3 / 52
第一章:廃工場の謎
集合場所は八番亭
しおりを挟む
喫茶店「大宇宙」で未知との遭遇を終えた修と知哉は、知哉の実家、中華料理屋の「八番亭」にやってきていた。これから共に仕事をすることになる教授と大先生というあだ名の幼馴染が来るのを待っていたのだった。
男「何でも屋ねぇ、なんか楽しそうだなぁ」
厨房で作業をしながら、知哉の父、寺内勝が呟いた。
修「そうですか?」
修はカウンター席に座っており、知哉はすぐ後ろのテーブル席に座っていた。
勝「そうだよ。だって、いろんな依頼が来るかもしれねぇんだろ?」
修「まぁ、そうですね」
勝「ウチなんか来る電話も来る客も、ラーメンだのチャーハンだの中華料理の注文ばっかりなんだよ」
知哉「当たり前だろ! 中華料理屋なんだから!」
勝「……おたく誰?」
知哉「息子だよ! 寺内勝さんとこの次男坊!」
勝「ですってお客さん」
修「いや、ちょっと、存じ上げない……」
知哉「いつ練習してんだホント…… 毎回毎回さぁ」
修「なんだよ、練習に参加したかったんなら言ってくれりゃ‥」
知哉「そうじゃねぇよ!」
三人がバカ話をしていると、店の引き戸がカラカラと音を立てた。
勝「はい、いらっしゃ…… おっ、教授さん、いらっしゃい」
教授があだ名のこの男、本名は大塚渡。これがまぁ、お金持ちのお坊ちゃんで、大塚グループ社長の長男。母親も会社を経営している。しかしながら甘やかされたことはなく、感覚も庶民的。そして勉強嫌い。ただ、優秀な両親に秀才な姉という家族の手前、努力して一流大学に入学、首席で卒業した。だが勉強が大嫌い。
渡「どうも、おじさん。ちょっとご無沙汰しちゃいまして……」
ちなみに背丈は修とほぼ同じで、少し痩せている。
勝「いいんだよ、んな事。ほい、座って座って」
渡「ありがとうございます」
渡は修の横の席に腰かけた。もちろん一席空けて。
渡「よぉ、バカ二人」
笑顔で言う渡に、笑って受ける修と知哉。
修「おい、知哉は別として、おじさんに失礼だろ!」
渡「それもそうか……」
勝「おいおい、俺に言ってたのかよ!?」
わざとらしい声を出す勝に、三人は笑い出す。
渡「いやー、それにしても、もう夏って感じになってきたね」
知哉「だな。あとはセミが鳴くのを待つだけだよ」
修「ホントだな」
勝「なにを年よりじみたこと言ってんだよ? まだ二十代だろ?」
修「おじさん。野郎は二十歳こえたらジジイなんですよ」
渡「ずーっとそれ言ってるよね?」
修「まあな」
渡「何が『まあな』なんだか。ていうか、大先生はまだ?」
渡がそう聞いたとき、店の引き戸が再び音を立てた。
勝「はい、いらっ‥ こりゃどうも大先生」
大先生の本名は水木重。察しはつくだろうが有名な妖怪漫画家から両親が付けたもので、本人も無類の妖怪好きである。背丈は修・渡と知哉の間くらい。そして眼鏡をかけている。少し痩せていて、そして自由な男である。
重「こんにちは、おじさん」
重は眼鏡を位置を直すと、天然パーマの長髪をフォサフォサと動かしながら、修と渡の間の席に腰かけた。
重「お邪魔しまーす」
修「何でわざわざ間に座るんだよ!」
重「あら、私のこと嫌いなの?」
知哉「大先生は好きだよなぁ、そのギャグつーか、ネタっつーか……」
重「なんだ、バカもいたのか」
そのセリフに修と渡は吹き出し、勝は笑い出す。だが言われた知哉が一番笑っていた。
知哉「うるせぇよ!」
勝「すみません大先生、俺のしつけがなってないもんで……」
重「いえ、お父様のせいではございませんよ。ご長男は小学校の教諭をなさっているのですから」
勝「いやぁ、どうも、二回目は失敗しちゃったみたいで……」
知哉「うるせぇって! だから、いつ練習してんだよ!」
重「練習に参加したいなら‥」
知哉「それはさっき修が言ったよ!」
