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1章 異世界突入編
第37話 脱落者
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「あのガキは来ると思うか?」
黄髪の男が手元でナイフを弄びながら青髪の男に顔を向ける。
「ははは、ディックは馬鹿か? 来るしかないんだよ」
青髪の男が笑いながらも、目の奥には怒気を含んでいた。
そして、その怒りの目で黄髪の男――ディックを睨む。
「サルスは血気盛んだね。俺はこの娘が手に入れば、別にいいや」
青髪の男――サルスにやれやれと首を振る緑髪の男。
彼は気を失って床に倒れているミリアの髪をすく。
「ははは、バカスは腕を折られたことをもう忘れたのか」
緑髪の男――バカスを挑発するサルス。
「折れた腕ならもう治ったよ。痛かったけど、欲しいものは手に入ったし」
琉海に折られた腕をひらひらと動かして答える緑髪のバカス。
「ははは、それは高い金を払ってポーションを買ったから、治っただけだろ。あのガキに金を払ってもらうぐらいのことをしねえと気が済まねえだろ」
「まあ、そのぐらいはしないと気は晴れないかもな」
青髪のサルスに黄髪のディックは賛同する。
「俺はどっちでもいいかな」
緑髪のバカスはミリアのことで頭がいっぱいなのか、二人とは温度差があった。
「ははは、そのお花畑の頭むかつくな。お前を先に殺そうかな」
笑顔を貼り付けたまま、剣を抜こうとする青髪のサルス。
「おい、少し黙れ」
静かに殺気を放つ赤髪の男――イーゲルが三人を睨む。
「「「…………」」」
本気で怒ったときのイーゲルの怖さを知っている三人は沈黙を選んだ。
イーゲルは剣を眺めることで心を鎮めようとする。
だが、怒りはふつふつと湧き上がってきた。
(あのガキのせいだッ!)
町を歩けば、他の冒険者に蔑んだ目で見られる始末。
ライセンスを剥奪される前は、何も言わず、視線も合わせなかった奴らも今じゃ、大っぴらに陰口を言ってくる。
だが、こちらから殴ることもできない。
指名手配されれば、狩る側だったのが狩られる側になってしまう。
特に大きい町では大騒ぎするだけで目を付けられる。
そんな行く当てが無くなったイーゲルたちに救いの手を差し伸べた者がいた。
その時のことをイーゲルは思い出す。
イーゲルたちを掬い上げた男はフードを深く被り顔を隠していた。
そして、とある提案をしてきた。
「君たちをどん底に落とした男に仕返しをしたくないか?」
最初はどん底に落ちたという現実を突きつけられ、イラっとしたが、その原因を作ったあのガキへの怒りの方が勝っていた。
第三者から見れば、明らかな逆恨みだ。
だが、普通の感性を持っていたらこのような結果には、なっていなかっただろう。
イーゲルはその者の提案に乗ることにした。
元凶の少年を誰にも邪魔されず嵌めることのできる場所があると言われた。
イーゲルはその場所を教えてもらった。
しかし、そこには魔物が住み着いているとのことだった。
魔物のランクを聞き、その場所を確保するためにイーゲルたちは提案を受けた。
イーゲルたちは意気揚々と屋敷に入っていき、魔物を蹴散らした。
元C級冒険者四人で行った魔物討伐は危なげなく完遂された。
腐っても元C級冒険者であるということだろう。
そして、そのフードの男からは他にももらった。
それは十数人の山賊集団。
リーダーの一人は懸賞金のかかっている有名人。
だが、その強さはC級に手が届くかどうかというレベル。
イーゲルたちと魔物との闘いを見て、イーゲルたちの傘下に入った。
そして、山賊集団の下っ端に宿前で騒動を起こさせ、その隙に別の山賊がミリアを連れ去った。
その間、イーゲルたちが町中を散策していたのは、撒き餌だ。
(あのガキを釣るためのな)
釣れなければ、それはそれでいい。
(あの女は処分するだけだ)
イライラを表すように足を揺すり、琉海が姿を現すのを待つ。
(俺もそこまで気長には待つ気はねえぞ)
黄髪の男が手元でナイフを弄びながら青髪の男に顔を向ける。
「ははは、ディックは馬鹿か? 来るしかないんだよ」
青髪の男が笑いながらも、目の奥には怒気を含んでいた。
そして、その怒りの目で黄髪の男――ディックを睨む。
「サルスは血気盛んだね。俺はこの娘が手に入れば、別にいいや」
青髪の男――サルスにやれやれと首を振る緑髪の男。
彼は気を失って床に倒れているミリアの髪をすく。
「ははは、バカスは腕を折られたことをもう忘れたのか」
緑髪の男――バカスを挑発するサルス。
「折れた腕ならもう治ったよ。痛かったけど、欲しいものは手に入ったし」
琉海に折られた腕をひらひらと動かして答える緑髪のバカス。
「ははは、それは高い金を払ってポーションを買ったから、治っただけだろ。あのガキに金を払ってもらうぐらいのことをしねえと気が済まねえだろ」
「まあ、そのぐらいはしないと気は晴れないかもな」
青髪のサルスに黄髪のディックは賛同する。
「俺はどっちでもいいかな」
緑髪のバカスはミリアのことで頭がいっぱいなのか、二人とは温度差があった。
「ははは、そのお花畑の頭むかつくな。お前を先に殺そうかな」
笑顔を貼り付けたまま、剣を抜こうとする青髪のサルス。
「おい、少し黙れ」
静かに殺気を放つ赤髪の男――イーゲルが三人を睨む。
「「「…………」」」
本気で怒ったときのイーゲルの怖さを知っている三人は沈黙を選んだ。
イーゲルは剣を眺めることで心を鎮めようとする。
だが、怒りはふつふつと湧き上がってきた。
(あのガキのせいだッ!)
町を歩けば、他の冒険者に蔑んだ目で見られる始末。
ライセンスを剥奪される前は、何も言わず、視線も合わせなかった奴らも今じゃ、大っぴらに陰口を言ってくる。
だが、こちらから殴ることもできない。
指名手配されれば、狩る側だったのが狩られる側になってしまう。
特に大きい町では大騒ぎするだけで目を付けられる。
そんな行く当てが無くなったイーゲルたちに救いの手を差し伸べた者がいた。
その時のことをイーゲルは思い出す。
イーゲルたちを掬い上げた男はフードを深く被り顔を隠していた。
そして、とある提案をしてきた。
「君たちをどん底に落とした男に仕返しをしたくないか?」
最初はどん底に落ちたという現実を突きつけられ、イラっとしたが、その原因を作ったあのガキへの怒りの方が勝っていた。
第三者から見れば、明らかな逆恨みだ。
だが、普通の感性を持っていたらこのような結果には、なっていなかっただろう。
イーゲルはその者の提案に乗ることにした。
元凶の少年を誰にも邪魔されず嵌めることのできる場所があると言われた。
イーゲルはその場所を教えてもらった。
しかし、そこには魔物が住み着いているとのことだった。
魔物のランクを聞き、その場所を確保するためにイーゲルたちは提案を受けた。
イーゲルたちは意気揚々と屋敷に入っていき、魔物を蹴散らした。
元C級冒険者四人で行った魔物討伐は危なげなく完遂された。
腐っても元C級冒険者であるということだろう。
そして、そのフードの男からは他にももらった。
それは十数人の山賊集団。
リーダーの一人は懸賞金のかかっている有名人。
だが、その強さはC級に手が届くかどうかというレベル。
イーゲルたちと魔物との闘いを見て、イーゲルたちの傘下に入った。
そして、山賊集団の下っ端に宿前で騒動を起こさせ、その隙に別の山賊がミリアを連れ去った。
その間、イーゲルたちが町中を散策していたのは、撒き餌だ。
(あのガキを釣るためのな)
釣れなければ、それはそれでいい。
(あの女は処分するだけだ)
イライラを表すように足を揺すり、琉海が姿を現すのを待つ。
(俺もそこまで気長には待つ気はねえぞ)
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