13 / 52
第二章:よそでイチャつけ!
ペラペラの日本語
しおりを挟む
男「あの、すみません……何でも屋ってここですか?」
振りかえった修と知哉の前には、リュックを背負った青年が傘を差し立っていた。小奇麗な身なりに知性が溢れる顔だち、それは学生時代の渡を思わせた。
青年「あ、どうもすみません」
修「えぇ、ここが何でも屋です。もしかしてご依頼ですか?」
青年「はい、そうなんです」
修「そうですか、それじゃ中へどうぞ」
修と知哉は、火をつけようとしていたタバコを素早くしまうと、青年を中へと案内した。
修「知哉はお客さんを頼む。おい大先生! ここをちゃちゃっと片してくれ! 教授はあのーあれだ、用紙を持ってきてくれ!」
修は事務所に入るなりすぐに指示をすると、控室にアイスコーヒーを取りに行った。その間に知哉は青年をソファーへと案内した。
知哉「どうぞ、お掛けになってください」
高身長で体格の言い知哉に気を使われ、青年は変に緊張していた。
青年「ありがとうございます……」
青年がソファーに座ると、重はコースターをローテーブルに置き、それにあわせて修がアイスコーヒーの入ったグラスを置いた。
修「どうぞ」
青年「あ、どうもすみません。いただきます」
青年は一口アイスコーヒーを飲んだ。
渡「お待たせいたしました」
渡が大きな青いファイルと用紙を持ち、向かいのソファーに腰を下ろす。重と知哉は事務イスに座り、修は離れた所に立ったままでいた。
渡「えーと、それでは……お名前とご職業を教えていただけますか?」
青年「杉田と言います。今は大学生です」
渡「あ、学生さんなんですか?」
杉田「あ、はい。千葉新国際フレキシブル大学に通ってます」
渡「奇遇ですね! 私、千葉新国際フレキシブル大学の卒業生なんですよ」
杉田「えっ、そうなんですか!? ということは僕の先輩なんですね!」
渡「そういうことになりますね。いや、何となくそうなんじゃないかと思っていたんですよ。知性があふれていましたから」
杉田「いえいえ、先輩のほうこそ、知性があふれてますよ!」
渡「え、そうですか?」
楽しそうに話を続ける二人を、修は暇そうに眺めていた。
杉田「先輩、お名前は?」
渡「あぁ、そうでした。私は大塚渡と申します。あとついでにですね、背の大きいのが寺内、眼鏡をかけているのが水木、そして私たちを暇そうに見ているのがヒゲです」
修「なんで俺だけ『ヒゲ』なんだよ!」
渡はあっさりと修を無視して杉田との話を続けた。
杉田「何か賑々しい感じで、楽しそうな職場ですね」
渡「そ、そうですか?」
渡は照れ笑いを見せると、無駄にボールペンの芯をカチカチと出し入れさせた。
渡「それで杉田さん、どのようなご依頼で?」
杉田は四人の顔を順にチラッと見ると、落ち着き無く体を動かし、恥ずかしそうな顔で口開いた。
杉田「あの、デ、デートコースを決めていただきたいんです……」
知哉「デートコース!?」
デリカシーの無い声を出した知哉は、事務イスから立ち上がり、杉田の横へと座った。
知哉「なんだぁ、そういうお悩‥」
渡「寺内さん」
知哉「ん? なに?」
渡「寺内さん!」
知哉「あ……すみません、どうも……」
口調だけで全てを悟った知哉は、渡の横に座り直した。その間、二人の顔を交互に見ていた杉田を見て、修は笑うのを我慢していた。
渡「……それで、デートコースということですけど、何かご自身で決められない理由があるんですか?」
杉田「実は僕、留学で大学に来ているんです」
驚いた知哉は再び声を上げる。
知哉「えっ? 日本人じゃないの?」
渡「寺内さん」
知哉「す、すみません……」
杉田「一応は日本人です。父も母も日本人なので。ただアメリカ生まれのアメリカ育ちなので、国籍からいうとアメリカ人なんです」
知哉「あぁ、そういうことか! なるほどなるほど、日本でデートしたくてもデートスポットを知らないから‥」
渡「寺内さん」
知哉「ん? なに?」
渡「寺内!」
知哉「あ……はーい……」
知哉は姿勢を正すと、静かになった。
渡「デートスポットを知らないがために、コースを決めてほしいと?」
杉田「はい、そういうわけなんです」
修「でも……」
黙っていた修が口を開いた。
修「雑誌で調べたりすればいいんじゃないんですか?」
杉田「雑誌で良さそうなところを見つけても方向音痴なもんで……」
修「スマホのアプリとかでも……」
杉田「たまに道に迷ったときも彼女に助けてもらってまして……」