重「あら、修君と私、気が合うのね?」
修「気が合うも何も、幼稚園の時からくされ縁で一緒なんだ、似てもくるんだよ! イヤでもな!」
重「あ、それじゃその事について、腰を据えて話し合おうか」
修「結論を言ってんのになんで話し合わなきゃならねぇんだよ!」
重「そんなことより、物件を見に行くんでしょ?」
修「………………」
渡「そうだよ修、早く行こうよ」
修「……ったく、じゃあ行くか。それじゃおじさん、夕飯食べにまた来ますんで」
勝「おう、じゃあ気をつけてな」
修「はい、行ってきます」
渡「行ってきます」
重「お邪魔しました」
知哉「それじゃお父様、しばらくしましたら戻りますので」
勝「いい、いい、お前は帰ってくんな」
知哉「なんだってんだ!」
四人は八番亭を後にして、何でも屋開業候補の物件へと歩き出した。
男「何でも屋ねぇ、なんか楽しそうだなぁ」
厨房で作業をしながら、知哉の父、寺内勝が呟いた。
修「そうですか?」
修はカウンター席に座っており、知哉はすぐ後ろのテーブル席に座っていた。
勝「そうだよ。だって、いろんな依頼が来るかもしれねぇんだろ?」
修「まぁ、そうですね」
勝「ウチなんか来る電話も来る客も、ラーメンだのチャーハンだの中華料理の注文ばっかりなんだよ」
知哉「当たり前だろ! 中華料理屋なんだから!」
勝「……おたく誰?」
知哉「息子だよ! 寺内勝さんとこの次男坊!」
勝「ですってお客さん」
修「いや、ちょっと、存じ上げない……」
知哉「いつ練習してんだホント…… 毎回毎回さぁ」
修「なんだよ、練習に参加したかったんなら言ってくれりゃ‥」
知哉「そうじゃねぇよ!」
三人がバカ話をしていると、店の引き戸がカラカラと音を立てた。
勝「はい、いらっしゃ…… おっ、教授さん、いらっしゃい」
教授があだ名のこの男、本名は大塚渡。これがまぁ、お金持ちのお坊ちゃんで、大塚グループ社長の長男。母親も会社を経営している。しかしながら甘やかされたことはなく、感覚も庶民的。そして勉強嫌い。ただ、優秀な両親に秀才な姉という家族の手前、努力して一流大学に入学、首席で卒業した。だが勉強が大嫌い。
渡「どうも、おじさん。ちょっとご無沙汰しちゃいまして……」
ちなみに背丈は修とほぼ同じで、少し痩せている。
勝「いいんだよ、んな事。ほい、座って座って」
渡「ありがとうございます」
渡は修の横の席に腰かけた。もちろん一席空けて。
渡「よぉ、バカ二人」
笑顔で言う渡に、笑って受ける修と知哉。
修「おい、知哉は別として、おじさんに失礼だろ!」
渡「それもそうか……」
勝「おいおい、俺に言ってたのかよ!?」
わざとらしい声を出す勝に、三人は笑い出す。
渡「いやー、それにしても、もう夏って感じになってきたね」
知哉「だな。あとはセミが鳴くのを待つだけだよ」
修「ホントだな」
勝「なにを年よりじみたこと言ってんだよ? まだ二十代だろ?」
修「おじさん。野郎は二十歳こえたらジジイなんですよ」
渡「ずーっとそれ言ってるよね?」
修「まあな」
渡「何が『まあな』なんだか。ていうか、大先生はまだ?」
渡がそう聞いたとき、店の引き戸が再び音を立てた。
勝「はい、いらっ‥ こりゃどうも大先生」
大先生の本名は水木重。察しはつくだろうが有名な妖怪漫画家から両親が付けたもので、本人も無類の妖怪好きである。背丈は修・渡と知哉の間くらい。そして眼鏡をかけている。少し痩せていて、そして自由な男である。
重「こんにちは、おじさん」
重は眼鏡を位置を直すと、天然パーマの長髪をフォサフォサと動かしながら、修と渡の間の席に腰かけた。
重「お邪魔しまーす」
修「何でわざわざ間に座るんだよ!」
重「あら、私のこと嫌いなの?」
知哉「大先生は好きだよなぁ、そのギャグつーか、ネタっつーか……」
