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2章 スティルド王国編
第75話 不戦敗の危機
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決勝戦の舞台では、花火を打ち上げ終えた魔法士たちが中央の舞台から退場していく。
すると、司会者の声が会場中に響き渡った。
『ついに、各組の決勝出場者が出揃いました。これから本選出場を賭けた戦いが始まります。それでは、一試合目に参りましょう。一試合目は誰もが知るこの方の入場だ!.』
司会者の声と共に会場に入場したのは青髪の男だった。
『去年の準優勝者にして、ホルス騎士団の部隊長でもある方――シェイカー。今年は優勝を狙っていることでしょう』
シェイカーは観客に手を振って笑顔で歓声に応える。
強い者の余裕なのか、自信に満ちた佇まいだった。
「今年は優勝しろよ!」
「あんたに賭けているんだ。今回も勝ってくれよ!」
「シェイカー様! がんばってぇ!」
歓声の中に様々な応援がシェイカーに向けられた。
『そして、昨年の準優勝者に挑戦するのは、ここまでの戦績はすべて瞬殺。番狂わせを立て続けに起こし、予選決勝まで上り詰めた騎士。決勝戦ではどんな戦いを見せてくれるのか。スタント公爵家からの代表――ルイだ』
司会者が熱の入った紹介をする。
しかし、誰も入場口から姿を現さない。
『…………』
しばらく様子を見るが、出てくる気配がない。
観客も琉海が入場してこないことで訝しみはじめる。
そんな光景を上階にある大貴族が観戦する個室で眺めている者たちがいた。
ティニアの母のエリザだ。
「アルディ、何か聞いているかしら?」
エリザが紅茶を飲みながら、隣に立つ高齢の執事に聞く。
「いえ、何も聞いておりません。馬車で出発はしたと思われるのですが」
「そう、じゃあ、その道中で何かあったのかしら?」
エリザは視線を鋭くして会場を見下ろす。
ビギナーが決勝まで上がってきて、道中に誰かに襲われることは、たまにあることとは言え、公爵家に仕掛ける者がいるとは、いい度胸だとエリザは内心思っていた。
「お調べしましょうか?」
仕掛けてきた相手も気になるが――
「そうね。それは後でいいわ。それよりも、この状況はあまり好ましくないわね」
「いかがいたしましょう」
「時間を稼ぎたいところだけど、どうしたものかしら。ここまで進んじゃうと、さすがに難しいかしらね」
エリザがアルディに視線で問う。
「そうですね。事後の始末に注力するほうが建設的かと愚考いたします」
「まあ、そうよね。さて、どう転ぶかしら」
このままだと、不戦敗で負けとなる。
下手に間に入って他の貴族に騒がれるのは確実だ。
一人の貴族が騒げば、その声は山火事のように広がっていく。
その火消しはかなりの金と時間と労力を費やすことになるだろう。
ここは静観がベストだと判断する。
エリザはカップを口に付け、紅茶を飲みながら、静観することにした。
すると、司会者の声が会場中に響き渡った。
『ついに、各組の決勝出場者が出揃いました。これから本選出場を賭けた戦いが始まります。それでは、一試合目に参りましょう。一試合目は誰もが知るこの方の入場だ!.』
司会者の声と共に会場に入場したのは青髪の男だった。
『去年の準優勝者にして、ホルス騎士団の部隊長でもある方――シェイカー。今年は優勝を狙っていることでしょう』
シェイカーは観客に手を振って笑顔で歓声に応える。
強い者の余裕なのか、自信に満ちた佇まいだった。
「今年は優勝しろよ!」
「あんたに賭けているんだ。今回も勝ってくれよ!」
「シェイカー様! がんばってぇ!」
歓声の中に様々な応援がシェイカーに向けられた。
『そして、昨年の準優勝者に挑戦するのは、ここまでの戦績はすべて瞬殺。番狂わせを立て続けに起こし、予選決勝まで上り詰めた騎士。決勝戦ではどんな戦いを見せてくれるのか。スタント公爵家からの代表――ルイだ』
司会者が熱の入った紹介をする。
しかし、誰も入場口から姿を現さない。
『…………』
しばらく様子を見るが、出てくる気配がない。
観客も琉海が入場してこないことで訝しみはじめる。
そんな光景を上階にある大貴族が観戦する個室で眺めている者たちがいた。
ティニアの母のエリザだ。
「アルディ、何か聞いているかしら?」
エリザが紅茶を飲みながら、隣に立つ高齢の執事に聞く。
「いえ、何も聞いておりません。馬車で出発はしたと思われるのですが」
「そう、じゃあ、その道中で何かあったのかしら?」
エリザは視線を鋭くして会場を見下ろす。
ビギナーが決勝まで上がってきて、道中に誰かに襲われることは、たまにあることとは言え、公爵家に仕掛ける者がいるとは、いい度胸だとエリザは内心思っていた。
「お調べしましょうか?」
仕掛けてきた相手も気になるが――
「そうね。それは後でいいわ。それよりも、この状況はあまり好ましくないわね」
「いかがいたしましょう」
「時間を稼ぎたいところだけど、どうしたものかしら。ここまで進んじゃうと、さすがに難しいかしらね」
エリザがアルディに視線で問う。
「そうですね。事後の始末に注力するほうが建設的かと愚考いたします」
「まあ、そうよね。さて、どう転ぶかしら」
このままだと、不戦敗で負けとなる。
下手に間に入って他の貴族に騒がれるのは確実だ。
一人の貴族が騒げば、その声は山火事のように広がっていく。
その火消しはかなりの金と時間と労力を費やすことになるだろう。
ここは静観がベストだと判断する。
エリザはカップを口に付け、紅茶を飲みながら、静観することにした。
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