修「あ、そうなんですか……」
杉田「それにいま、大学では激烈講義の時季なんです……」
渡「あぁそうか、もうそんな時期かぁ」
知哉「なんだよ、その激烈講義って? すげぇバカみたいなネーミングだけどよ?」
渡「知ちゃんに分かりやすいように言うと『クソ忙しい』ってことだよ」
知哉「うわーすごく分かりやすいけどバカにされた気分!」
修「おうバカ、向こうに座ってろよ!」
知哉「わかったわかった静かにしてるから……」
渡「終わりました?」
知哉「はい、黙ってます」
重「………それで? 依頼受けてあげるの?」
今まで黙っていた重が急に話した。
渡「えっ? あぁ、デートコースかぁ……」
修「後輩が困ってんだ、受けてやれよ」
知哉「ぐっ…………あっ…………」
知哉は何か言いたそうにしていたが、自分で黙っていると言った以上、話すわけにはいかなかった。
渡「……よし! 杉田さん、そのお悩み当店で解決いたします」
杉田「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しそうな笑顔を見せる杉田に、渡の顔も自然と笑顔になっていた。
振りかえった修と知哉の前には、リュックを背負った青年が傘を差し立っていた。小奇麗な身なりに知性が溢れる顔だち、それは学生時代の渡を思わせた。
青年「あ、どうもすみません」
修「えぇ、ここが何でも屋です。もしかしてご依頼ですか?」
青年「はい、そうなんです」
修「そうですか、それじゃ中へどうぞ」
修と知哉は、火をつけようとしていたタバコを素早くしまうと、青年を中へと案内した。
修「知哉はお客さんを頼む。おい大先生! ここをちゃちゃっと片してくれ! 教授はあのーあれだ、用紙を持ってきてくれ!」
修は事務所に入るなりすぐに指示をすると、控室にアイスコーヒーを取りに行った。その間に知哉は青年をソファーへと案内した。
知哉「どうぞ、お掛けになってください」
高身長で体格の言い知哉に気を使われ、青年は変に緊張していた。
青年「ありがとうございます……」
青年がソファーに座ると、重はコースターをローテーブルに置き、それにあわせて修がアイスコーヒーの入ったグラスを置いた。
修「どうぞ」
青年「あ、どうもすみません。いただきます」
青年は一口アイスコーヒーを飲んだ。
渡「お待たせいたしました」
渡が大きな青いファイルと用紙を持ち、向かいのソファーに腰を下ろす。重と知哉は事務イスに座り、修は離れた所に立ったままでいた。
渡「えーと、それでは……お名前とご職業を教えていただけますか?」
青年「杉田と言います。今は大学生です」
渡「あ、学生さんなんですか?」
杉田「あ、はい。千葉新国際フレキシブル大学に通ってます」
渡「奇遇ですね! 私、千葉新国際フレキシブル大学の卒業生なんですよ」
杉田「えっ、そうなんですか!? ということは僕の先輩なんですね!」
渡「そういうことになりますね。いや、何となくそうなんじゃないかと思っていたんですよ。知性があふれていましたから」
杉田「いえいえ、先輩のほうこそ、知性があふれてますよ!」
渡「え、そうですか?」
楽しそうに話を続ける二人を、修は暇そうに眺めていた。
杉田「先輩、お名前は?」
渡「あぁ、そうでした。私は大塚渡と申します。あとついでにですね、背の大きいのが寺内、眼鏡をかけているのが水木、そして私たちを暇そうに見ているのがヒゲです」
修「なんで俺だけ『ヒゲ』なんだよ!」
渡はあっさりと修を無視して杉田との話を続けた。
杉田「何か賑々しい感じで、楽しそうな職場ですね」
渡「そ、そうですか?」
渡は照れ笑いを見せると、無駄にボールペンの芯をカチカチと出し入れさせた。
渡「それで杉田さん、どのようなご依頼で?」
杉田は四人の顔を順にチラッと見ると、落ち着き無く体を動かし、恥ずかしそうな顔で口開いた。
杉田「あの、デ、デートコースを決めていただきたいんです……」
知哉「デートコース!?」
デリカシーの無い声を出した知哉は、事務イスから立ち上がり、杉田の横へと座った。
知哉「なんだぁ、そういうお悩‥」
渡「寺内さん」
知哉「ん? なに?」
渡「寺内さん!」
知哉「あ……すみません、どうも……」
口調だけで全てを悟った知哉は、渡の横に座り直した。その間、二人の顔を交互に見ていた杉田を見て、修は笑うのを我慢していた。
渡「……それで、デートコースということですけど、何かご自身で決められない理由があるんですか?」