重「なんだ、バカもいたのか」
そのセリフに修と渡は吹き出し、勝は笑い出す。だが言われた知哉が一番笑っていた。
知哉「うるせぇよ!」
勝「すみません大先生、俺のしつけがなってないもんで……」
重「いえ、お父様のせいではございませんよ。ご長男は小学校の教諭をなさっているのですから」
勝「いやぁ、どうも、二回目は失敗しちゃったみたいで……」
知哉「うるせぇって! だから、いつ練習してんだよ!」
重「練習に参加したいなら‥」
知哉「それはさっき修が言ったよ!」
重「あら、修君と私、気が合うのね?」
修「気が合うも何も、幼稚園の時からくされ縁で一緒なんだ、似てもくるんだよ! イヤでもな!」
重「あ、それじゃその事について、腰を据えて話し合おうか」
修「結論を言ってんのになんで話し合わなきゃならねぇんだよ!」
重「そんなことより、物件を見に行くんでしょ?」
修「………………」
渡「そうだよ修、早く行こうよ」
修「……ったく、じゃあ行くか。それじゃおじさん、夕飯食べにまた来ますんで」
勝「おう、じゃあ気をつけてな」
修「はい、行ってきます」
渡「行ってきます」
重「お邪魔しました」
知哉「それじゃお父様、しばらくしましたら戻りますので」
勝「いい、いい、お前は帰ってくんな」
知哉「なんだってんだ!」
四人は八番亭を後にして、何でも屋開業候補の物件へと歩き出した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【キャラ文芸大賞 奨励賞】壊れたアンドロイドの独り言
蒼衣ユイ/広瀬由衣
キャラ文芸
若手イケメンエンジニア漆原朔也を目当てにインターンを始めた美咲。
目論見通り漆原に出会うも性格の悪さに愕然とする。
そんなある日、壊れたアンドロイドを拾い漆原と持ち主探しをすることになった。
これが美咲の家族に大きな変化をもたらすことになる。
壊れたアンドロイドが家族を繋ぐSFミステリー。
illust 匣乃シュリ様(Twitter @hakonoshuri)
黒蜜先生のヤバい秘密
月狂 紫乃/月狂 四郎
ライト文芸
高校生の須藤語(すとう かたる)がいるクラスで、新任の教師が担当に就いた。新しい担任の名前は黒蜜凛(くろみつ りん)。アイドル並みの美貌を持つ彼女は、あっという間にクラスの人気者となる。
須藤はそんな黒蜜先生に小説を書いていることがバレてしまう。リアルの世界でファン第1号となった黒蜜先生。須藤は先生でありファンでもある彼女と、小説を介して良い関係を築きつつあった。
だが、その裏側で黒蜜先生の人気をよく思わない女子たちが、陰湿な嫌がらせをやりはじめる。解決策を模索する過程で、須藤は黒蜜先生のヤバい過去を知ることになる……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


28歳、曲がり角
ふくまめ
ライト文芸
「30歳は曲がり角だから」「30過ぎたら違うよ」なんて、周りからよく聞かされてきた。
まぁそんなものなのかなと思っていたが、私の曲がり角少々早めに設定されていたらしい。
※医療的な場面が出てくることもありますが、作者は医療従事者ではありません。
正確な病名・症例ではない、描写がおかしいこともあるかもしれませんが、
ご了承いただければと思います。
また何よりも、このような症例、病状、症状に悩んでおられる方をはじめとする、
関係者の皆様を傷つける意図はありません。
作品の雰囲気としてあまり暗くならない予定ですし、あくまで作品として見ていただければ幸いですが、
気分を害した方がいた場合は何らかの形で連絡いただければと思います。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる