだ……」
修は背もたれに寄りかかり、事務イスをきしませて考えにふけった。持ち前の想像力と発想力を駆使し、今、店の為に出来ることを考えていたのだった。
修「……はいはい、やってみるか。チラシ代広告代もバカになんねぇしな」
修は大きな黄色の電話帳を取り出すと、ペラペラめくり、近くの電話に手を伸ばした。
修「……もしもし。突然の電話申し訳ありません。私、若松市で何でも屋をやっております久石というものですが、何かお困りごとはございませんでしょうか?」
修が電話を掛けた先はある商店街の事務所。依頼を受ける代わりに、商店街で広告をさせてもらおうということだ。近くの二つの商店街はすでに広告・連携をさせてもらっているため、違う商店街に電話を掛けたのだった。
修「あ、あの…… もしもし?」
電話に出た男の声は、小さく震えていた。
男『う、ウチの妻が、家内が、嫁が女房が女王様がぁ! 家を出ていってしまったんです! 浮気をしていたんです妻が! 男と逃げてしまったんです……』
修「えーっと……」
男『僕がいけないんだ。口を開けば商店街の未来のことばかり。仕事仕事の男。でも僕が愛しているのは仕事じゃない、朱美、君なんだ! 君は僕に微笑んでくれる唯一の女性、命を掛けられる、いや、僕の命より大切な…… 僕の命よりぃ……』
修「あ、どうぞ、お大事に」
修は面倒に絡みつかれる前に電話を切った。
修「……気を取り直して」
修は小規模ながら最近人気の出ているアウトレットパークの事務所に電話を掛けた。
修「もしもし。突然の電話申し訳ありません。私、若松市で何でも屋をやっております久石というものですが、何かお困りごとはございませんでしょうか?」
修はアウトレットパークに電話をしたつもりでいたが、番号を押し間違えて別の店に電話をしてしまっていた。それに気が付かない修が声を待っていると、悲しげな女性の声が聞こえてきた。
女性『私がいけないんです。夫が夢を託す事業の資金集めとはいえ、バカな男に騙された私が… 私がいなくなったら、夫は、商店街は…… うぅ……』
修は自分の運命というやつに、恨みを抱くのはまだ早いと思っていた。
修「あ、あの、つかぬ事を伺いますが、お名前は?」
女性『えっ、名前ですか? 源氏名は‥』
修「あ、いえ、あの…… 本名は朱美さんですか?」
女性『どうして私の本名を?!』
次の瞬間、朱美のキャッという声が聞こえたかと思うと、ドスのきいた男の声が受話器から聞こえてきた。
男『店の電話を勝手に使うんじゃねぇ!』
その後、電話は乱暴に切られてしまった。だが、修はまだ運命というやつを信じ、先程の商店街に電話を掛けた。
修「あ、もしもし。先程、電話を掛けた何でも屋で‥」
男『あぁっ! 何でも屋さん! さっきはどうして電話を切っちゃったんですかぁ!』
悲壮感漂う男の叫び声が、修の耳をつんざく。
修「いえ、あのですね、偶然の偶然で、奥様の朱美さんを見つけまして……」
男『えぇっ!? 朱美を!? この短時間で!? しかも名前だけで!?』
修「いえ、あくまで偶然といいますか、もしかしたら違うかもしれ‥」
男『いいです! それでもいいです! どこにいるんですか朱美は!』
修「えーっとですね……」
修は電話の履歴を確認すると、大きな黄色の電話帳に指を当てて、間違い電話をしてしまった店の住所を男に教えてやる。
男『そこに朱美がいるんですね!?』
修「おそらくですよ?! 何でも、夫の事業の為の資金集め、商店街がどうとか、男に騙されたとか‥」
男『やっぱり! 朱美は、朱美は俺なんかの為に…… 何でも屋さん、ありがとうございました!』
修「あの、ちょっと、一人で行っちゃダメですよ! 万が一を考えて警‥」
男はすでに電話を切っていた。修はあれだけ信じていた運命というやつに殺意を覚えた。人生最初で最後の殺意を。
そのころ、重と渡は最後の配達先であるフミの家に到着していた。古さの中に味わいがある平屋で、七十六歳になるフミは一人暮らしをしている。
重「フミおばあちゃーん! 俺です、重でーす!」
庭の垣根からフミの姿が見えた重は、いつもより若い声を出した。
フミ「あらまぁ、いつもご苦労様。どうぞどうぞ」
優しく微笑むフミおばあちゃんは、縁側で正座をして二人を迎えた。あずき色の座布団にちょこんと座って湯呑みを持つ様子は、おばあちゃんそのものだった。
重「美味しいお昼ごはんです!」
重は一枚の品書きを手に、草花の咲く庭へと入っていった。
フミ「重ちゃんは元気ねぇ」
渡「こんにちは」
重の後に続いた渡が、爽やかな笑顔を見せる。
フミ「こんにちは。渡ちゃんは涼やかで良いわねぇ。それで重ちゃん、今日のお弁当は何ですか?」
そう聞かれると、渡は弁当を優しく手渡し、重が品書きを読み始めた。
重「今日はですね、ホウレンソウのおひたし、ワカメときゅうりの酢の物。ブリの照り焼きに里芋の煮っ転がし、山菜おこわとツボ漬け……」
渡「それにオルニチンたっぷりのシジミの味噌汁です」
渡は味噌汁のカップを取り出し、こぼさぬよう縁側へ置いた。
フミ「まぁー、どれも美味しそうねぇ。重ちゃんもそう思うでしょう?」
重「もちろんですよ! 山菜おこわなんて最高ですよ」
フミ「おこわ美味しいわよねぇ。渡ちゃんは?」
渡「おひたしですね。好きなんですよ。ホウレンソウとかセリとか」
フミ「セリも美味しいわねぇ」
フミは食事をしながら、いつもと同じように二人と面白おかしく会話をした。穏やかな時間がスズメのさえずりと共に流れ、時折吹く微風に、庭の竹の葉がさらさらと奏で始める。
縁側に座り、春の陽を浴びる三人は、本当のおばあちゃんと孫のようであった。
フミ「…………………」
楽しく話をしていたフミだったが、一瞬、寂しげな表情を浮かべた。渡と重はその一瞬にもちろん気がついた。、
重「……どうかしましたか?」
フミ「実はねぇ、近々、ここを離れるの……」
重「え? 引っ越しですか!?」
フミ「そうなの。娘夫婦が一緒に暮らそうって言ってくれてるのよ」
重「娘さんご夫婦が?」
微笑み静かに頷くフミ。その微笑みには嬉しさと悲しさが混ざっており、聞きたいことを飲み込んだ重は、黙って視線をそらすと、どこを見るでもなく考え出した。
渡「確か……」
黙っていた渡が縁側から立ち上がった。
渡「娘さんは高知にお住いでしたよね? えーっと、確か安芸市……」
フミ「よく覚えてるわねぇ!」
渡「こう見えても記憶力はあるんですよ。はっはっは……」
渡も笑った後は黙り込み、フミが入れてくれたお茶をすするだけだった。
重「そうだ!!」
渡「な、なんだよ大先生! 急に大きな声出さないでよ!」
重「ごめんごめん。いやさ、いいこと思いついたんだよ!」
渡「何?」
重「送別会だよ、送・別・会!」
渡「あっ、いいねぇ! 仲のいい人集めてさ!」
重「そうそう! それでフミおばあちゃん、いつ頃までこっちに……」
フミ「今月末かしらねぇ、娘夫婦のほうもまだ色々と準備があるようだし。もしかしたら来月末になるかもしれないわねぇ」
重「そうですか。ま、どのみち早めに声を掛けて日程を決めておかないと…… ん?」
渡「お?」
二人のポケットが同時に震え始めた。それはホームセンターで支払いをしていた知哉、椎名も同じことだった。
知哉「あれ? 椎名さんもですか?」
椎名「うん…… あ、修君からだね」
知哉「あーっと、『野暮用で少し外出ます』だぁ?」
椎名「野暮用? なにがあったんだろ?」
知哉「アイツの事ですから、こっちのことじゃないと思いますけど…」
知哉は小指を立てた。
椎名「そうだねぇ、知哉君じゃあるまいし」
知哉「やだなぁ椎名さん。硬派な俺が、そんなことあるわけが無いじゃないですか」
椎名「ゴメンゴメンそうだよね。知哉くんはコレだもんね?」
椎名は親指と小指を立てた。
知哉「…………え、アロハ?」
それから数時間後。本日の業務を全て終えた何でも屋は、あと少しで閉店時間を迎えようとしていた。
知哉「まだ帰ってこねぇよ、修のやつ。もうちょいで時間だぜ?」
重「まぁ、時間には人一倍厳しい修のことだから、そろそろ帰って来るんじゃない?」
ソファーに座って話す二人はコーヒーを飲み、事務イスに腰掛ける渡と椎名は玄米茶を飲んでいた。
椎名「それにしても野暮用ってのはなんだろうね?」
渡「なんでしょうかねぇ? まぁ、修のことですから、不真面目なことじゃないと思いますけど」
渡は何か分からないものかと、固定電話の直近の履歴を確認した。
渡「うーん、知らない番号……」
渡はスマートフォンを取り出すと、番号を検索に掛けた。
渡「商店街とキャバクラに電話を掛けてますね修は」
椎名「キャバクラ!? 修君が!?」
渡「商店街の事務所に掛けて、キャバクラに掛けて、また商店街に掛けてますねぇ…」
椎名「キャバクラを商店街事務所で挟んだの!? 修君が!?」
渡「そうなんですよ、修が挟むなんて信じられない! じゃないんですよバカ! なにボケをかましてるんですか」
椎名「丁寧語の後にバカをもってくるあたりが、僕には丁度良いんだよね」
椎名の台詞に渡が返そうとしたが、いつの間にか帰ってきていた修に先を越された。
修「ったく、何が丁度良いんだか…… 教授さん、バカに丁寧語使う必要は無いぞ」
何事もなかったかのような態度で、修は事務所の入り口に立っていた。野暮用だなんだと心配を掛けておきやがってと、ソファーに座っていた二人はワザとらしい声を出す。
重「おさむぅ!」
知哉「おさむぅ!」
大げさに驚いたフリを見せる二人は、立ち上がって修に近づいていく。修は呆れ笑いを堪え、二人から視線をそらした。
知哉「ちょっ、一体全体、どこで油を売っていたんだよ。説明頼む」
重「スマホがある今時、連絡しないとかあり得ないから。信じられないんだが」
修の嫌がる言葉や話し方で、二人は嫌らしく詰め寄っていく。
修「やめろよ、それ……」
重「心配かけといてエラソじゃね?」
知哉「既読で返さないとか、意味分かんねぇしぃ?」
修「うるせぇってんだよ! 意味分かんねえのはお前だ! 最後の既読のやつは今は関係ねぇだろ!」
修は二人の間を強引に通ると、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、自分の事務イスに座った。
渡「それで?」
修「ん?」
渡「ん? じゃないんだよ。午後はまるまる何をやってたのかって聞いてんの」
返答次第では刀を抜くぞと言わんばかりの渡の声に、修は苦笑いで答えた。
修「あっ、えー、人助けと何でも屋の宣伝活動をしていました。どちらも、えぇ、事なきを得まして、どうも……」
渡「人助けに宣伝活動?」
修「いえ、別に掘り下げるような事ではないですから……」
ポケットから手を出して姿勢を正した修を見た知哉と重は、なぜだか急いで自分たちの事務イスに座ると、揃って姿勢を正した。
重「いえね修さん、アタシたちも問い詰めてやろうとかいう気持ちでいるわけじゃないの。ただね、やれ野暮用だ、やれ人助けだ宣伝だと言われて、挙句に『掘り下げるような事ではないですから』と来られちゃ、伊勢や日向の物語。なんの事だかサッパリでしょう?」
知哉「アタシたちと修さんは金石の交わり。遠慮なしに、気兼ねなく話してちょうだいな」
長引かせれば長引かせるほど損をする。修はそう感じ、逆らうことなく説明を始めた。
修「……商店街で広告とか業務提携をさせてもらえないか電話したらだ、声色的に俺達ぐらいの男が電話に出て妻がいなくなったっていうんだよ。こりゃ下手に首を突っ込むとお互いに良いことはねぇと思って『お大事に』って電話を切ったんだよ」
それから修は、事の顛末まで流れるようにして話した。それはまるで叩き売りの口上のようだった。
渡「それじゃ、お巡りさんも来てくれて、全て丸く収まった訳だ」
修「そうそう。再会を喜んで夫婦は幸せそうに抱き合って、俺はその商店街にポスターだチラシだを配って張って。ま、そんな感じだよ」
渡「なるほどなるほど。丸く収まらなかったらどうすんだよ!」
修「な、急に大声を出すなよ!」
渡「まったく、そんな状況をよくもまぁ『野暮用』だけで済ませられるね! 警察に連絡したのは良いけど、せめて俺達と合流してから動き出しなさいよ!」
修「そう思ったけど、夫婦が心配だったからよ」
渡「こっちだって心配になるでしょ! 野暮用って言われたっきり連絡が取れないんじゃ!」
修「悪かったよ。今度からは無茶しねぇよ」
渡「まったく、頼むよもう」
二人の話が終わったその時、大人しく見守っていた椎名が、待っていましたと声を張った。
椎名「はーい! はーい!!」
突然はしゃぎ出した椎名を四人は睨むようにして見た。だが椎名はお構いなしに威勢よく声を張り上げた。
椎名「修君の話も終わり、業務時間も丁度よく終わり、明日は休日! と来れば?!」
嬉しそうな椎名は、満面の笑みを一人ずつに見せては、手に持った透明なマイクを突き出した。
椎名「はい! と来れば? と来れば?!」
修「ピエロ狩り」
椎名「この時期じゃまだ枝に花も咲いてないよ! はい! と来れば? と来れば?!」
修の口撃をあっさりかわし、しつこく繰り返し続ける椎名に、四人は根負けをしてクスクスと笑い始めてしまった。
知哉「何ですかもう」
椎名「いいから、早く早く! 時間が勿体無いよ!」
知哉「今こうしてる時間のほうが勿体無いですよ!」
重「おっ、バカが珍しく‥」
知哉「ケンカ売ってんのか!?」
重「売ってねぇよ、やんのかコラ!」
知哉「売ってるじゃ‥」
重「はいはい。椎名さん、早く言ってくださいよ。と来れば、の先を」
椎名はなんで分からないのかと、じれったい顔をして言った。
椎名「修君の話も終って、業務時間も丁度よく終って、明日は休日! と来ればボードゲームに決まってるじゃない!」
椎名の言葉を聞いた修は、勢い良くイスから立ち上がった。
修「謀怒解威武!?」
低く分厚い声を出す修。
渡「いま漢字にして言ったろ?」
修「しょうがねぇやな!」
握った拳を突き出し、たくましい筋肉を浮き上がらせる修。
修「知哉! 昨日ピエロに受けた借り、返してやろうじゃねぇか!」
知哉「あぁ、たっぷり利子をつけてな!」
昨日の悔しさを思い出した知哉は、修に応えて立ち上がる。
重「なにが利子だよ。二人とも昨日は突っ走って自滅しただけじゃない。ねぇ教授さん?」
渡「やってやる……」
重「はい?」
渡「やってやるぞ! 今日の俺に詰めの甘さは無い! 最後の最後でピエロに捲くられるような事は無い!」
重「ムキになっちゃってまぁ……」
渡「大先生は銀行役だったからそんな事が言えるんだよ!」
椎名「そうだよ重君。それに今日は『是、人生なり』っていうボードゲームだから、銀行役とか無いんだよ?」
重「………ポンコツの皆さんに、私の権力・知力・強運をお見せしましょう」
いい年をした大人五人が睨み合うと、空気はザワつき始めた。これから始める熾烈を極めた男たちの戦いに。
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