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夜会4
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なんとか、闇の狼達を兵士が全員捕らえてから、別の大部屋に移動してパーティがまた再開された。シフォン王子はほっとした顔をして、僕と手を繋いで真ん中に引かれている絨毯を歩いて女神像の前で跪いた。それを貴族の人達が一定の距離をとってみてくる。
女神は愛と運命を司る、メディア様だ。
シフォン王子が頭を下げたまま、僕も下げたまま、婚約者になるための誓いを言う。
【メディア様にご承知頂きたい。俺の伴侶をアルフォン・ガゼンだと認めて頂きたい】
『あらあら、可愛いお願いだこと』
え……?
僕は聞こえてきた声に空耳かと思った。
『ふふっ、こんにちは。私はメディアよ』
なんだ、この急展開! 普通に王族がメディア様の像に報告して終わるという手はずなのに、本当に女神様が出てきたよ!
「これが、メディア様の声。なんという奇跡だ!」
シフォン王子が動揺している。
周りにいた貴族たちもザワザワと慌てだす。
なんだろう、なんか嫌な予感しかしない。
『アルフォンは我の血を受けついている人間を助けてくれた。礼を言う。その礼としてと言うのもなんだが、其方に我から祝福を与えよう。シフォン王子と末永く幸せにな』
女神様の声はそう言うと、聞こえなくなってしまった。
正直、言って。いらない祝福だった。
だって、結婚する気が二人ともないのに、無理矢理赤い糸を結び付けられたのだ。
やってられない。
あぁ、女神様。どうせなら、兄様と姉様に祝福してほしかったです!
いい結婚相手を女神様なら見つけて下さるから! そう信じているんです!
なのに、なんでなんでなんで! 俺が祝福を! 一番いらない!
くそっ、もう一回女神さまを呼びだしたいが、呼びだした召喚の条件が怖くて出来ない。
普通は人間界には干渉してこないのが女神や神様だ。なのに、まさか出てくるとは。
しかし、メディア様の血を受けついている人間って……。
トイレに行かせた女性か?
俺は、先ほど絨毯を歩いている時に目があった女性のいる位置を見た。
よく見ると、メディア様に似ている。笑顔で笑いかけてくれた。
やはり、血筋は彼女だろう。
「アル、アルフォン!」
「……あ、すみません。どうしましたか、シフォン王子?」
やべー、考え事をしていて話を聞いていなかった。
「俺達、きっといい夫婦になれるな」
シフォン王子は顔を赤くさせながら、俺の両手をとって興奮していた。
そうだった、演技しないと。
契約だったな。忘れていた。忘れちゃ駄目なのだが、兄様と姉様以外はあんまり覚えていられないからな。ふっ、これがシスコン&ブラコンってやつか。いいね!
「アル、今日から宜しく頼む」
「えぇ、宜しくお願いします。シフォン様王子」
僕らは契約上の上でだけの婚約者のはずだった。
シフォン王子が俺の唇にキスをしてくるまでは。
周りにいた貴族達は歓喜した声をあげていた。
「女神様からの祝福だ! 絶対に結婚させないといけない! 女神様に背くと呪われる」
「二人ともお幸せに!」「女神様に認められるなんて運命ね」と祝福モード全開だった。
いや、僕は、僕らは結婚しないで別れる予定なんですが?
王様が座っていた豪華な椅子から立ち上がった。
「シフォン、アルフォン。おめでとう。一ヶ月後には国民に紹介する場を設ける。女神様の祝福なんだ、結婚して貰わないと女神に嫌われてしまうからな」
いやいや、そんな心狭くないと思いますよ! 女神様は心が広いはず……多分。
「アル、明日からレッスンの時間だよ」
「え?」
「ダンスに歩く姿勢保ち方に国の事の勉強に他国の事の勉強に等々、俺の婚約者に相応しい事を国民に知らしめる。がんばってくれ、アル」
「シフォン……マジかよ」
僕はガクリと肩を落とした。
女神に祝福されたくなかった。
婚約者に相応しいマナーの勉強。
周りの結婚しろしろオーラ。
全てが僕は絶望した。
こうして、僕はシフォン王子の正式な婚約者になった。
闇の狼から情報を聞き出した騎士達の話を聞いたら、ワープの魔法を使える人間に金を掴まされて頼まれたが、何処の誰かフードを被っていて顔さえ見てないと言っていた。
だが、この裏には貴族か王族が関係してくるだろう。
ワープの魔法は基礎魔法だが、大量の魔力を消費するのだ。
大勢の魔法使いを雇えるものでないと無理だ。
「これで終わればいいのだが」
僕はそう思って、今日はグランス城に泊まる事になったので部屋から真っ黒な空に浮かぶ月を見上げていた。
シフォン王子様が兄弟に紹介したいからと言っていたので、明日は王族とお茶会だ。
あぁ、胃が痛いです。
僕は負けない! 屈しない! 泣くものか!
明日も兄様と姉様の幸せのために頑張りますよ!
女神は愛と運命を司る、メディア様だ。
シフォン王子が頭を下げたまま、僕も下げたまま、婚約者になるための誓いを言う。
【メディア様にご承知頂きたい。俺の伴侶をアルフォン・ガゼンだと認めて頂きたい】
『あらあら、可愛いお願いだこと』
え……?
僕は聞こえてきた声に空耳かと思った。
『ふふっ、こんにちは。私はメディアよ』
なんだ、この急展開! 普通に王族がメディア様の像に報告して終わるという手はずなのに、本当に女神様が出てきたよ!
「これが、メディア様の声。なんという奇跡だ!」
シフォン王子が動揺している。
周りにいた貴族たちもザワザワと慌てだす。
なんだろう、なんか嫌な予感しかしない。
『アルフォンは我の血を受けついている人間を助けてくれた。礼を言う。その礼としてと言うのもなんだが、其方に我から祝福を与えよう。シフォン王子と末永く幸せにな』
女神様の声はそう言うと、聞こえなくなってしまった。
正直、言って。いらない祝福だった。
だって、結婚する気が二人ともないのに、無理矢理赤い糸を結び付けられたのだ。
やってられない。
あぁ、女神様。どうせなら、兄様と姉様に祝福してほしかったです!
いい結婚相手を女神様なら見つけて下さるから! そう信じているんです!
なのに、なんでなんでなんで! 俺が祝福を! 一番いらない!
くそっ、もう一回女神さまを呼びだしたいが、呼びだした召喚の条件が怖くて出来ない。
普通は人間界には干渉してこないのが女神や神様だ。なのに、まさか出てくるとは。
しかし、メディア様の血を受けついている人間って……。
トイレに行かせた女性か?
俺は、先ほど絨毯を歩いている時に目があった女性のいる位置を見た。
よく見ると、メディア様に似ている。笑顔で笑いかけてくれた。
やはり、血筋は彼女だろう。
「アル、アルフォン!」
「……あ、すみません。どうしましたか、シフォン王子?」
やべー、考え事をしていて話を聞いていなかった。
「俺達、きっといい夫婦になれるな」
シフォン王子は顔を赤くさせながら、俺の両手をとって興奮していた。
そうだった、演技しないと。
契約だったな。忘れていた。忘れちゃ駄目なのだが、兄様と姉様以外はあんまり覚えていられないからな。ふっ、これがシスコン&ブラコンってやつか。いいね!
「アル、今日から宜しく頼む」
「えぇ、宜しくお願いします。シフォン様王子」
僕らは契約上の上でだけの婚約者のはずだった。
シフォン王子が俺の唇にキスをしてくるまでは。
周りにいた貴族達は歓喜した声をあげていた。
「女神様からの祝福だ! 絶対に結婚させないといけない! 女神様に背くと呪われる」
「二人ともお幸せに!」「女神様に認められるなんて運命ね」と祝福モード全開だった。
いや、僕は、僕らは結婚しないで別れる予定なんですが?
王様が座っていた豪華な椅子から立ち上がった。
「シフォン、アルフォン。おめでとう。一ヶ月後には国民に紹介する場を設ける。女神様の祝福なんだ、結婚して貰わないと女神に嫌われてしまうからな」
いやいや、そんな心狭くないと思いますよ! 女神様は心が広いはず……多分。
「アル、明日からレッスンの時間だよ」
「え?」
「ダンスに歩く姿勢保ち方に国の事の勉強に他国の事の勉強に等々、俺の婚約者に相応しい事を国民に知らしめる。がんばってくれ、アル」
「シフォン……マジかよ」
僕はガクリと肩を落とした。
女神に祝福されたくなかった。
婚約者に相応しいマナーの勉強。
周りの結婚しろしろオーラ。
全てが僕は絶望した。
こうして、僕はシフォン王子の正式な婚約者になった。
闇の狼から情報を聞き出した騎士達の話を聞いたら、ワープの魔法を使える人間に金を掴まされて頼まれたが、何処の誰かフードを被っていて顔さえ見てないと言っていた。
だが、この裏には貴族か王族が関係してくるだろう。
ワープの魔法は基礎魔法だが、大量の魔力を消費するのだ。
大勢の魔法使いを雇えるものでないと無理だ。
「これで終わればいいのだが」
僕はそう思って、今日はグランス城に泊まる事になったので部屋から真っ黒な空に浮かぶ月を見上げていた。
シフォン王子様が兄弟に紹介したいからと言っていたので、明日は王族とお茶会だ。
あぁ、胃が痛いです。
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