杉田「実は僕、留学で大学に来ているんです」
驚いた知哉は再び声を上げる。
知哉「えっ? 日本人じゃないの?」
渡「寺内さん」
知哉「す、すみません……」
杉田「一応は日本人です。父も母も日本人なので。ただアメリカ生まれのアメリカ育ちなので、国籍からいうとアメリカ人なんです」
知哉「あぁ、そういうことか! なるほどなるほど、日本でデートしたくてもデートスポットを知らないから‥」
渡「寺内さん」
知哉「ん? なに?」
渡「寺内!」
知哉「あ……はーい……」
知哉は姿勢を正すと、静かになった。
渡「デートスポットを知らないがために、コースを決めてほしいと?」
杉田「はい、そういうわけなんです」
修「でも……」
黙っていた修が口を開いた。
修「雑誌で調べたりすればいいんじゃないんですか?」
杉田「雑誌で良さそうなところを見つけても方向音痴なもんで……」
修「スマホのアプリとかでも……」
杉田「たまに道に迷ったときも彼女に助けてもらってまして……」
修「あ、そうなんですか……」
杉田「それにいま、大学では激烈講義の時季なんです……」
渡「あぁそうか、もうそんな時期かぁ」
知哉「なんだよ、その激烈講義って? すげぇバカみたいなネーミングだけどよ?」
渡「知ちゃんに分かりやすいように言うと『クソ忙しい』ってことだよ」
知哉「うわーすごく分かりやすいけどバカにされた気分!」
修「おうバカ、向こうに座ってろよ!」
知哉「わかったわかった静かにしてるから……」
渡「終わりました?」
知哉「はい、黙ってます」
重「………それで? 依頼受けてあげるの?」
今まで黙っていた重が急に話した。
渡「えっ? あぁ、デートコースかぁ……」
修「後輩が困ってんだ、受けてやれよ」
知哉「ぐっ…………あっ…………」
知哉は何か言いたそうにしていたが、自分で黙っていると言った以上、話すわけにはいかなかった。
渡「……よし! 杉田さん、そのお悩み当店で解決いたします」
杉田「本当ですか!? ありがとうございます!」
嬉しそうな笑顔を見せる杉田に、渡の顔も自然と笑顔になっていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【キャラ文芸大賞 奨励賞】壊れたアンドロイドの独り言
蒼衣ユイ/広瀬由衣
キャラ文芸
若手イケメンエンジニア漆原朔也を目当てにインターンを始めた美咲。
目論見通り漆原に出会うも性格の悪さに愕然とする。
そんなある日、壊れたアンドロイドを拾い漆原と持ち主探しをすることになった。
これが美咲の家族に大きな変化をもたらすことになる。
壊れたアンドロイドが家族を繋ぐSFミステリー。
illust 匣乃シュリ様(Twitter @hakonoshuri)
黒蜜先生のヤバい秘密
月狂 紫乃/月狂 四郎
ライト文芸
高校生の須藤語(すとう かたる)がいるクラスで、新任の教師が担当に就いた。新しい担任の名前は黒蜜凛(くろみつ りん)。アイドル並みの美貌を持つ彼女は、あっという間にクラスの人気者となる。
須藤はそんな黒蜜先生に小説を書いていることがバレてしまう。リアルの世界でファン第1号となった黒蜜先生。須藤は先生でありファンでもある彼女と、小説を介して良い関係を築きつつあった。
だが、その裏側で黒蜜先生の人気をよく思わない女子たちが、陰湿な嫌がらせをやりはじめる。解決策を模索する過程で、須藤は黒蜜先生のヤバい過去を知ることになる……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


28歳、曲がり角
ふくまめ
ライト文芸
「30歳は曲がり角だから」「30過ぎたら違うよ」なんて、周りからよく聞かされてきた。
まぁそんなものなのかなと思っていたが、私の曲がり角少々早めに設定されていたらしい。
※医療的な場面が出てくることもありますが、作者は医療従事者ではありません。
正確な病名・症例ではない、描写がおかしいこともあるかもしれませんが、
ご了承いただければと思います。
また何よりも、このような症例、病状、症状に悩んでおられる方をはじめとする、
関係者の皆様を傷つける意図はありません。
作品の雰囲気としてあまり暗くならない予定ですし、あくまで作品として見ていただければ幸いですが、
気分を害した方がいた場合は何らかの形で連絡いただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる